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武技憂気日本大戦  作者: 囲井 鯀
―弐―
41/111

三十八

「悪かった」

「幸い、お互いに怪我はなかったしな。別に気にしてない」

「いや、自分を抑えきれなかった俺が――」

「化け物をじゃないのか?」


 驚いて顔をあげる化け猫をよそにオレは踵を返す。まあ、他人に土下座されるってのはいい気分ではないことがわかった。


「壱、なんだってな。オレは何のことだかさっぱりわからないけどな」

「……知らないで、そんなことも知らないで『化け物を宿している』のか?」

「笑ってもいいぞ。オレは笑っちまう位滑稽な事をやろうとしているんだから……」


 事情を知らない人間が聞いてもさっぱりわからない、オレ達だけの会話をしながら、ふと、オレは九州の壁を睨む。

 オレが化け物を完全に支配すれば、あんな壁などどうと言うことはないだろう。だが、今は何かが足りないらしく思う様に支配が出来ない。従えるだけで限界なのが今の現状。

 そんなことより問題はこの化け猫だろう。いつ後ろから襲われるかわかったもんじゃない。


「名前は何ていうんだ?」

「化け猫だけど?」

「本当の名前だ。オレは弐騎継被だ」


 暗闇の中でも圧倒的な存在感を持つ壁から視線を外し、地べたに座り込む化け猫の方へ移す。

 相変わらず眼は光っていた。きっとこういう体質なのだろう。


「…………」

「…………」


 しばらく無言で睨み合う。


「壱乃樹優……」

「…………、そうか」


 女みたいな名前だと思ったけど、口には出さなかった。

 壱乃樹はすっくと立ち上がるとフードを脱ぐ。相変わらず眼が怪しく光っていたが、暗闇のおかげで顔が全く分からない。


「壱乃樹は年はいくつだ?」

「二十一だ。被も二十一だろ?」

「…………?」


 そういえば、いくつだろう。確か川辺川がやってきた辺りで十八歳にはなっていたはずだ。それから約三年経ったから……。


「違うのか?」

「いや、二十一だな」

「いや、なんでさっき首傾げたよ?」

「しばらく一人だったからな、言葉を忘れてた」

「あからさまな嘘を吐くな!?」


 面倒な奴に出会ってしまった。なんだっけ、壱と弐と参は一緒に居なければならない、だっけ? 参とかいうのもこんな感じなのだろうか……。

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