表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泣きむし測量士は、剣聖になりたい! ~非戦闘職がギリギリの戦いに臨む時~  作者: さとうはるか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/43

3 初めての――実戦


 僕は学校が終わると、すぐにレミールに乗って帰路についた。


「あ! クライン、一緒に帰ろうよぉ!」

「ゴメン、ちょっと急いでるんだ!」


 僕は馬車から声をかけるシェリルにそう言って、レミールを森まで走らせた。

 泉の傍に到着すると、僕は息をついた。


「やった……僕はやったぞ!」


 僕は興奮していた。何故なら――

 僕はソクガと戦った時、『剣術』スキルを使ってなかったんだ!


 試用スキルの中にも『剣術』スキルは入れてなかった。

 けど――ソクガの攻撃は全部、把握できたし、反撃もできた。

 これはつまり……


 『剣術』スキルがなくても、『剣術』スキルに対抗できるってことだ!


 ……いや、現実的に考えると、たとえばエルフはスキルシステムを使ってないけど、十分に剣で戦える。それから考えれば、不思議じゃない。


 けど、人間の種族で、今やスキルもないのに戦闘職と戦闘する人なんて多分いない。――けど訓練次第では、戦闘スキルを持ってなくても、その上の実力を身に着けることができるかもしれないんだ!


「それにしても――」


 重視すべきなのは、今回の僕の『成長の速さ』だ。


「多分、僕がスキルを『試用』できることが大きい……」


 これは間違いない。同じ時期に『剣術Lv1』を得たソクガに対して、僕は最初は明らかに向うより劣っていた。


 けど、今回はスキルなしでもあいつの動きが全部見えた。実感できたんだ。

 僕の方が上だ、と。


別にソクガより強くなるとかは、大した問題じゃない。問題なのは、多分、なんの練習もしなかったソクガに対し、練習をした僕があっさりと抜いたことだ。


これは僕が考えた――


『スキル』を使って正しい動きを身体に教えた上で、スキルを外して素の自身で練習する。


 ――というやり方が、あってたってことだ。


 けど、これは今まで誰もやったことがない練習法に違いない。何故なら、一旦獲得したスキルを外せる人なんかいないからだ。


「……この練習法を使って、僕はもっと強くなる」


 そう口にしてみた。が、僕はふと今回のソクガとの戦いで、大きく色んな事が判った実感があった。そうだ。『実戦』!


“――後は、実戦から学ぶことだ”


 あの時、フォーミュラはそう言った。

 素振りなんかの一人稽古も大事だけど、『実戦』! これ重要だよ!!


