十九
いつの間にか二十近く……。
大丈夫? 数字数え間違えてない?
そんな感じですが、どうぞよろしくお願いします。
さて、この戦争が誰かの手によって仕立て上げられた、という事はわかった。しかし、一体、何のために?
オレは一人、ベッドの上で胡坐を掻きながら考える。
しかし、作為的にという点も怪しい。何か天変地異が起きて多くの人が死んでしまった、という説もあるが、これは無言さんと千夜の話を聞く限り有り得ない。細菌やウイルスによる死亡と考えてもいいが、自殺や他殺、突発的な事故によって無くなった人が大半だという。
ならば。
ならば何なのだろうか。そもそも、何故ここまで大きく日本の社会を動かさなければならなかったのか。不可解な死、というものを探ればそれこそ何十年も前に遡らなければならないだろう。
戦争になったきっかけ……、おそらく、何処かでオレは聞いたり見たり、もしくは伝え聞いたりしているはずだ……。
何処で、誰から、何を……。
「…………」
そう言えば、あいつらはなんで灰狼に居るんだっけ?
えーっと、千夜の話だと三人が三人とも捨て子で、灰狼に拾われたのがきっかけ、だったらしいな。居場所はそこしかない、か。
だけど、あいつらはわかっているのだろうか。
灰狼は、人を殺すという事を。
わかってるかもしれない。目を逸らしているだけかもしれない。そもそも、あいつらもオレ達を傷付けて物を奪おうとしていた。最悪、殺そうとも考えていたかもしれない。
嫌な世の中になった。だからオレと千夜はここにいるのだが、まさかここまでとは思ってもいなかった。
「あと三日……」
今日寝て、明日目が覚めて……。千夜がここに残れるのは後今日を含めないで三日だ。その間に何が出来るだろうか。
そんなことを考えながら、オレは横になる。
『むぎゅ』
「……あ?」
倒れたオレの頭が何か柔らかい物の上に乗った。
何かいる……。しかも布団の中に。部屋に入ってから一度も電気を点けていなかったせいで気付かなかったが、しかしオレの布団の中で誰かがうずくまっていることは確かだ。位置からして、膝を抱えていたのだろう。
誰だ……?
「…………」
気付かなかったことにしよう。今日は掛布団の上で眠ることにした。
ゴキゴキと嫌な音を立てながら首が鳴った。変な寝方をするものではないな。枕は高すぎては駄目だ。
そう結論づけて、肩を揉みほぐしながら脱衣所を出る。
「すぅ……、すぅ……」
相変わらず、『何か』がそこで寝ていた。無防備な寝息まで立てている。いびきをかいていたら窓から投げ捨ててやったのだが、どうやら無害なモノらしいので放置。
珍しく千夜を迎えに行ってやろう。
そう思い、カーテンを開けてベッドの横にある窓の外を見ると。
「暗い……」
夜が明けるまであと数時間はあるのではないかというくらいくらい。寝るにしたって、もうすっかり目が覚めてしまっているし、何処かへ行くにしても千夜からあまり離れすぎると動けなくなってしまう。
つまり何も出来ない。
「ふんっ!」
イラッとしたので布団を無理矢理剥ぎ取る。思わず目を見張る。
しわの寄ったベッドには、純白の肌の上から真っ黒な服を着た子供が膝を抱えるようにして眠っていた。黒い革のジャケット、黒いだぼだぼのズボン、黒い革帽子の、黒い革手袋、そして、黒い革表紙の分厚い本。何もかもが黒かった。
「……誰だ?」
『…………』
ウザったそうに目を開ける。そして、驚いた様に目を見張った。
『……ああ、白いから。――と言う訳でもなさそうだけど。さては彼の仕業かな』
頭の中に直接響くような声で、子供は呟いた。
ちらりとオレを見ると、少し楽しそうな様子で声を発する。
『お休み』
何かが途切れたように、意識が遠のいた。




