第三十八話 休日のお出かけ
意外に長くなったので二つに分けます
次回でリアルパートはおしまいの予定。
何やら寝苦しく、目覚めの悪い朝となった。
目を開けると目の前には何時も見る顔ではなく、苦笑いをしている秋保の顔があった。
「…近いんだが」
「にゃはは~…いや、寝顔可愛いなと思って、つい」
夜中にアリスが潜り込んだのは覚えているが、いつの間にやら秋保も潜り込んでいたようだ。
まぁ、どうせ部屋間違えたとかだろう。この屋敷無駄に部屋数があるからな。
「はいはい、そんじゃ皆を起こしてくれ。女子部屋はこの部屋の右二つ隣だからな」
「了解~」
秋保が足早に部屋から出て行くと、背中の方でもぞもぞとアリスが動く。
「…」
「ほら、起きろ」
「…眠い」
寝ぼけ眼を擦りながら起き上がるが、なぜ毎回シャツしか着てないんだよ。
ベッドから起き上がり、部屋に備え付けの洗面台で顔を洗い歯を磨く。歯磨きが終わる頃にやっとアリスも覚醒したらしく、顔を洗い歯を磨いた後化粧台の前に座る。
何時ものように髪をとかすが、少し髪の毛が長くなったな。
前は座っても床に着かなかったのに、今は余裕で床に髪先がついている。
「アリス最近髪の毛伸びたな」
「あら、そうなの?自分じゃ気が付かないのだけど」
「もう夏だし、この際バッサリ切ったらどうだ?」
少し毛先を弄びながら、真剣な表情で考える。
「いいえ、辞めとくわ。気が変わったら切ってちょうだい」
「はいよ」
♦
「あぁ~、びっくりした。いきなり目開けるんだもん…」
広い廊下をのんびり歩きながら、あお君の寝顔を思い出す。本当に可愛くお人形みたいに整った顔立ちで、男の子で同い年とはとても思えない。
「そういえば…なんであお君と一緒に寝てたんだろう」
夜のことを思い出そうと頭をひねっていると、女子部屋の前まで来ていた。
まぁ、思い出せないような事なら多分寝ぼけて部屋を間違えたとかだろう。
「おっはよ…うぉ!?」
二人を起こそうと元気よくドアを開けたのはいいんだけど、なんで鈴は床で寝てるんだろう。そして、なんで朱里は二つのベッドに橋のように体を投げ出して無駄にすごい格好で寝ているんだろう。
「あぁ、思い出した」
昨日は女子部屋で二つのベッドに三人で寝ることになったんだけど、朱里が寝相が悪いっていうから私と鈴の二人で一緒に寝たんだ。
そしたら、いきなり夜中に痛みで目が覚めたと思ったら、なんでか鈴と一緒に床に転がっていた。
ベッドの方を見ると朱里が両足を私たちのベッドに投げ出していた。きっと寝相の悪い朱里に蹴り落とされたんだと思う。
それで、朱里も起きないし鈴も起きないしで、どこか別の部屋で寝ようかと思って適当に部屋を開けてベッドで寝たんだった。
そのベッドが、偶々あお君のベッドだったんだな。
床で寝ている鈴を起こそうと部屋に入ったら、いきなりガバッと朱里が勢いよく起き上がろうとするが、ベッドをまたいで寝ていたために床にお尻から落っこちる。
「うぎゃ」
「ふにゃ!?」
朱里が落っこちた振動と音で、変な声を上げながら鈴も起きる。
二人とも凄い寝相で寝ていたからか、寝癖が物凄い。
「ほら、二人とも、もう朝だよ」
「あ、あきほ先輩、おはようございます」
「うぅ~~」
朱里はバッとお尻をさすりながら起き上がるけど、鈴はまだ寝ぼけているのかボケッと座ったままだ。
「ほら鈴、しゃんとしないと…もぉ」
「あぁ、鈴姉は朝弱いっすからね~」
「そうなんだ…って、着替えるの早い」
いつの間にやら運動用のシャツと短パン姿の朱里…そういえば、休日は必ずジョギングするって言ってたっけ。
「う~ん…それじゃ、外出る前についでに男子二人も起こしといてね。外から声かけるだけでいいから」
「了解っす。それじゃ、行ってくるっす!」
さて、それじゃあ、このお寝坊さんを何とかしますか…まてよ、今なら何やってもバレナイヨネ?
