2 みんなの模擬戦
僕自身も含め――皆、あっけにとられている。
何故なら、僕の打撃がダガンに当たったからだ。
「当たった! クラインのパンチが、ダガンに当たったよ!」
「すげっ!」
「ほんとに、パンチを当てるなんて――」
ゾーイ、ゴーイ、リッドがそれぞれに驚きの声を洩らす。
ディッドがにやりと笑いながら、呟いた。
「フフ……さすがだな、クライン」
僕は自分自身、驚きのなかでダガンを見る。
ダガンが笑っている。
「なかなか、いいのが入ったぜ」
「――ヤッターッ!!!」
僕は両拳を突き上げた。
――さて。模擬戦はもう充分なのでそこまでにして、僕は皆に訊いた。
「みんな、僕の打撃は先週と比べてどうだった?」
「凄いサマになってた!」
「先週は完全に素人で全然だったけど、今日はちょっとは戦える感じだった」
感動したようなリッドの後に、ゾーイが冷静な分析をする。
僕は頷いた。
「これが素振り――反復練習の力。僕はこの一週間、毎日パンチの練習をした。見た感じがサマになってるってことは、実際に使えるようになってるってことだ。みんながもし、ちゃんと剣の素振りをしてるなら、模擬戦をやってみれば今までとは違ってるはず」
僕がそう言うと、リッドが声をあげた。
「オレ、ちゃんと毎日やってたぜ!」
「おれたちだって、ちゃんとやってたさ。な?」
「ああ」
ゾーイとゴーイもそれに続ける。
「よし。じゃあ、リッドとゾーイ、模擬戦やってみて」
「いいね! やってみようぜ!」
「うん!」
そしてリッドとゾーイが模擬戦を始める。
今までの模擬戦の感じだと、二人とも鉄パイプスタイルなので片手で武器を持っていた。
しかし今回は二人とも両手で木剣を持ち、相手に向かって構えている。
「それじゃ、『視像録画』するからね。始め!」
僕は掛け声をかけつつ、『録画』のボタンを押した。
――まず、ゾーイが動いた。
「ウリャッ!」
踏み込んで正面に打ち込み、リッドは今までなら両手で武器を支えて頭上で受ける――はず。
だが、リッドは素早く木剣を振って攻撃を逸らすと、そのまま返す刀で胴を狙った。
「ウォッ!」
右胴を打たれたゾーイが、少し呻く。
と、隣で見ていたゴーイが驚きの声をあげた。
「ウソだろ!? リッドに打たれるなんてこと、今まではなかったのに!」
「くそ――やりやがったな!」
打たれたゾーイは、ムキになって再び攻撃をする。
「ダァッ!」
正面への打ち込み。しかしリッドはそれを右に移動しながら弾くと、今度はゾーイの左肩を打った。
「つっ――! ウソだろ……リッドが――」
リッドは真剣な眼でゾーイを見つめ、少し息を荒くしてる。
緊張感からか、普段より体力を使ってるのだろう。けど――凄く集中してる。
「む――ヤアッ!」
今度はリッドから飛び込んで、正面打ち。
ゾーイがそれを頭上で受けて、二人の距離がぐんと迫る。
と、ゾーイが木剣を持ったまま、両手でリッドを突きとばした。
「くっ!」
突き飛ばされたリッドが、後ろにたたらを踏む。やっぱり小さいから、こういう力のある攻撃には弱い。
その隙をついて、ゾーイはリッドの鳩尾に突きを打ち込んだ。
「あ――ぐぅっ……」
モロに突きが入ったリッドが、その場にうずくまる。
勝負は決まったが、皆はリッドが想像以上に戦えたことに驚いていた。
「すげぇな、リッド!」
「見違えたぜ!」
ダガンもディッドも、手離しでリッドを褒める。
痛みを堪えた顔を見せながら、リッドが少し嬉しそうに笑った。
「今までよりさ――なんか、少しおちついてゾーイの動きを見れたんだ。それに片手でパイプ扱うより、両手で木剣扱う方が、オレには自在に扱える感じがした」
リッドがそう言うと、みんなが感心したように頷く。
その後、ディッドとダガンが模擬戦をやり、僕とゴーイが模擬戦をやった。
明らかに、みんな先週より動きがよくなってる。
「それじゃあ、皆の模擬戦を『再生』するよ」
そう言って僕は自分が参加してない時の模擬戦を次々と再生した。
「あ! 打たれた! く~、この時、右に動いてりゃな~」
「なるほど……大きな動きで受けるんじゃなく、小さく鋭く弾くだけで防御できるのか――」
皆それぞれ、自分なりに色々、発見があったらしく夢中になって見てた。
と、一通り見終わって、ディッドが口を開いた。
「けど、これではっきりしたな。クラインの言う通り、素振りをやると上達が格段に早くなる。俺たちは、普段の練習に素振りを取り入れよう」
「「「おう!」」」
よかった。なんか、みんなに貢献できたようで嬉しい。
けど、ちょっと考えることがあった。
「それにしても、木剣の模擬戦にしても怪我とかしそうだよね? どうしてるの?」
「まあ……あまり強く打たないように加減するとか――しかないけど」
「もっと安全に訓練できないかな――例えばさ、木剣にグローブみたいな革を巻くのはどうだろう?」
僕が言うと、ダガンが口を開く。
「これは革の中に綿が入ってるんだ。これと同じ感じで木剣を包む――か」
「面白いアイデアだけど……ダガン、グローブって結構かかるんだよな?」
ディッドの問いに、ダガンは答える。
「そうだな。革製で綿もあるから、専門の職人が作ってる。この拳サイズで、1万ワルドくらいはするぞ」
「木剣サイズで特注ってことになると――」
リッドが声をあげつつ、結論は口にしない。
みんな、少し黙ってしまった。が、僕はそこで、さらに口を開く。
「その革、なんの革なの?」
「確か、鎧ジカの腹の部分の革だって聴いたことがあるぜ」
鎧ジカか――
ダガンの言葉を聴いて、僕は言った。
「ね、鎧ジカをみんなで狩れないかな?」
「え! 鎧ジカを狩る――だって?」
「うん」
僕が頷くと、リッドが声をあげた。
「そんな! オレたちだけで、モンスター狩りなんて――」
「いや……そう言えば、前に言ってたな。クライン、もうモンスター狩り、やったことあるんだろ?」
ディッドの問いに、僕は答える。
「うん。昨日もクローミンクを狩った。今までには角ウサギも狩ってたんだ」
「そこで実戦経験も積んでたわけだな……けど、鎧ジカなんて、狩れるのか?」
ディッドの注意深い問いに、僕も考えながら答える。
「僕一人なら無理だけど――みんなと一緒ならいけるんじゃないかと思うんだ。鎧ジカを狩れたら、結構な収入になる。それをみんなで山分けして、革剥ぎは僕の知ってる人に頼める。その革を使って、練習用の武器を作ろうよ」
僕の言葉に、皆の目つきが変わってきた。
「なんか……クラインが言ってること――やれそうな気がして来たぜ」
「おれ、やってみたいよ」
ゾーイとゴーイが、続けてそう口にする。ディッドが頷いた。
「よし、やってみよう。クライン、鎧ジカのいそうな場所は知ってるのか?」
「聞いておく。決行は――来週でいい?」
「ああ。頼むぜ」




