十三
無言さんは一つ咳をしてから話し始めた。
「えー、連絡事項その一。A、B、C班とE班は一週間後に九州へ向けて侵攻だ。E班は物資供給班で、他の班は戦闘を主として行動してもらう」
会場の殆どの人達が相槌を打つ。その中には、やけに真面目な顔をした信長も混ざっていた。
……笑いそうになった。むしろ、半分笑ってた。
「その二。四国からわざわざ着たそこの二人。こむ……、大公の方はB班に一緒に行動してくれ。一般兵と同じ扱いをさせるから覚悟してしておけ。それと、あー、弐騎継。お前は中国地方に残って雑務だ」
しどろもどろだった。
それと、オレだけ扱いが雑な気がしないでもないのだが、とりあえず、千夜が頷いたので一応オレも頷いておく。
「その三。ここに残るD班は基本的に小僧の、あー、弐騎継の言う事に従ってくれ。俺から小僧に指示を出しておく。……わかったか?」
最後の言葉はおそらくオレに向けて放った言葉だろう。こっちを見てにやりと笑っていたから、きっとそうだ。……笑うな。
ここからでは、誰が返事をしたのかわからないが、オレを訝しげに見る人たちなら何人も見ることが出来た。信長はむしろオレの脇腹を肘で突いている。何も言わずに叩き落としておいた。
「その四。『灰狼』の三人の件は、全てこ、……ごほん、弐騎継に任せることにした。文句がある奴は手を挙げろ」
何故か威圧した。
先ほどの、目が死んでいた無言さんとはまるで別人である。人はここまで変わるものなのかと感心させられてしまい、しかしそんな思いとは関係無しにオレは異議申し立てのために手を挙げた。
「その――」
「――――」
「冗談だ」
口を開いた瞬間そう切り返された。まだオレは何も言っていない。息継ぎの段階で返事をされた。
千夜は笑いを堪えるのに必死だという表情をしている。変顔大会のようだ。オレはそんな大会、知らないけど
信長は声こそは出していないが、腹を抱えて机に突っ伏し、ぴくぴくと全身を痙攣させている。
「言いたいことは大体わかる。確かに『灰狼』の事をお前に全て任せるのに不安が無いと言えば嘘になる」
なるのかよ。
「だが、俺はお前を信じてみようと思うんだ」
「…………」
悪くないだろ? と無言さんは笑う。
ま、悪くはないだろう。
面倒だけど。
「その五。各班の代表は今日の十時頃に三階の会議室へ来てくれ。なお、D班の代表は今日から弐騎継だ」
確認するように無言さんは食堂を見回す。目が合ったので、とりあえず相槌。
「以上で報告は終わりだ。食べ始めていいぞ」
満足そうにそう告げると、無言さんは自分の席につき、食事をとり始めた。それを合図に、オレ達も食事を再開する。
「ふむ……」
「ん……、く。ぷはっ! どうしたんですか、千夜ちゃん?!」
「いや、ちょっとな……。被」
オレはキャベツとセロリを同時に食べることに意識を集中し始めた。
刹那。
「んぐッ!? …………、ッ! ぐ、んぐぐ……!」
「む、平気か、被?」
「…………!」
いや、誰のせいだよ! なんで向かいに座ってるのに脚が鳩尾に届くんだよ! 危く吐き出すところだったぞ!?
涙目で抗議したのだが、いまいち伝わっていないようで、何故か安心した様に千夜はうなずいた。
「先ほど、被は無言殿と二人きりで話したであろう? その時に、私はチラリとだけ無言殿を見たのだが、その時受けた印象と先ほど無言殿を見た時の印象とではまるで別の印象を受けたのだが。これは一体どういうことだ?」
「あー、それな……」
どう説明したものか……。
「あー、それ私も思いましたー! なんだか今日の無言さんははきはきしてて、ウキウキしてて、とっても楽しそうでしたよ!」
「そうか」
「なんか私の時だけそっけない!? お兄ちゃんの馬鹿ーっ!」
さて、一体オレは無言さんに何を……。あ、あー……。さてはあれがいけなかったかもしれない。端から端に、壁をぶち抜く勢いだったしな。いや、椅子がすごい勢いで引っ繰り返っていたけど。
「心当たりがないな」
「ふむ……そうか。食事中悪かったな、被」
言わなくても別に良いだろう。決して、面倒だとかそういうわけではない。




