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武技憂気日本大戦  作者: 囲井 鯀
―弐―
23/111

二十一

「んん、そろそろ出発の時間みたい」

「そうか」


 それにしても話し方が変わると人の印象ってがらりと変わるのな。こいつなんでこんなに女の子なの?


「よいしょ、っと」


 千夜は弾みをつけて起き上がる。えへへ、とこちらに向けて笑ってから、いつもの千夜に戻った。いつもの、無表情に。


「……なあ、千夜」

「なんだ、被」


 千夜はドアノブに手を掛けたまま振り返る。


「誰も……殺さないでくれるか?」


 小さな声で、ぽつりと呟く。千夜には聞こえただろうか。


「……優しいな、被は」

「そうか」


 千夜はドアノブから手を放し、こちらへ向かって歩いてくる。ドキリと胸が高鳴った。千夜はベッドに座るオレの前まで歩いてくると、そのままオレを力一杯抱きしめながら再びベッドへ押し倒す。


「約束するよ、被」

「ありがとう」


 しばらくオレ達は動こうとしなかった。

 ……千夜の胸って相変わらずまな板だよな。


「千夜、時間」

「……ふう、ずっとこうしていたかったのだがな」


 千夜はオレを抱きしめるのをやめた。

 そのかわりに。


 オレの頬にキスをした。


「愛しているよ、被」


 オレの返事を待たずに千夜は起き上がる。そして、ひらひらと手を振りながら部屋を出て行った。一度も振り返らずに。


「返事は帰ってきてから、か」


 そういう事だろう。やれやれ、面倒なことになった。


「まったく……」


 溜め息を吐いて、起き上がる。

 オレは全然、そんなでもないんだけどな。


 正直言っちゃうと。


 オレは千夜のことは好きでもなければ嫌いでもないんだけどな。


 自分に言い聞かせるように、オレは静かに呟いた。

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