第四十三話 トーナメント本戦 Ⅲ
素早く右手の剣で切りかかるが、その分厚く固い壁盾で簡単に受け止められる。さらに追い打ちをかけるべく左手の剣で盾の隙間を狙って突きを出す。しかし、剣が届く前に素早くバックステップで距離を取られる。
「流石に簡単にはいかないか…こりゃ、燃えてくるねぇ!」
「あぁ、俺も久しぶりに歯ごたえのある戦いができて嬉しいよ」
体を完全に隠せるほどの壁盾を構えながら、レイジは不敵な笑みを浮かべる。
まだ数回しか斬り合いをしていないが、あの盾は馬鹿みたいに固いくせにその重さを感じさせないほどの身軽な動きをしている。
しかも、結構攻撃しているはずだがHPがミリしか減ってない。それに、攻撃を盾で防がれると鋼でも切り付けているような、重い感覚とともに腕に負荷がやってくる。
おかげで腕が痺れてきやがった…これは早々に勝負をかけないとじり貧だな。
両手の長剣を握る腕に、さらに力を籠める。
「さて、いっちょぶちかましてやるか!!」
とっておきのスキルを使うか。
素早く頭の中に取得しているスキルを思い浮かべる。すると、目の前の何もない空間にスキルウインドウが現れ、その中から【連撃】を選択する。
更にアビリティの中から【双刃連斬】を選択する。
スキルとアビリティの使用と同時に両手の長剣が薄く青色に光りTPが徐々に減っていく。使用したスキルの【連撃】は一定時間アーツの威力減衰時間をなくすもので、更に連続でアーツを使う事でダメージにボーナスがつく。
そしてアビリティの【双刃連斬】はTPを毎秒最大値の百分の一消費する…つまり、最大百秒の間攻撃速度と攻撃力が上がるものだ…まぁ、スキルやアーツを使わなければの話だけどな。
「いくぜぇ!」
「おう、こい!」
地面を思いっきり蹴って接敵し、使用できるほぼすべてのアーツを通常攻撃と合わせて連続で叩き込んでいく。
「なっ、くっそ」
なるべく攻撃の切れ目がないように考えながら、時には左右にステップで移動して翻弄しながら攻撃をTPがある限り続ける。
『おぉっとぉ!これは物凄い連続攻撃だぁ~!!さすがのレイジもこの攻撃には守りの一手か!』
『う~ん、この攻撃の勢いは流石「双牙」と言われるだけはあるけど、疲労はかなり溜まるだろうから、ここで削りきれないと危ないねぇ~』
攻撃を続けると、少しづつだがガードが緩くなっていく感覚…攻撃の瞬間に今までよりも多く、目に見えてダメージが通るようになっていくのが分かった。
残りのTPは半分ちょいか…このまま上手くいけばいいんだけど、そうはいかねえよな。
「リーウェル・ストライク!」
五連撃の斬撃が息もつかせぬ勢いで放たれるアーツだ。しかし、実はこのアーツは最後の一撃のモーションが先の四発の約二倍と隙がある。
そして、その最後の五発目に合わせる様に、レイジが動いた。
「シールド・グラッシュ」
重い壁盾が、その重さを全く感じさせないほどの速度で迫ってくる。しかし、アーツの最中は動くことができない…このままぶつかるしかない。
ガツンと、それこそ大型のトラックを殴ったような、物凄い衝撃が腕に走る。
しかもそれだけでは終わらずに、アーツを潰されて体勢が崩れている所にほぼ真横から大盾が迫ってくる。
「くっそ、喰らってたまるかよぉ!!」
迫る盾の動きを見切って体を捻りながら、腕を交差させて防御態勢を取る。そのすぐ後にガツンと盾に殴られて数メートル後ろに押し返される。
すぐさま体勢を立て直そうとするが、既に目の前に幅の広い大剣にも見える片手剣を振りかぶっているレイジの姿が見えた。
横に転がるようにして避けながら、その反動で起き上がり隙だらけの横っ腹に剣を突き刺そうとするが、完全に見えていない筈なのに的確に盾の中心で攻撃を受け止められる。
そのまま攻撃して盾で防がれ、反撃され回避して攻撃のループを数回続ける。
流石にスタミナもやばいし、何よりも腕の疲労が限界を迎えていて剣を握っている感覚も薄れているほどだ。
「ハァハァ…決めるか」
一旦バックステップで距離を取り、レイジとの距離感を測りながらダッシュで近づく。
後数歩で攻撃範囲に入るという所で一瞬立ち止まる。
「グロウスド・スラッシュ!」
二本の長剣を地面に突き刺すと、そこから体を隠すぐらいの背の高い青い斬撃がレイジに向かって飛んで行く。
その斬撃の後ろに着いて走る振りをして、レイジが盾を構えるのを見計らって思いっきり踏み込んでジャンプする。
レイジは丁度斬撃を盾で受け止めた瞬間で、俺はほぼレイジの真上に居る。
レイジの大盾は馬鹿みたいにデカくて固いが、その大きさゆえに攻撃を防ぐと完全に視界が塞がるのが弱点だとおもう。一応察知系のスキルを警戒して【隠密】を使っておいた。
「ハルウェナ!!」
長剣を同時に相手に向かって突くアーツだ、しかもこのアーツは追加効果があり、更に左右に切り開くという高威力の攻撃に繋がるのだ。
レイジは先の攻撃を防いだばかりで、更に【隠密】の効果で俺の正確な位置はまだ分からないはずだ、ここで決めて一気に片を付ける。
「なっ!?」
そこで俺の視界の端に、何かが見えた…そして、気がついたら俺は地面に倒れ伏していて、顔を覗くようにレイジが爽やかな笑顔を向けていた。
「…参った」
その俺の声と共に、勝者の名前が呼ばれた。




