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泣きむし測量士は、剣聖になりたい! ~非戦闘職がギリギリの戦いに臨む時~  作者: さとうはるか


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2 スキル:『スキル測量』!


 そこには沢山のスキル名が並んでいた。が、その数が――多すぎる!

 剣術や魔法、その他沢山のスキルが、ずらりと並んでいる。


「これってまさか……」


 このスキルを全部、『試用測量』できる? ってこと? 試用測量ってなに?


「判らない! よし、とりあえず試用測量してみるぞ! まず『剣術』!」


 僕は剣術を選択した。と、『準備スキル』という項目の中に、『剣術』が入る。と、さらに『試用スキル』というスロットが現れた。ここに移すのか?


「……『剣術』スキルを試用スキルに入れてみたぞ」


 僕はそう呟くと、近くの棒を拾って構えてみた。


 試用スキルのスロットに『剣術』を入れると、『剣術Lv1』と表示される。

 ……これで、僕は剣術スキルが使えるようになったんだろうか? ……まさかな。


 僕は疑心暗鬼になりながらも、近くにあった棒を拾って構えてみた。

 構え――からの踏み込み。一刀両断! 横斬り、袈裟斬り、斬り上げ!


 自分でも、まったく驚くくらいに剣術の動きができる。


「剣術レベル1……獲得できてるよ――」


 ……嘘だろ? ホントに剣術Lv1が使えるようになってる!


「ヤッタァーッッ!!!」


 僕は大声で叫んだ。レミールがちょっと驚いて、ブルルと鳴く。


「あ、ゴメン、ゴメン。嬉しすぎて叫んじゃった。けど、やったよレミール! 僕は測量士だけど、剣術スキルが取得できたんだ! ……待てよ――これって『試用』なんだよね?」


 僕は恐る恐る、剣術スキルを『準備スキル』のスロットに戻してみた。

 戻った! そして『試用スキル』は空になる。


「じゃあ……例えば『火炎魔法』は?」


 次は『火炎魔法』を取得してみた。これが準備スキルのスロットに入り、『剣術』と並ぶ。それを次に試用スキルに移した。

――が! 試用スキルのスロットに入らない! どういう事だ!?


「いや待て……何か書いてあるぞ」


 準備スキルの下の端に、注意書きみたいなものがある。なんだ?


『※試用スキルのスロットは、空けて10分経たなければ次のスキルを入れることはできない。またスキルには天職補正はつかない』


 そういう事か! 10分経たないと、火炎魔法を試用できないって事だ。

 ――という事は? 僕は想像する。


例えば戦闘中に毒にやられました。ヤバい! 解毒スキルを取得。準備スキルに入れました。それを試用スキルのどれかと取り換えて、実行できるようにします。


 ……というわけにはいかない、という事か! 10分経たないと、試用スキルのスロットに移せないということは、その間に毒がまわって死んじゃうかもしれないってことだ。


 同じ理由で、この相手は火が苦手だから電撃から火炎魔法にチェンジ! という時も、10分経たないと使用できないという事になる。けど、戦闘中にそんな時間あるわけない!


「そもそも、必要なスキルを探すのに時間がかかっちゃうか。――あ、だから『準備スキル』という棚があるのか」


 けど……

 それでも、この『試用測量』の一覧には、ありとあらゆるとも思えるほどのスキルが並んでる。僕は『試用』という形で、それを――全部使えるってことだ。


「無論、一度に使える数には限度があるし、それに『試用』スキルは、本物のスキルより劣化してるとか、時間制限があるとかなのかもしれないし」


 その辺の能力仕様をよく見極めないといけない。けど……これをうまく使えば、僕はあらゆる事態に対応できるようになれる。…はずだ。


 よく見ると、「準備スキル」には5コのスロットがある。今はそこに剣術と火炎魔法が入っている。

 この状態で試用スキルを空きにしておけば、必要な事態に対して、僕は剣術か火炎魔法のどっちかを選択できるわけだ。そう考えると、5コの準備スキルはすぐに試用する可能性があるスキルを置いておくのがいいわけか。


「……よし、そろそろ10分経ったな」


 僕は試用スキルに『火炎魔法』を移した。


「ようし『火炎魔法』を使ってみるぞ。『火炎弾』!」


 僕の掌から、火炎弾が発射される。その発射にレミールが驚き、ぶるると鳴いた。


「ごめんごめん、驚いたよね。――けど、僕も驚いたんだ。僕は『測量士』だけど、『剣術』も『火炎魔法』も使えた。どんな戦闘スキルも『試用測量』という形で、僕は使えるってことだ」


 これは普通からは考えられないくらいに、大きなアドバンテージだ。これを活用して自分の能力を伸ばせば――きっと、『剣聖』に近づける!


「うん。これは多分、悪くないよ。よし! じゃあ帰ろうか、レミール」


 僕はそう言うと、ちょっと上機嫌になって屋敷に戻った。


「あ、お帰りなさい、クライン坊ちゃま」


 ジョー爺さんが、僕に微笑みかけてくる。僕はジョー爺さんにレミールを預けながら、言った。


「ね、僕は測量士だったけど、測量士が使える以外のスキルが使えたら、凄いよね?」


 僕はちょっとほくそ笑みながら、ジョー爺さんに言った。ジョー爺さんに、『スキル測量』のことを話したら、きっとビックリするに違いない。


 けど、僕の予想を外れて、ジョー爺さんは急に真剣な顔をして、僕の肩を掴んだ。


「クライン坊ちゃま!」

「な、なに――?」

「クライン坊ちゃま、いくら恵まれない天職だとしても、天職で得られる正規スキル以外のスキルを得ようなんてもっての他です!」


 え? ……なんで?


「恐らく誰かから、闇教会のことを聴いたんでしょうが……。確かに闇教会は、金を積めば天職以外のスキルを取得させるという噂もありますが――それは電霊教会、ひいては棋譜魔法のシステムを作り出した電霊聖人、アイザック・ノヴァの偉業への冒涜です」


 僕が何も言えずに、ジョー爺さんの顔を見つめていると、ジョー爺さんは言葉を続けた。


「アイザック・ノヴァは、人がより効果的に経験を獲得して技能を増やせる方法として電霊界を発見し、棋譜魔法を開発しました。その『天職』という『枠組み(フレーム)』には、才能を向かないことに向けたり、合わない組み合わせのスキルを身に着けるより、人がその能力を最もよく発揮できるうように、という願いが込められているのです。だから人は、天職に不満があったとしても、実はちゃんと努力すれば、その天職が一番向いていた――と、判るようになっているのです」


 ジョー爺さんは、力強くそう言った。

 けど、測量士みたいに最初から馬鹿にされる不遇職は、最初から喜ばれる天職に比べて不利じゃないか。


 僕は内心そう思い、うつむいた。と、ジョー爺さんは真剣な面持ちでさらに話を続ける。


「それに……天職以外のスキルなど持っていたら、異端の烙印を押され異端執行官に処分されてしまいますよ」

「え……処分?」

「そうです。早く言えば、死刑執行です」


 え~っ! 


「そ、そんな事で死刑? けど、闇教会からスキルを買う人がいるってことは――死刑だと判ってても、その『枠組み(フレーム)』に不満がある、という証なんじゃないの?」

「いつの時代も体制に不満を持つ者はおります。また、そこで買い取るのは、主に上位スキルです」

「上位スキルって――基本スキルが上限に達しないと獲得できないスキルだろ?」


 僕の問いに、ジョー爺さんは頷く。


「そうです。けど、スキルが上限に達するには、それなりに努力や経験、またそれを受け入れられる自分自身の能力向上が必要です。けど、それができないがために、上位スキルを金で買います。……まあ、多くの場合、天職のフレーム内の上位スキルを買うため、フレームを越えて買った――とは判らないようですが」


 そうなのか……なら、僕のような形で天職以外のスキルを持っていることがバレたら、僕はすぐに異端を疑われることになる。となると――待っているのは死刑?

 僕はブルブルと首を振った。


「判りましたか、クライン坊ちゃま。たとえ不満があっても、天職を全うすべきなのですよ」

「うん……よく判ったよ」


 僕はそう返事をした。よく判った。僕は、この『スキル測量』の秘密を、人に話しちゃダメだ。

 ジョー爺さんは僕の反応に満足したのか、笑みを浮かべた。


 ――と、思ったその翌日。

 学校に行った僕は、早速、周りの男子生徒に小馬鹿にされた。


「お前、レア職らしいな? なんだか教えてくれよ」

「……測量士」


 僕が答えた途端に、周りの男子生徒は爆笑した。


「な~んだ、剣聖様の息子が測量士? 聞いたことね~よ、そんな天職!」


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