十一
一階にある食堂は広く、百人ほどの人間がその中で食事をしていた。
「ほらほら、お兄ちゃん! こっちですよ!」
「手なんて引っ張らなくても見失わねえよ」
それでも信長は小さな手でぐいぐいとオレを引っ張っていこうとする。
「――骨が当たって痛い」
「我慢しろ」
「そうか」
千夜は千夜でオレの右腕に抱きついたまま離れない。千夜が動くと肋骨が腕に食い込み、地味に痛いのだ。全然嬉しくないのでやめて欲しい。
「む、被。あそこに丁度空席が二つあるぞ」
「そうか、オレはあの子供たちの隣で食事がしたい」
「お兄ちゃん、それならこっちから行った方が早いですよっ!」
「そうか」
右腕を失う覚悟で信長について行く。しばらく粘った千夜だが、アイコンタクトをとると素直についてきてくれた。
「助かる」
「なに、私も彼等と話がしたいと考えていたところだ」
「……そうか」
そういうことにしておこう。
信長の案内でここに来る道中にオレを襲ってきた灰狼のメンバーであろう、三人の子供達へ近づく。
「被達は此処で待っていてくれ」
「わかりましたっ!」
「そうだな」
千夜には千夜の考え方があるのだろう、ここは子供の扱い方が上手(例外有り)な千夜に任せた方がいいだろう。オレと信長は大人しく食事をとりながら千夜が帰ってくるのを待つことにした。
「お肉いりますかー?!」
「キャベツが足りない」
「レタスとほうれん草が山盛りですよー!」
「キャベツが足りない」
「あ、あんなところにキャベツの山がっ!」
「此処で待っててくれ。取りに行ってくる」
「割と近くですけどねーっ!」
「そうだな……、あっ、ぐ」
「ええーっ!? 器の上に盛ってあった生野菜サラダが一瞬にして消えてしまいましたよーっ!?」
「……ふう、落ち着いた」
「今まで落ち着きがなかったんですか!?」
「疲れてたから若干イライラしてた」
「あーっ! だからあんなに私を殴ったり蹴ったり抱きついたりしてたんですねーっ! いくらお兄ちゃんだからって許しませんよっ!」
「抱きついてない」
「あれ、そうでしたっけー?!」
「あと声がデカい」
「仕方ないじゃないですかー! こんなキャラなんですからー!」
「戦時中に言う台詞か?」
「不釣り合いな台詞だと思いますっ!」
「そうだな」
「あーっ! また野菜食べてるー! お兄ちゃんの肉も私が食べちゃいますよー!」
「食べて太れ」
「酷いっ! 女の子のピュアなハートは傷だらけですよ!」
「…………? そうか」
「何ですか今の間は!? ちょっと首を傾げてましたよね!?」
「そうだな」
「そこは即答ですかっ!」
「む……」
向こうで千夜が手を振っている。話がまとまったからこっちへ来い、という事だろう。
サラダを丸のみしてから千夜のいる方へ向かう。途中で千夜がこちらへやってきた。
話は終わったから今からこちらへ行く、という合図だったらしい。
「ふむ、信長殿の声だけでどのような会話をしていたかなんとなくわかったぞ」
「そうか」




