二十五
さて、弐騎継被ことこのオレは言い訳をしなければならない。いや、上手くいけば言い訳しなくて済むかも……?
「じゃ、食堂に行きますか」
ゴキゴキと首を鳴らしながら部屋を後のする。――ところを言秀さんに肩を掴まれ阻まれた。
「弐騎継……」
何故か雰囲気が真剣だった。
「な、なんですか……」
敬語じゃなくていいと言われたばかりなのに早速敬語だった。
「…………」
「…………」
空気が緊張していくのが感じられる。
す、と言秀さんの手が肩から離れた。
「…………!」
「忘れものだ」
オレの目の前に吊るされたのは、『身代り』という文字が織り込まれた、ワイヤーで織られたごついお守りだった。
いや、なにこれ。
「あ、どうも……」
「信長からの贈り物なんだ、大切にしないと罰が当たるぞ」
はぁ? 信長ぁ? やっぱりあいつ馬鹿だったの?
「ほらほら、お揃いですよっ!」とか言ってうるさそうだな……。早々失くしそうだな。
「ほら、アタシも持ってるし」
「俺もだ」
二人はポケットから例のお守りを取り出す。あいつ配ってたのかよ。
まあいい。オレはお守りを受け取り踵を返す。
階段付近まで歩いたところで九重さんが口を開いた。
「――ところで」
「は、腹が減ったなー!」
詮索される前に逃げよう。近くの空き部屋に飛び込み、窓から外へ飛び出す。十七階から見た地上は、とても平坦に見えた。屋上から見える中国も見てみたいな……。
「きゃーっ?! 弐騎継ちゃん?!」
九重さんの悲鳴を聞き流しながら、しばらく落ちたところでコンクリートの壁を両手の指で貫く。オレの指ががりがりと外壁をけずりながら、減速しながら落ちていく。何度か指が離れそうになったが、そのたびに手を深々と突き刺した。
「……うわ、骨って言うか、なんか見えてる」
みしみしと音を立てながら、指の削りとられた部分が自己修復していくが、しかしこんなことはもうしたくはない。
自分の指が元通りになっていく様を見ながら正面玄関からビルに入り、真っ直ぐ一階の食堂へ向かう。エレベーターが壊れてしまっているのは不便だ。後でいじくってみよう。
「おっす」
「うす」
食堂に着くと先に矢掛さんが食事をしていた。今までで一番簡素な食事だった。
「あれ、その指どうした?」
「ああ、ちょっと、な」
「ふーん……。ん? 敬語やめたんだ」
「なんか上の二人がうるさかったんで」
うわ、今コンクリートの破片が呑まれたぞ……。養分にされてね? 吸収してたよね? 何この身体、気持ち悪っ。




