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Rise Doll Online  作者:
第一章 Play Game!
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第四十六話 トーナメント 決勝戦 Ⅱ

 巨大な剣を握りしめながら、尋常じゃないほどの速さで走って来る白い着物のような格好の女の子。

 仮面で顔半分を隠しながらも、その瞳の光は爛々と輝き獲物である俺を完全に捉えている。風に靡く真っ黒なポニーテールはその名の由来通り、走る馬のしっぽの様だ。


 素早く右腰から左肩に向けて斜めに振り上げられる極剣を盾で防ぐが、今までに感じたことの無い衝撃と共に、足が地面から離れるのが分かった。少し体が浮き、そのまま後ろに押される。

 

 そのまま振り上げた極剣を真上から振り下すのがみえる。流石にさっきの斬撃の重さからして、真正面から受けるのは得策じゃないことは分かった。

 体を横に向けながら一歩後ろに下がって避ける。その瞬間に鼻先を真っ黒な極剣が通り過ぎて、轟音と共に地面が揺れる…いやいや、こんなもの生身で受けたら鎧ごとぶった切られるだろ!


 地面の振動を感じながらも、バックステップで距離を取る。

 あんな攻撃いくらこのガーディアンシールドでも馬鹿正直に受けてたらこっちの身が持たないぞ。


 ガーディアンシールド…このユニーククラス「ガーディアン」を取得した時に手に入れたものだ。

 他のユニーククラスがどうなのかは知らないが、このクラスはこのガーディアンシールドが専用装備で、この盾無ではクラスの性能の半分も出せない。


 そして、クラスの性能を引き出すためにこの盾は特殊なスキルが付いている。

 その一つが【ハイリペア】というもので、盾の耐久が減るとTPを消費して耐久を回復するもので、普通の自動修復の何倍もの速度で耐久が回復するものや、他にも盾からの衝撃を軽減するスキルなども付いている。


 そして、ガーディアンの名に恥じない防御系のアビリティの数々…並の攻撃力ではHPを減らすことすらできないだろう。まぁ、その代り攻撃系のアビリティが無いからスキルで補わざるを得ないんだけどな。

 この防御特化のクラスの俺に、たった一撃の攻撃で盾の耐久の半分を持って行くという有り得ない攻撃力を見せつける女の子…萌える…じゃなかった、燃えるねぇ!



「はあぁっ!」


 横一線に極剣を振り抜くが、今までの様に完全に受け止めるのではなく、盾の角度を調節しながら受け流すようにして攻撃を防ぐようになる。

 盾のカーブを上手く使って受け流すので、盾の表面を滑るように極剣が流れてダメージが与えられない。


「男なら、真正面から受け止めた方が、カッコいいと思いますよ」

「いやいやいや、いくら何でもこっちの体が持たないっつうの!まぁ、それほど君の攻撃が凄いって事だよ」


 そう言いながら盾を構えるレイジ…多分だけど、此奴は俺の体力の消耗を狙ってるんだと思う。攻撃回数がかなり少ないし、自分から攻めようとしないで守りの体制で待ち構えているからな。


 まぁ、この極剣ぐらいなら二、三時間は振り回し続けられるけど…流石にそんなもの他のプレイヤーも見ていてもつまらないだろうし、そろそろ攻め手を変えるか。 

 極剣で攻めきれなかったのは少し悔しい気もするが、そこのこだわって勝機を逃すのは馬鹿のやる事だ。勝負に負けても試合に勝てばいいしな。


 極剣をポーチに仕舞い、素手でレイジの前に立つ。

 流石のレイジも俺の行動に疑問を抱いたのか、構えていた盾を下ろしてバカみたいな変な表情で俺を見る。


「…なんだ?戦意喪失か?」

「いや、少し攻め手を変えるだけだよ…ほら、構えなくていいの?まだ勝負は終わってないよ」


 レイジが盾を構えるのを合図に、一直線にレイジに向かって走り寄る。


武道蒼炎破(ぶどうそうえんは)!」


 スキル【武道蒼炎破】を発動すると、両手両足に薄らと青い炎のような物が纏わり付くように現れる。そのまま青い炎の揺らめく右手でレイジの盾に殴りかかる。

 バキッと何かが砕かれるような音と共に、レイジの盾の中央部分が小さく陥没する。さらにそのまま殴られた衝撃に耐えられずに壁際まで飛ばされる。


 やば、流石に力入れすぎたかな…このスキル【武道気破】はスキルの【体術】を使っていたら、いつの間にかスキルリストにあったもので、素手の時のみ使用可能なスキルだ。


 発動中TP、MPの回復が止まり、一発毎にTP、MPの四分の一を消費して両手両足の計四回分の高威力の物理打撃属性攻撃が可能だ。

 更に、追加効果…というか、恐らくこっちが本命の効果だと思うけど、硬度の高い…つまり、硬ければ固いほど攻撃力が増すのだ。 

 

