第四十四話 トーナメント本戦 Ⅳ
『さ~て、この準決勝の勝者がレイジ選手との決勝戦を迎えるわけですが…さてさて、カイト選手もナナシ選手もバリバリのアタッカーですけど、どうなるのでしょうかね』
『う~ん、二人とも素早さもあるし腕力もあるし、いい勝負だとは思うけど…』
修理のまだ済んでいない極剣を引きずりながら、フィールドの中央に居る対戦相手の前まで歩いていく。
対戦相手の男はさわやかな笑顔で俺を迎えると、これから対戦する相手とは思えないほどの弾んだ声で声をかけてくる。
「ねえねぇ、君でしょ?ジン達をフルボッコにしたのって」
「…あぁ、あのデカい威張った奴らか。そうだけど…何?あいつ等の知り合いで仕返しでもしようって?」
「ははは、そんな事しないよぉ~。ただ、君に興味があってね…」
「興味…ねぇ。こっちは興味ないんだけど」
「あはは、つれない事言うねぇ…まぁ、話はこれ位でさっさと始めようか!」
その言葉が合図になり、一気に地面を蹴って懐に入ろうとする。流石にシード選手だけあって今までの他のプレイヤーよりも明らかに動きが鋭い。
後ろに下がって避けようかとも思ったが、俺が考えているうちに腰の刀に手を伸ばしていた。しょうがなく俺も極剣を盾にして守りの体勢をとる。
極剣を右手で逆手に持ち地面に突き刺して、刀身の腹を抑えてを置いてガードしようとしたが、極剣の刃に刀の背を滑らせて鋭い突きが飛んでくる。何とかギリギリの所で体を横にして突きを躱す。
その場でジャンプしながら地面に差した極剣を抜きながら、刀を構えているカイトに向かって極剣を振りかぶって投げつける。
カイトは少し驚いたような顔をした後、直ぐに楽しそうに笑いながらわざわざギリギリで避ける。そのまま地面を這うぐらいの低い姿勢で俺の着地地点まで走って来る。
空中で腰の剣を抜きながら、走ってきた勢いをそのままに切りかかって来るカイトの刀を抜いた黒い直剣で防ぐ。
ほんの少し拮抗したが、直ぐに後ろに押し返される。着地と同時に鞘に納めた刀に手をかけながら一直線に風を切りながら飛んでくる。
ゴウという風の音を切り裂くような手元がぶれて霞むほどの速さの居合切りを撃って来る。その刀を剣で受け止めるが剣を伝ってくる衝撃からもその威力が分かる。
「やっぱり君は、面白いねぇ」
「そうか、自分では面白くしてる気はないんだけどな」
剣を握る手に力を籠めて、足の分張りを意識しながらカイトを押し返す。
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目の前の小さなマントの…男の子かな?まぁ、見た目なんて些細な事は関係ないか。このゲーム内では皆平等なんだ、その中で強くなるからこそ面白いんだ。
短時間だが攻撃速度と移動速度が上昇するクラスアビリティの【疾風斬走】を使い、一気に距離を詰めてさっきの居合切りよりもさらに早く、がら空きの胴に向かって渾身の力を籠めた居合切りをぶち込む。
風を切り裂く音と共に、真一文字になるように地面を平行に刀を滑らせる。
渾身の力で振るった神速の刀が、まるで遅い…スローモーションのように感じるほどの速さでナナシの黒い直剣が俺の刀を止めた。
さらに力を籠めて押してみるが、まるで分厚い鋼鉄の扉を押しているかのようにビクともしない。
一旦距離を取ろうと、鍔迫り合いの隙を見て腹に蹴りをするが。その攻撃すらも見切られていて、後ろにジャンプして避けられる。
刀に目を移すと、さっきの打ち合いの時だろう、刀の半ばほどに薄らとヒビが入っている。他にも所々刃毀れをしている…粘りの高い刀をここまで草臥れさせるなんて、どんだけ固い剣なんだよ。
一旦刀をポーチに戻して、さっきギルドの鍛冶師に作ってもらった属性付きの刀を装備する。
装備した刀は「炎牙」という名で、ダリアにある山脈の鉱山の奥地の雑魚MObが短い周期で大量POPする場所で採れる「火石」を使たものだ。