♦
アリスと連れ立って一階に降りると、ホールの脇にある休憩用のソファーでなぜか沈んだ雰囲気を纏っている秋保が居た。
「秋保…どうしたんだ?」
「あぁ、あお君…いや、少しね」
顔を上げた秋保だが、何とも言えない顔をしていた…いったい何があったんだろう。
少しすると、鈴が洗面所から戻ってきた。
すると、いきなり秋保が鈴に向かって走っていき抱き付いた。
「すず~~」
「ふにゃ!?」
いきなり抱き付かれて鈴も混乱しているようで変な声をだす。秋保はそんな事はお構いなしに軽く引くぐらいの抱擁をしている。
「大丈夫だよ、成長期はこれからだよ。私は鈴の見方だかんね!」
「え、え?…えっと、よく分かんないけど、ありがとね?」
いや、本当に何があったんだよ…
♦
台所で簡単に朝食の支度をしていると、玄関の戸が開く音がして何かがドサと落ちるような音がした。
気になって見に行くと、居ないと思っていた槐が床に倒れていて、その横で朱里が苦笑いしながら槐をゆすっている。
「…なるほど。槐も馬鹿だな」
「う…うる…せぇぇ」
「あはは~、なんかごめんね。玄関で偶々会って、ジョギング行くって言うからさ。ここら辺の道は分かんないんじゃないかと思って、一緒に行こうって誘ったんだけど…」
まぁ、そんな事だろうと思ったけど。
でも槐も流石陸上部なだけはある、よくもまぁ、朱里のフルマラソンに付いて行けたな…まぁ、死にかけてるんだけど。
「ほら、朱里はさっさと風呂で汗流して来いよ。槐…大丈夫か」
「……た、たかが…ジョギング、ごときで…へばってたまるかぁ」
「はいはい、ほらとっとと行ってこい」
朱里はルンルン気分で、方や槐は今にもぶっ倒れそうになるながらも風呂に向かう。
♦
二人が風呂から上がる頃に、丁度飯の支度もできたので皆で朝食にする。
今日はパンにチーズベーコンエッグ、野菜スープにシーフードサラダだ。
「あお兄、御代わりっす!」
「はい、これが最後だからな」
「どうもっす!」
なんか今日は何時にも増して朱里の食欲が凄い気がするが、もしかしたらこれが成長期ってやつか。
鈴にも早く成長期が来ればいいんだけどな…まぁ、もうこれ以上成長しないかもしれないけど。
「ほらほら、鈴。私の分も分けたげるよ。たんとお食べ」
「え、ちょっと…あ、ありがとう」
秋保が自分のベーコンエッグを鈴の皿に移す。
それを見て、物欲しそうな顔をする朱里。
「あ、すず姉ばっかりずるいっす!」
「朱里ちゃんはもう十分大きいでしょ」
少し不満そうな顔をする朱里。
いや、スープ三杯にパン一斤でもまだ足りないのかよ!
「…そういえば、今日は皆どうするんだ?」
「そうだな…トーナメントの本戦もメンテナンスで明日に持ち越しだしなぁ」
「あぁ、そういえば…」
昨日皆が風呂に入っている間に、眼鏡から電話があったのだ。
なんでも、NPCのプログラムにバグが発生したらしく、その調査と解決のためにメンテナンスをするらしい。
それにあたって白と黒を借りたいと言ってきた。まぁ、断る理由も無いので貸し出したけど…プログラムは俺も試作段階のものを確認して問題なさそうだったし、そうそうバグが発生する事は無いんだけどな…
「そうか、今日は暇なんだな。…それじゃあ皆で、ASIAにでも行こうか」
「え?本当っすか!」
「おぉ、それは賛成だよ~」
「俺も新しいグローブ欲しかったんだよな」
皆結構乗り気で良かった。
ASIAとは、最近駅前にできた大型のショッピングモールで『このショッピングモールで買えないものはない!』の宣伝で有名だ。
どうせ白と黒を貸し出した手前、眼鏡に状況を聞かないといけなかったし、ついでに皆の暇も潰せるし食料品と雑貨の買い足しもできるしな。




