第四十話 第一回銀剣杯トーナメント 本戦 -開幕-
彩芽と彩華の二人も加えて、少し遅めの昼飯を終えて屋敷に帰って来た…のは良いんだが。
「(おい、アリス、何むすっとしてるんだよ)」
「(別に…葵がどこで女を作ろうとも、私には関係ないわよ…)」
「それでですね…兄貴、聞いてるんですか?」
「あ、あぁ、聞いてるよ」
談話室のソファーの俺の右横に座って妙にむすっとしていじけているアリス。その反対側には、彩華が密着して、ハイテンションに話しかけてくる。
普通ならハーレムだろとか思われるかもしれないが、アリスの無言の威圧と彩芽のハイテンションに挟まれてかなり居心地が悪い…代われるもんなら代わってほしい気分だ。
一方彩芽の方は女子組と早くも打ち解けて楽しそうに話している。昔から彩芽は人付き合いが上手かったからな。
♦
翌朝、何時もの様に横で寝ているアリスを起こして、朝食の支度をしようと一階に降りる。
すると、庭の方から誰かの声が聞こえてきた。すこし気になって覗いてみると、彩華が何かの格闘技の型を練習していた。
何時もやっているのあろう、動きにキレがあり真剣に練習に打ち込んでいるのが一目でわかる。
声をかけようとも思ったのだが、真剣にやっている事だし声をかけて集中を乱すのも良くはないだろうし、そのまま声をかけずにそっと窓から離れた。
朝食後、勉強を皆でやっていると湊から電話がかかって来た。何か嫌な予感がしたが、二人を預かっている以上出ない訳にもいかないだろう。
「もしもし…」
『あ、もしもし、俺です湊です』
「んで、何の用だ?二人ともお前と違ってしっかりしているし問題ないぞ」
『あはは…えっとですね、荷物の方なんですけど、今日の午後二時近くに届く予定になってますんで、よろしくお願いします』
荷物?荷物ってなんだろう…俺は別に頼んだ物も無いんだが。
あぁ、彩華と彩芽の二人の荷物か。そういえば少し大きめのバッグ一つだったから荷物が少ないとは思っていたけど、そう言う事か。
「あぁ、分かった」
『それじゃあ、二人の事お願いしますね』
そう言って電話は切れる。
♦
午後二時、他の皆がRDOにINしている中三人で雑談をしながら荷物の届くのを待つ。
「そういえば、葵さん達ご兄妹はこのお屋敷にお住まいなんですね」
「いや、一応この屋敷も持ち家だけど、普段は隣の普通の一戸建てで暮らしてるんだよ。ここはたまたま皆が泊まりに来て部屋数が足りないから、この休みの間だけ使ってるんだよ」
「へ~、そうなんだ。じゃあ、あたし達の部屋は別にあるんだね」
「あぁ、考えてなかったな…そう言えば、どれぐらいうちに居るんだ?」
まぁ、長くても一、二週間だろうし、最悪スズとアリスの部屋にでも寝てもらえばいいかな。
「確か…二年ぐらいだってお父さんは言ってましたね」
「そうか、二年ぐらいか……二年?」
「あれ?お父さんが話してあるって言ってたんだけど、葵さん聞いてないんですか?」
二年…いや、流石にそんなこと聞いていたら忘れるはずないし、間違えなく聞いてない。
いや、だが待てよ…湊の事だから、単純に言い忘れているって事も大いにあり得るし、その事で二人に要らぬ気遣いをさせるのも忍びない…
「いや、もう少し長い期間って聞いていたからな」
「あぁ、そうなんですか。お父さんも確かな期間は分からないって言ってたし、その関係で葵さんに頼んだって言ってましたしね」
「兄貴の事を信頼してるって事ですね!やっぱり兄貴は凄いよ!」
「と言う事は…問題は二人の部屋か……流石に一緒の部屋は嫌だろ?」
「え?一緒の部屋じゃないんですか?今も私たち二人一緒の部屋ですよ?」
マジか…いや、女の子だし、流石に中の良い姉妹と言えどプレイべーな時間は要るもんだと思うんだけど、二人がそれでもいいのなら一部屋良い部屋がある。
♦
二人の荷物も届いたので、早速屋根裏部屋に持って行ってもらう。
この屋根裏部屋は元は要らない荷物を置いておいたが、隣に屋敷を持ってからは屋敷の地下の倉庫に物を入れるようにしたので今は使っていない。
週に一度は掃除しているので埃っぽくもないし、二人で使っても十分な広さがある。
二人の荷物が次々と部屋に運ばれていくが、二人分にしては意外に荷物が少ない気がする。
一時間もしないでほぼすべての荷物が部屋に運び入れられた。一応小さいながらに箪笥とベッド、テーブルなどの家具はあるが、小さい荷物の入っている段ボール箱は二人分でも十個しかない。
「以外に二人の荷物少ないんだな」
「そうですか?私は要らないものは割り切って捨てちゃうからかな。彩華はそもそも物を持ってないからじゃないですか?」
荷ほどきを手伝おうとも思ったけど、流石に女の子だし、一応男の俺に見られてくない物もあるだろうから、何かあったら電話をするように言って出て行く。
♦
『さて、いよいよやってきました銀剣杯トーナメント、本戦!参加者のみならず、観戦者の皆さんも気合十分ですね!!』
『そうだね~、まぁ、ここでは賭け事も特に禁止されてないからね。まぁ、私も人の事は言えないんだけどね』
『そうですか!まぁ、今回は初のユーザーイベントともあって、物凄い盛り上がりですね!』
会場にはかなりの人が入っており、物凄い熱気にあふれている。
ここぞとばかりに名前を売るためか、料理スキル持ちの人が売り子をやったり、出場者に武器のメンテなどを申し出ている。
『さて、それでは皆様が心待ちにしておりましたトーナメント表を発表いたします!』
そう言うと会場の中心に浮かび上がっていた四面のスクリーンに、総勢十二名の参加者の名前と棒線で対戦者が割り振られた票が映し出される。
そのトーナメント表の左右には名前のない空欄のシードの枠があった。
『さて、実は今回は予選勝利者の他十二名の他にも、二名のシードのを事前のアンケートで決めておりました。その一人目は!今回のトーナメントの提案者でもあり、銀剣騎士団のGMで、更にはユニーククラス「ガーディアン」のレイジさんです!』
「「「おぉぉ!!」」」
フィールド中央にスポットライトが当てられ、レイジが観客の方に手を振っている。会場からは割れんばかりの歓声がおこる。
『さて、次のプレイヤーも名声では負けていないのではないでしょうか!猛獣の牙のGMにして、最強の剣士と噂されるカイトさんです!!』
レイジの隣に同じようにスポットライトが浴びせられ、革鎧を着た銀髪の青年が同じように手を振って声援にこたえる。
『さて、今回のトーナメントはこのお二方をシード選手として計十四名で争われます。さて、今回のトーナメントの優勝を飾るのはいったい誰なのでしょうか!』




