表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武技憂気日本大戦  作者: 囲井 鯀
―参―
100/111

三十三

「っ! 落ちつけ!」


 混乱する俺に向かって弐野継が叫ぶ。

 俺はハッとして彼の顔を見た。

 彼は真剣な顔でこちらを見ていた。


 それがとても恐ろしかった。


「やめろ、見るな……、俺を見るなっ!」


 俺は胸で眠るキョウコを突き飛ばし、後ろに跳び退る。壱乃樹が驚いた顔でこちらを見ながらキョウコを抱きとめた。


「なっ! 急にどうなっちまったんだよお前!」

「やめろ、見るな……、見るな……!」


 誰に向かってそんなことを言っているのだろうか。それすらもわからない。


「ん……いー姉さん……?」

「っ!? 落ちつけ参幅霧! こいつにそんな姿を見せていいのか!?」


 キョウコが目覚めかけている。そのことに慌てた壱乃樹が弐騎継と同じような事を叫んでいた。


 そうだ、キョウコにこんな姿は見せられない。

 道具としての勝ちしかない、醜い亜人の姿など。



「やめろ、俺を見るな……見るなぁぁぁぁぁあああああああ!」



 俺は勢いよく後ろに跳ぶ。着地した瞬間、俺と彼らの間に大量の岩石を創り、積み重ねることで岩の影に隠れる。


 ズキリと頭が痛んだ。


「――ぅぁああああああぁぁぁぁああああああああ!」


 痛みが大きくなり、まるで体中に痛みが広がっていくようだった。

 俺は意識を失わないように、地面に倒れてしまわないように踏ん張る両の足に力を込め、頭を抱える。



「いー姉さん……?」

「ッ! 来るなぁ!」

「で、でも……」

「近づくんじゃねぇええ!」


 俺は自分の周囲に暗闇を創る。

 しかし、俺は暗闇の向こうから視線を感じていた。


「……視るんじゃねえよ……俺を……」

「どうして……いつものいー姉さんじゃないですか……」

「それでも、駄目なんだ……」


 こんな情けない俺を見ないでくれ……。


「いー姉さん……」

「悪いな、キョウコ……」


 俺は一歩下がり、暗闇の中に創った裂け目に飛び込む。


「いー姉さん!」

「キョウコは頼んだぞ!」


 俺は彼らの返事を聞くことは無かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