 今までは採掘の時に面倒な岩などを壊すときに使っていたけど、やっぱり戦闘用のスキルだったんだな。



「いって~~なぁ」


 尋常じゃない衝撃でかなり吹き飛ばされたんだけど、全く何が起きたか分からない…素手で走り寄って来たかと思ったら、盾に物凄い衝撃が走って吹き飛ばされたのだ。


 少し離れた所で立っている彼女は、左手と両足に怪しい青い炎を纏わせている。

 更に、盾に小さな…女の子の拳ほどの大きさの陥没がある事から、ぶん殴られたんだろうと思う。


「いや、参ったなこれは」


 危うく盾を貫通されるほどの攻撃をされて、流石にTPが馬鹿みたいに減っているけど、損傷が大きすぎるからか、治りがいつもより格段に遅い。

 

 しかし、殴られた後に右手の炎が消えていたし、多分炎の灯っている部位での攻撃力が上がったんだろう。そう考えると後両足と左手だけだが…もう一発受けたら確実にこの盾はぶっ壊れるだろう。

 だが、残りの攻撃さえしのげば勝機があるかもしれない。この高威力の攻撃なんだ、それ相応の使用条件か使用後のペナルティがあるはずだ。


 再度走り寄って来るが、今度はこちらから先に仕掛ける。

 攻撃範囲は身長差と片手剣のリーチの分だけ俺の方が広い。少女が走り寄って来る前に、出来る限りの最小限のモーションで切りかかる。

 まぁ、分かっていた事ではあるが、その斬撃は当たり前のように空を切った。


 少女は攻撃の後の硬直を狙って俺の右側に回り込むが、すぐさま剣を引き抜いて横薙ぎに振るって少女を引き離す。

 再度駆け寄ってくるが、リーチの長さを最大限に生かして、近寄らせないように最小限のモーションで攻撃を繰り出す。


 こんな攻防も流石にそう長くは続けられないだろうし…一か八かアレを試してみるか。



「よっと…」


 レイジの鋭い斬撃をステップで避けて、何度目かの後退をする。

 時間の制限はないけど、こうも何度も押し返されるのは面白くないか…次は少しばかり強引に行くか。


 姿勢を低くして、重心をできるだけ前に持ってくる。そのままタイミングを見計らって一気に地面を蹴って飛び出す。


 今までよりも早い突撃のせいか、レイジは若干反応が遅れていて、攻撃が来るまでにかなり懐の近くまで潜り込めた。

 頭上から振り下ろされる剣を右手で鷲掴みにする。手の平に剣が食い込む感じがして少しダメージを受けるが、今は気にしないでおこう。

 

 軽く左手を握って拳を作り、腰の位置まで腕を引いて思いっきりレイジの腹に向かって拳を突き出す。

 バキッという鈍い音っと共に、レイジの鎧が砕けて拳が体にめり込む。そのまま拳を振り抜こうとする前に、突然俺の腹に何かが触れる感触がしたかと思うと、レイジとは反対方向に吹き飛んでいた。



「あっぶねぇ~」


 地面に二本の溝を残しながら、何とか二本の足で地面に立っている。

 自慢の鎧は見事に腹の部分が丸く砕かれて、鎧下の服も破れてい素肌が見えている。これほどの高威力の攻撃は今までで初めてだ。ガーディアンシールドがあそこまで壊れるのも納得だ。

 

 あの時、一段と姿勢が低くなったのを見て、勝負を決めに来るのだろうと分かり、固有スキル【痛み返し】を使った。


 このスキルは自身の受けるダメージを半減し、更に相手に被ダメージの三倍のダメージを返すとっておきのスキルだ。まぁ、効果時間が三秒で尚且つ物理攻撃しにか効果が出ない等の弱点はあるが、使い所を考えれば強力なスキルだ。


 まぁ、今回ばかりは本当に賭けだったな。もしもダメージを半減してもHPを削りきられるかもしれなかったし、そもそも攻撃のタイミングがもう少し遅かったら効果時間終了で終わってたしな。

 そう思いながらHPバーを見ると、残りはほんの数ミリ程しか残っていなかった。


 少女が吹き飛ばされた方向を見ると、濛々と土煙が上がっている。いや、流石に終わっていてほしい物だけどな。

 そう思いながら煙が張れるのを待って居ると、突然煙の一か所が円のように晴れたかと思うと何か黒い物が見えた…それはだんだんと大きくなり、直ぐに黒い極剣だと分かった。


 突然の事に反応が遅れる。しかし、ガーディアンのアビリティの【オールガード】の効果で自動的にその攻撃を防いだ…いや、防いでしまった。

 猛スピードで飛んでくる極剣をガーディアンシールドで防ぐが、元々半壊状態だった上に拳で陥没した位置に極剣が当たり、無残にも金属の嫌な音と共に盾が貫かれる。


 極剣の突き刺さった盾を持っていられるほどの筋力が無く、バランスを崩しそうになったので、盾を外す。


 ドカっという音がして極剣が突き刺さっている盾が地面に落ちる。そして、視界が開けるとそこには少し土で汚れている巫女服を着て、なぜかにっこりと微笑んでいる少女が居た。


「……」

「…や、やぁ。こ、こんにちは?」

「うん、こんにちは…そして、沈め」


 この緊張した場に相応しくない笑顔と声色で「沈め」と恐ろしい事を言い放ち、綺麗な回し蹴りを放つ。勿論青い炎を纏っている足で。


 最後に何か白い物が見えた気がしたけど…これ言ったらどんな目に合うのかわからないし、思い出として記憶しておこう…いいよね、これぐらいのご褒美は。

 そんな少し壊れた思考の中、視界が真っ黒になっていくのであった。


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