鞘から抜くとほんのりと赤みを帯びていて、柄を持つ手にも温かさが伝わってくる。
炎牙を右手で構えて姿勢を低くして地面を蹴って加速する。走りながらも、ステップを加えて更に加速しながら、あえて頭を狙って刀を振り下ろす。
当然の事ながら、簡単に刀を止められてしまう。しかし、これも狙い通りだ。
そのまま肉薄したまま高速で斬撃を浴びせるが、その全ての攻撃がが巧みな剣捌きで上手く受け流され、防がれる。しかし、武器を合わせる毎に徐々に刀身の赤みが増していく。
何回かの攻防の時、ついに狙い通りの効果が現れた。
アーツによる三連攻撃の最後の攻撃の時に、赤々と熱を持った光を帯びていた刀から、真っ赤な炎が噴き出した。
真っ赤に光る刀身から揺らめく炎が噴き出している。
これは火属性武器の追加効果の「炎上」だ。武器の摩擦により熱が溜まっていき、ある一定の限界値を超えると武器が炎上する。
この「炎上」は元々の武器の火属性攻撃力を上げ、更に一定の確立で相手に「火傷」のデバフを与えることができる。
「さら、こっからが本番だよ!」
言いながら刀を両手で構えて上段から切り込む。
黒い直剣で簡単に防がれるが、炎上の効果で完全に防いでも目に見えてHPが削られる。
それに気が付いたのか、今度の斬撃はギリギリで回避するが、着ているマントが僅かに刀の炎に触れるとマントが燃える。
そして、それを見て一瞬で後方に大きく飛びのいてマントの燃えている肩を払って火を消す。
やっぱり、思った通りだ。何でかは知らないが、ナナシはマントを脱ごうとはしなかった。マントに何か特別な加工がされているのか、それとも別の特別な理由があるかは知らないが、これでナナシを崩すことができる。
飛び退いたナナシを追って更に攻撃を仕掛ける。
思惑通りにナナシは削りダメージを気にして回避に専念した。しかも、マントに火が付かないように攻撃をわざと大きな動作で避けている。
大きな動作で避けると隙が生まれる。その僅かな隙を狙って斬撃を叩き込むが、流石にそう簡単には切らせてくれなくて、人間の動きを超えるような避け方をしたり、剣で防がれる。
しかし、攻撃を剣で防いでも炎上の追加ダメージのおかげで、確実にダメージを蓄積させることができている。まぁ、少し物足りないといえば物足りない…だって、僕が両手で刀を振るっているのに、ナナシは余裕か知らないが片手で平然と防御している…スキルかアビリティか、ステータスか分からないが、かなりの腕力と素早さだ。
だが、流石にここまで十数分も動きっぱなしで、お互いにそろそろ体力の限界だろろう。
もう少し戦っていたかったけど、体力的にしょうがないかな。この後にフレンド登録しておけば何時でも勝負できるかな…
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距離を取って攻撃の隙を狙う…お互いにHPはレッドになっている。どちらが先に攻撃を決めるかで恐らく勝負が付くだろう。
無駄に体力を使うよりも、待ち構えて一撃に全力を籠める居合切りの構えで待ち構える。すると、意図を察したのか、真正面から弾丸の如き速さで突っ込んでくる。
攻撃範囲内に入る寸前で、最速最高威力のアーツ「一閃・真斬」を放つ。水平に振るわれる刀は青い光さえ霞むほどの速さで振るわれ、吸い込まれるようにナナシを横一文字に切り裂く。しかし、斬った感覚で分かった…切ったのはナナシの着ていたマントだけだ。
気配を追って後ろを見るが、地面に突き刺さった極剣に足を付ける。バキっという鈍い音を残して極剣を蹴り折りながら真っ白な影が飛び込んでくる。
振り向ながら苦し紛れで刀を振るうが、スライディングの様に滑り込みながら避けられる。
そして、刀を振りきった所に黒い直剣が胸を貫いた。
「負けたよ…」
「…面白かったよ」
「あぁ…僕もだよ…」
白い狐の面で顔を半分隠している黒髪の少女は、剣を握ったままそう言った。




