表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泣きむし測量士は、剣聖になりたい! ~非戦闘職がギリギリの戦いに臨む時~  作者: さとうはるか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/42

2 鎧ジカとの一戦


 茂みの上に、矢印が出ている。見えにくいけど、鎧ジカがいる証だ。


「いた! 距離にして227m」

「え? 何処?」

「静かに。もっと接近しよう」


 僕の合図で、皆は気配を殺しながら鎧ジカに近づいた。

 開けた空間の外側まで来た。これ以上、気付かれずに接近するのは難しい。


「よし――じゃあ、ロープ作戦いこう」

「了解!」


 僕の合図で、皆が動き出す。武器をまず手にする。

 ディッドとダガンは鉄パイプ――僕はまだ剣は抜かない。


 僕は用意したロープの一部を持つ。ゾーイとゴーイが両端を持って、左右逆に駆けていく。

 ロープの流さは30m。僕とリッドが、その中間地点を持つ。


 ゾーイとゴーイは離れた場所から、鎧ジカの後ろに回り込むように移動する。

 僕とリッドは二人にロープを送りこみながら、少し距離をとって広がる。


 僕とリッドの線を底辺にして、ゾーイとゴーイが三角形を作るように鎧ジカを遠くから囲んでいく。――まだ、気付いてない。


 ゾーイとゴーイが合流する。三角形が完成だ。後はこのロープを狭めて、鎧ジカの脚を封じる。

 僕は右手を上げた。そのサインに気付き、ゾーイとゴーイが駆け出す。


 異変に気付いた鎧ジカが、周囲を見回す。けど、ゾーイとゴーイは交差するように、鎧ジカの横をすり抜けた。


「今だ、放して!」


 僕の合図で、リッドと僕がロープを放す。

 動き出した鎧ジカが移動しようとして、その脚がロープに絡む。


「いいぞ! 一斉に引くんだ!」


 僕とリッドはそれぞれ、ゾーイとゴーイの傍にいってロープを持って引くのを手伝う。急激に迫るロープの輪に、鎧ジカの脚がとられた。


「ブルルルッ!」


 鼻息を荒くした鎧ジカが、動こうとするが――ロープに足が縛られてその場に転んだ。


「今だ、やるぜ!」


 ディッドの合図で、ダガンと二人で飛び出す。

 ディッドは暴れる鎧ジカの頭を一撃、鉄パイプで殴った。


「ブフゥーッ!」


 鎧ジカが怒りの鼻息をあげる。が、その胴体をダガンが鉄パイプで殴る。

 が、カーン、という高い響きとともに、ダガンの鉄パイプが跳ね返る。


「くそ、なんて硬さだ!」


 ダガンの声を聴くとともに、僕は剣を抜きながら飛び出した。


「鎧の部分にはきかねえ! 頭を狙うんだ!」


 ディッドが声をあげる。しかし鎧ジカの頭には、立派な角が聳えていた。

 鎧ジカは自身の生命の危機を感じ、角をブンブンと振り回して防衛している。


「くそ、こいつ!」


 ダガンが背後から殴ろうとするが、振り回した角で鉄パイプが弾かれる。


「動きを止めなきゃダメだ。俺が停めるから、クラインがとどめをさせ!」

「判った!」


 ディッドは鉄パイプを角の間にねじ込むと、それを無理やりに引き倒して鎧ジカの動きを止めた。


「今だ、やれ! クライン!」

「おうっ!」


 僕が剣を振り上げたその時だった。


「ブルルゥーッ!!」


 鎧ジカが大きく暴れる。それは――想像以上の力だ。

 抑え込んでいたディッドが浮かされ、飛ばされた。


「――ぐあっ!」


 飛ばされたディッドの腹に、暴れた鎧ジカの角が突き刺さった。


「ディッド!!」


 ディッドが転がる。そして鎧ジカは急激に立ち上がると、思いきり跳びあがった。


「うわぁっ!」

「ひえっ!」


 ゾーイとゴーイ、リッドがロープに引っ張られて地面に飛ばされている。


「この野郎!」


 ダガンが鉄パイプで打ちかかった。が、鎧ジカは後ろ足で、ダガンを蹴り飛ばす。

 ダガンが悶絶しながら、地面に転がった。


 ――僕以外……全員が地面に転がっている。


「ブシュゥルルル……」


 鎧ジカが、完全にロープから脱して、前足で地面を蹴っている。

 その眼は――僕を睨んでいた。


 最後の敵である僕に、標準を定めたんだ。


「駄目だ、クライン! 強すぎる、逃げろ!」


 ディッドが叫ぶ。

 ……確かにそうだった。この強さ、想像以上だった。


 けど、今、目の前にいるこいつは――僕を逃すつもりがない。


「ブシュゥゥゥ……」


 鼻息を荒くして、鎧ジカは頭を下げた。

 その角で、僕を突き刺すつもりだ。


 こいつ相手には――クローミンクに使った『峡谷の旋風』は使えない。

 下から突き上げるには、こいつの戦闘体勢が低すぎる。


 上から斬りつけるんだ。けど――よく見ると……角と角の間に鎧がある。

 あそこを割ろうと思ったけど、あの防御力では普通に斬っても斬れない可能性が高い。


 今――こいつとの距離は325cm。相手は突進してくる。

 『出ばな技』を使って、攻撃を入れるしかない。けど、威力が足らない。


 どうする? ……瞬間、僕の脳裏に剣舞のある型が閃いた。

『大輪の花引き』――フォーミュラはそう呼んでいた。もの凄く大きな動きの技だ。あれなら――


 僕は剣を後ろに構えた。

 鎧ジカには僕の剣が見えてないだろう。そして無防備な僕の顔と身体が見えてるはずだ。


「ブシューッ!」


 ――来る! その距離、220cm。

 まだだ! まだ踏み込まない。その距離、180cm!


「クライン!」


 周囲から声が上がる。まだだ。まだ動くな、堪えろ――最大の威力を出すために、相手を引きつけるんだ。


 距離150cm――まだ!


「クライン、逃げろ!」

「クライン!」


 距離80cm――今だ!


「タァッ!」


 僕は左足を下げて後退しながら、後ろに構えた剣を大きく振り斬る。

 力を入れず、大きな円を頭上で描くように。


 剣が――鎧ジカの額に割って入るのが見える。

 引く力と刀の重さ、そして力を抜いた振り切る力が、その剣の斬撃力を生んだ。


 鎧ジカの額から、顎までを斬りおとす。

 剣を振り抜いた後、絶命した鎧ジカが前のめりに倒れてきた。


「う――わあぁっっ!」


 慌てて逃げようとするが、鎧ジカが前転するように僕の方に転がりこんでくる。

 僕の下半身に、鎧ジカがどっかり乗っかった。


 ――が、鎧ジカは、それきり動こうとはしなかった。


「お……おい――」

「や……やったのか?」


 ゾーイとゴーイが、恐る恐る近づいて、鎧ジカを鉄パイプでつつく。

 が、鎧ジカはもう動かない。


「やったーっ! やったぜ、クライン!」

「おれたちの勝利だ!!!」


 僕は苦笑しながら、安堵のため息をついた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