3 煙幕襲撃作戦
煙玉が作った煙幕が、倉庫の中に充満している。
「クソ! 何がどうなってんだ!」
中の連中が声をあげている。僕はその煙を見ながら、スキル『測量』で「1、2、3、4」番と登録した奴らを探索した。
煙にまみれていても、微かに見える。見えてさえいれば――『測量』スキルは有効になる!
煙の中に矢印が見え、その上に『1』とか『2』の数字が見える。
『1』が敵のリーダーだ、まずこいつを叩く!
僕は矢印に向けてダッシュするが、相手は視界が悪くまだ動いてない。
僕は木剣を振りあげると、微かに見えている奴の膝横を思いきり打った。
「グアァァァッ! ――だ、誰だっ!」
相当に痛めたはずだ。手を膝に当ててうずくまってる。
通常の剣技に『足を狙う技』は基本的にない。
だから、こいつが剣術Lv3でも、この攻撃は防御できないはず――
という、僕の読みは当たった!
こいつは、もう後回しだ。僕は『2』を探す。少し離れた場所にいる。
煙が消えかかっている。――完全に消えてしまう前に、僕は木剣で攻撃した。
2番の奴の右小手を打つ。
「ウゥッ!」
2番が持っていた木剣が、床に落ち、乾いた音をたてる。
次は3番、僕は木剣を構えて震えているそいつの横から迫り、両腕を一度に上から叩いた。
「うわぁぁっ! ――や、やられたよぉうっ!」
3番が悲鳴をあげて、床で転げまわる、後は4番――こいつは魔導士だ。
4番を探してると、2番が床に倒れた。ダガンだ。ダガンがフックをたたきこんでいた。
4番を見つけ、その水月に突きを打つ。
「ぐはぁっ――」
吹っ飛んで、床に転がる。そこに素早くのしかかったダガンが、顎に一発パンチを見舞うと、4番は沈黙した。
その間、ディッドにやられてるらしい他のメンバーが悲鳴をあちこちであげていた。けど、それもやむ。
――やがて、煙が収まってきた。
床に立っているのは、敵のリーダーだけだった。
「おーい! リッドを見つけたぜ!」
その時、奥の部屋からゾーイとゴーイが、リッドを救出して現れる。
リッドは少し、傷を負っているようだった。
それに憤ったのは、ディッドだ。
「リッド! 奴らに何かされたのか?」
「へへ……ちょっと抵抗したらよ――よってたかって殴る蹴るのやりたい放題だったぜ。けどオレは……泣き言なんか言わなかったんだ……」
けど、そう言いながら、リッドが涙ぐんでいく。
「みんな……来てくれて――ありがとう……」
「なんだよ、リッド。せっかくここまで頑張ったのに、泣くんじゃねえよ」
「うるせえよ! これは嬉し涙だから、カウントなしなんだ!」
そう言いながら、リッドは鼻水をすすった。
「……おいガルバト、好き勝手やってくれたな」
ディッドがリーダー――ガルバトに凄む。
しかしガルバトは木剣を手にしたまま、まだ怯む様子ない。
「お前ら……俺たちにこんな事をして――ただで済むと思ってのか?」
「今からでも、僕ら全員を叩きのめせる――君はそう思ってるんだろう?」
僕はガルバトにそう言った。
ガルバトは眼を開くと、にやりと笑った。
「そうだ。お前らみたいなザコが何人いようが問題じゃない。お前らはそこの拳闘士を除いて、全員が非戦闘職――つまり戦いにおいちゃ素人だ」
「……僕は剣術スキルを持ってるぞ」
僕はガルバトに言ってやった。少し顔色が変わる。
「お前がか? なるほど――それで、お前を頼りに奇襲をかけてきた、と。この奇襲作戦を考えたのもお前だな?」
「そうだ」
ガルバトは、ふっと笑いを洩らした。
「じゃあ、お前を立ち上がれないように痛めつけりゃ、また昔のままに戻るってことだろ? まあ、度胸は認めてやるぜ――だが、お前はなりから見て、まだ中等部の一年か二年。剣術スキルもまだLv1だろう。……言っとくが、俺の剣術スキルはLv3だぜ」
そう言って、ガルバトは勝ちを確信したように、にやりと笑った。
剣術スキルはLv2だが、その情報は敢えて出さない。
このレベル差――本来なら致命的な差だ。
だが、僕は以前に、もっとレベル差のある相手と戦ったことがある。
――それは無精髭の盗賊だ。
あの無精髭の盗賊は、自分の事を剣術Lv5だと言っていた。
けど、あいつは足が悪かった、そのせいで、自分のスキルを十分に使いこなせかった。そして……だから勝てたんだ。
そう、僕が1番リーダーの膝横を攻撃したのは、奴のスキルを封じるためだ。
けどその時に、すぐに倒してしまわなかったのは何故か?
それはこのリーダーを、メンバーの前で倒そうという計画だからだ。
隠れて不意打ちしてやっつけても、彼らは自分たちが本当にやられた、とは思うまい。けど、皆の眼の前で、リーダーが堂々と負ければ――
その敗北は決定的なものになる。そうしなければ、このグループは僕らをかならず食い物にするだろう。
――だからリーダーは、脚だけ傷つけて残しておいたんだ。
「勝負だ――ガルバト」
「フン……いい度胸だ。お前、名前は?」
「クライン」
僕は木剣を構える。対峙するガルバトも木剣を構える。
測量! 奴との距離、245cm。
体格は向うの方が上だ。本来の奴の有効射程距離は、推測で220cm。僕より10cmは遠間から攻撃してこれるはずだ。
しかし――
僕は周り込みながら、220cmまで踏み込む。
「ムッ!」
ガルバトは有効範囲、と見て攻撃しようとする。
が、その動きを途中で止める。
―やはり。
さっき打ったのは左足の膝。踏み込もうとした瞬間、後ろ足の膝が痛くて動きを止めたんだ。
この痛みはまだ続いてる。今が、仕掛け時だ!
僕は思いきって距離200cmまで踏み込む。
驚いた顔のガルバトが、思わず僕に打ちかかった。
――狙い通りだ!
「ヤアアァァッ!」
気合一閃。僕は打ってきたガルバトを、逆に『出ばな』で捉え、その額に思い切り木剣を打ち込んだ。
ガツン、という衝撃ととも、ガルバトがぐらりと倒れる。
「ガルバト!」
「ガルバトぉっ!」
向うのメンバーが悲痛な声をあげた。
僕はその声をあげた敵のメンバーたちを、ぐるりと一人ずつ睨んだ。
「僕らの勝ちだ!」
僕は木剣を、空にかざした。
「「「「「オーッッ!!!」」」」」
ディッドたち皆が、それにときの声をあげる。
敵のメンバーが倒れてるガルバトの上半身を起こした。額から血を流しているが、致命傷になるほどは打ってない。
「どうだ。僕らの勝ちだ!」
「クッ……」
ガルバトは悔しそうな顔で横を向いた。
「リッドから奪った金を返せ!」
僕が怒鳴ると、ガルバトは傍の奴に頷いてみせる。
その少年が何処かにいって、お金をもって帰ってきた。リッドに渡す。
「クソ……汚ねぇマネしやがって――」
そうガルバトが洩らした。僕は……頭にきた。
ガルバトの傍に歩み寄る。ガルバトの傍にいた少年が慄きの表情を見せる中――
――僕は、木剣でガルバトの横っ面を殴りつけた。




