第四話 反撃の準備作戦
第四話 プレパリング・フォー・カウンターアタックオペレーション
嘉手納基地の攻撃から、半日が経過した。
嘉手納基地の滑走路はもはや滑走路と呼べる状態ではなく、アスファルトは抉れあちこちに黒焦げの穴が開いている。
人影は少ない。いや、正確には動ける人間が少ないというべきだろうか。
ヘルメットを外したまま地面に座り込む兵士、血を垂らしながら包帯を巻く兵士。誰も動こうとせず、自分の足元だけをみていた。
「…生き残っちまったな」
誰かがそう呟いた。
ー嘉手納基地 地下司令部ー
コンクリートの壁に囲まれた作戦室では数十名の司令部要員がテーブルに広げられた地図を囲む。
「滑走路は?」
「壊滅だ。最低でも3日は使えん」
「航空機はどうなんだ」
「使えるのは数機のみだ。正確な数はまだ把握しきれとらん」
重苦しい沈黙が狭い地下司令部を包む。
その時、沈黙を破るように扉が勢いよく開く。
「失礼します!」
若い伝令兵が息を切らしながら入ってくる。
「ペンタゴンより連絡!」
全員の視線が一斉に向けられる。
「主要部隊として、戦闘機約70機、支援部隊に約30機近くの反撃部隊を編成中とのことです!」
伝令兵が一瞬言葉を詰まらせ続ける。
「それと…司令部及び残存兵力を、速やかに普天間へ移せとの命令です」
「普天間へ?」
「はい」
誰かが苦笑いをする。
「どうやって行けと?滑走路は使えんのだぞ」
司令官が静かに言う。
「ヘリだな…」
「ヘリ?」
「CH-53Kだ」
室内がざわつく。
「それで吊るすと?」
「実績はある。やらなければどうする?ちょうど普天間にはキングスタリオン部隊がいるだろう」
「…成功する保証は?」
「何もせずにやられろと?ここで普天間に移さねば第二波が来た時対処できぬぞ」
「…やるしかないか」
「作戦名は『プレパリング・フォー・カウンターアタックオペレーション…反撃の準備作戦』だ」
ーーーーーーー
数時間後、巨大なCH-53Kが爆音をあげてローターを回していた。
「吊り下げ完了!」
「ロック完了!」
機体の下には傷だらけのF-35が固定されている。
「…冗談かよ」
操縦士がつぶやく。
「命令ならやるしかねぇ。だろ?」
CH-53Kはゆっくりと浮き上がる。
「タイヤ接地!」
「ロック外せ!」
一往復目は順調に進んだ。
再び嘉手納に向かい、ロープをつけている時、
「こちら普天間地上レーダー、沖縄南西24kmにて反応を確認」
「この距離で探知ってことはステルス機だな」
「こちらCH-53、作戦はどうしますか?」
「続行だ。可及的速やかに終わらせろ。」
先程よりも数分早くロープをつけ離陸する。
往路、中間地点に差し掛かった時だった。
甲高い警告音が機内に響き渡る。
「ロックオン警報!」
「なんだと、レーダーのやつらは何をしている!」
「普天間、CH-53。ロックオンを受けた!」
「嘉手納へ引き返せ!」
反転し終え、普天間へ向かう。
だがその時。
「ミサイル発射、4本!」
「来るぞ!」
CH-53Kは急角度で旋回。設計では想定されていない角度で旋回し、回避行動を図る。
「無理だ、F-35が落ちるぞ!」
「知ったもんか、どうせ普天間に着いても使いもんにならねぇよ!」
叫び終わった時、空が白く光る。
爆音、衝撃。
次の瞬間、機体は空中で爆散。
2機目も同様の運命を辿った。
ー沖縄 住宅街ー
「…何の音?」
住民が爆音を耳にし空を見上げると、そこには黒煙と炎が広がっていた。
「逃げろ!」
墜落場所には叫び声と炎が舞う。
消防が緊急で駆けつけるが、生憎の風模様で火はどんどんと延焼していく。
「早くするんだ!応援を要請しろ!」
消防と地域の活動もむなしく、死者19名、負傷者58名、全焼24軒の被害を受けた。そのうちほとんどは墜落時の衝撃によるものであった。
ー港区 在日中国大使館ー
日本政府の代表団は即座に駆けつけ、中国側に猛抗議をした。
だが、中国側の声明は短い。
「米軍との戦闘における不幸な犠牲に、深い追悼の意を表する」
趣旨とはずれたような発言に日本側も激怒する。
大使館前は大規模なデモ隊が行進している。
「中国を許すな!」
「戦争を起こすな!」
警察が出動するも、怒りは消えない。
ーワシントン ホワイトハウスー
大統領は記者会見を行うと発表。定刻通り記者会見場に到着した。
一言一言をはっきりと話す。
「今回の事案は、到底許されるものではない。今回は我が国への攻撃であり、最大の同盟国である日本への攻撃でもある」
フラッシュが焚かれ、辺りは眩しくなる。
「そして、これは重大な国際法違反だ」
一拍置き、
「アメリカ合衆国は、これを宣戦布告とみなし、中華人民共和国に対し宣戦布告をする。これはもう、局地戦闘で済まされる事案ではない」




