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武技憂気日本大戦  作者: 囲井 鯀
―弐―
30/111

二十八

「『帯刀十八番・(ツボミ)』」

「おおおっ!?」


 いきなり鞘ごと殴りかかってきたものだから、変な声出しながら叫んでしまった。そんなオレに構うことなく川辺川の猛攻は始まった。

 払い、突き、更に払い、振り上げ、振り下ろし、踏み込んで、そして突き。

 時には腰の捻りを加えながら、薙ぐ、薙ぐ、薙ぐ。

 刀身を完全に鞘に納めたまま、しかし柄をしっかり握りながら川辺川は襲い掛かってくる。オレは川辺川の振るう刀を捌きながら叫ぶ。


「なんで鞘が吹っ飛ばないんだよ! 実は刀身なかったりすんの!?」

「まだ叫ぶだけの余裕があるみたいだね」


 川辺川の表情は全く変わらず殺気すら感じられないが、オレの本能が命の危機を告げている。


 ――命の危機、って何だ……?

 殺されない身体じゃなかったか、オレ……?


「いィっ!」


 懐に潜られた。逃げようとしても、何故か足が地面から離れない。慌てるオレの鳩尾に川辺川の肘が突き刺さる。


「っ…………!」

「『居合十八番・(モエ)』」



 殺されるっ!?



「この程度だったなんて、呆れるよ弐騎継」


 付着した返り血を拭いながら川辺川は言う。「つまらなかった」、と。


「さて、こっちへ行けばいいんだね」


 そう呟くや否や川辺川は姿を消した。


「…………。ふう、なんだ、この程度か」


 本気で死んだかと思って焦ってしまった。両断された上半身と下半身をつなげるため、腕の力だけで上半身を動かす。

 しかし、斬られたのが腰の辺りではなく胸だったら完全にお陀仏だっただろう。分断された組織を結合させながらそんなことを考える。


「早く行かないと、だな」


 瓦礫や斬られてしまった紅いワイシャツを食べながらオレは走る。

 あ、いけね、冬なのにワイシャツ一枚ってのもどうかと言われていたが、いや、胸を隠すためにさらしを巻いただけの四方山には言われたくないのだが、しかしそのワイシャツを食べてしまった今のオレは上半身裸ではないか。

 寒い。




「おーい、川辺川ぁー! こっちこっちー!」


 馴れ馴れしく手を振っていると、水がとんでもない勢いで飛んできた。


「うおっ!?」

「サンキュー、弐騎継!」

「くっ!」


 どうやら四方山に苦戦しているようで、オレには時々水の塊が飛ばされてくるだけだ。瓦礫の影に隠れていれば十分そうだ。今のうちに回復と強化を兼ねて土食っておこう。


「オラァ!」

「つっ……」

「のはあ!」


 背中の瓦礫が粉々になった。

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