 僕はそう思いたつと、レミールに乗って家に帰った。

 家に帰るとすぐに、ジョー爺さんの処に行く。


「ジョー爺さん、ただいま! あのさ、母さんの小屋の鍵、貸してくれないかな?」


 僕はジョー爺さんに言った。ジョー爺さんは驚いていたが、やがて深く笑みを浮かべて、一本の鍵を僕に手渡した。


「奥様の部屋は――ずっと手つかずで開けてませんでした。少し埃っぽいかもしれませんが」

「うん、大丈夫」


 僕は笑って鍵を受けとる。と、ジョー爺さんが微笑んだ。


「奥様が――きっとお喜びになるでしょう」

「だと、いいけど!」


 僕は走って、敷地の隅ある小屋へと行った。

 この小屋は、母さんが生前、自分の道具置きにしていた小屋だ。


 鍵を開ける。むっとする埃の匂いがして、僕は中に入った。

 薄暗い中で――静かに武具たちが息をひそめている。


 壁には色んな甲冑、それに長い槍や巻かれた鎖なんかがかけられてる。

 そしてずらりと並んだ、横にかけられた剣。


 僕はその中から一本を取り出して、手に取った。

 母さんは細身の剣を使うのが得意だった。


 僕が開けた扉から、陽射しが差し込む。

 手にした剣が、僕の手の中で銀色に光った。


「よし……週末に、モンスター狩りに行こう」


 そう呟いた後、不意に気が付いた。


「そうだ、それまでに木剣じゃなくて、実剣も素振りしときたいな。重さに慣れないといけないし――」


 そう思って壁にかかった剣を見たが――どれもちゃんと切れそうな剣だ。


「素振り用の――刃を潰してある剣ってないのかな?」


 ふと見ると、壁にかけられた剣の下に、丸い筒に放り込んである剣が数本ある。

 僕はそれを一本、取ってみた。


 見た感じだと判らない。足元に舞い込んできた葉っぱを手にすると、刃に当ててみた。

 切れない。あ、これ素振り、あるいは模擬戦用の剣だ。これで素振りしよう。


 そう決めた僕は、それから毎日、学校が終わると模擬剣で素振り練習をした。

 そしてあっという間に週末が訪れる。


 僕はレミールに乗って出発する。目指すのは、低ランクモンスターが生息する、テラン高原。この界隈にいる角ウサギが、メインの獲物だ。


「ブルルルル……」


 レミールが足を止めた。


「そっか、これ以上行くと、レミールには危険なんだね。判った、レミールはこの辺で待ってて」


 僕はレミールから降りて、高原の草深い地域へと進んだ。

 この草むらに隠れて、角ウサギは襲って来る。


 学校の図書館で調べたところでは、角ウサギというのは雑食で、人間も襲ってくる。愛らしい外観とは裏腹に、意外に凶暴なモンスターだ。


 体長は80cmくらいだが、そのうち30cmが頭に生えてる角。この角は実は刀のような片刃状になっていて、角ウサギというよりは刀ウサギと改名した方がいいくらいだ。


「さて……そろそろいてもいい頃だけど――」


 老人が一人で畑作業してるところを襲われて、一旦、傷つけられちゃうと群れで襲い掛かって来る。そして食べられてしまった――という事件もあるような奴だ。雑食で畑の作物も荒らすので、農家の天敵だと言われてる。


「――いたぞ」


 白くて丸いしっぽが、くさむらから見えてる。

 僕はそっと近づいた。『測量』!


 距離は今、5.2m。まだ全然、お互いに危険範囲外だ。

 が、そいつは僕に気が付いた。


 振り返って、顔を出す。白い顔に、赤い眼。そしてその額から――ギラリと光る銀色の角。確かに……刀のようだ。


 角ウサギは近づいてくる。全然、僕を恐がってない。むしろ捕食対象と見做したようだ。……いいだろう。こっちだって、その気なんだ。


 僕もそっと近づく。距離は4.8m。4.7、6――

 角ウサギが攻撃してくる距離がまだ判らない。僕は剣を抜いて身構えた。


 いったん角ウサギが足を止めるが、また近づいて来る。

 距離、4m、3.9m――


「何処で来る……?」


 そう囁いたのは、3.5mの処。

 事前に測っていて判ってるのは、中段に構えて前足を進める場合、僕の攻撃可能距離は170cm。後ろ足を引きつけて踏み込んでも、210cm。


 僕の攻撃可能距離が、角ウサギに比べて遠いのか近いのか――


「ギッ!」


 280cmの地点で、角ウサギが跳躍した。攻撃可能距離は、向うの方が長い。


「むっ!」


 僕は横に動いて、角ウサギの攻撃をかわした。

 ちなみに、今は試用スキルのなかに『剣術Lv1』を入れている。

 だからそれなりに素早い動きができるんだ。


 攻撃が空を切った角ウサギが、再び僕を睨む。

 僕も角ウサギに剣を構えた。


 考えてみれば、こっちが一方的に攻撃できるわけはないんだ。

 けど、想定として角ウサギの攻撃距離は280cmくらい。

 ここまでは間合いを詰める。

 

「ギ……」


 角ウサギが、低い唸り声をあげて赤い眼で僕を睨んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