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武技憂気日本大戦  作者: 囲井 鯀
―弐―
31/111

二十九

「『居合十八番・(モエ)』」

「おっと」


 四方山は身を引いて切先を躱す。


「『執刀十八番・(サキ)』」

「よっ、ほい、はっ」


 両手で鞘と刀を変則的に持ち替えながら縦横無尽に攻撃する川辺川。

 川辺川が振るう刀や鞘を最低限の動きだけで軽々と躱す四方山。

 オレと生きる次元が違うと実感させられる。ところで留守番の矢掛さんはいいとして、九重さんは一体いつ来るのだろうか。四方山に負けない遅刻っぷりだ。


「『納刀十八番・(チル)』」

「あらよっと」


 右手の刀で斬りつける動き。左手の鞘で殴りつける動き。そして刀を鞘に納める動き。変則的なこの三種の動きをすべて終えるのにかかった時間は一分。そしてそれを四方山は全て躱してみせた。

 本当にオレと四方山が同い年か疑問に思ってしまう。


「君、名前は」

「あ? 急にどうした?」

「僕の名前は川辺川清流。僕に本気を出させた敵の名前を教えて欲しい」


 おい、なんでさっきオレに名前を聞いたんだよ。気まぐれ? 気まぐれなのか?

 川辺川の言葉を聞いた四方山は不敵に笑う。


「俺は四方山うららだ。男じゃねえぞ」

「そんなこと、僕のまえでは関係ない」

「あっそう」


 四方山は大きく伸び、パキパキと背骨を鳴らす。川辺川はつま先で何度か地面を叩く。

 三十秒ほど経った時だろうか。

 二人は同時に跳び、間を開ける。


「やはり、本気を出さないと負けてしまう」

「それがどうした。本気を出したところで俺に傷をつけられるかな?」


 不思議だ、四方山が負けそうな気がしてならない。


「本気を出させてもらう」


 次の瞬間、川辺川の足元からごぼごぼと水が湧きだしてきた。

 あれは……。


「超能力……」

「そう、僕は水を自由自在に操ることが出来る」


 近くの物陰に隠れているオレに向かって川辺川は言う。直後、水のカッターによってオレが隠れていた瓦礫が真っ二つにされた。


「無駄だよ、僕に死角はない」

「そうか」


 こそこそと川辺川の背後に移動したのだが、筒抜けだったらしい。いや、武器とか持ってないから石投げるしか攻撃方法がないけど。


「ちなみに」


 オレが綺麗に切断された瓦礫を椅子代わりにして座ったのを確認して、川辺川は四方山に向き直る。四方山はオレに仕事しろと目で語っていた。いや、まだ死ねないから。


 溢れるように出てきた水が川辺川の腰の刀を鞘ごと包み込む。


「『変災刀・大水(オオミズ)』」

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