第三十六話 トーナメント予選 Ⅵ
「オーバー・クラッシュ!」
炎の渦が真っ二つに割れ、中から銀色の巨大な剣が現れる。
その巨大な剣が地面に振り下ろされると、地震かと思うほどの振動と轟音が会場中に響いた。
「なっ!?」
そのまま、振り下ろされた巨大な剣を引きずるようにして、回転切りを放ち反応の遅れた数人の前衛を吹き飛ばす。
吹き飛ばされた男達は壁に強かに体を打ち付け、数人は光になって消える。
「何なんだよ…それは」
「新武器種の極剣の初期品だよ」
チビが少し面白そうに言い放ち、身の丈の倍もある巨大な剣を構える。
新武器種って…どこの馬鹿がこんなもん作るんだよ。
たったの一発で、前衛を薙ぎ払うような武器なんてあってたまるか。
いや、まてよ…確かに馬鹿みたいにデカいしかなりの攻撃力だが、それだけデカいならかなりの重量のはずだ。さっきの薙ぎ払いだって、不意をつかれただけでモーション自体は遅かった。
「距離を取れ、攻撃範囲には入るな!遠距離から削り倒せ!」
吹き飛ばされた残りの前衛も何とか起き上がり、ヒーラーの回復魔法で回復させる。
その間にも接近されないように距離を取りながら、遠距離攻撃でチビの動きを制する。
放たれる弓や魔法、遠距離アーツを極剣で相殺したりジャンプやステップで回避する。
一瞬攻撃が止んだのを見計らい、極剣を棒高跳びの棒のようにして思いっきり上に飛び、極剣の重さを利用して一気に降下する。
剣が障壁を張った男の真上に落ち、障壁がまるでガラス細工かのように無残にも砕け散る。そのまま呆然としている男を縦に切り裂く。
そのまま極剣を横薙ぎに振るう。前衛の一人が盾で防ごうとするが、極剣が盾に当たるとバキッと嫌な音がして、木製の盾は無残にも割られる。
目の前では仲間がまるで人形のように吹き飛ばされたり、盾や武器での防御ごと叩き切られる。まるで嫌な夢でも見ているようだった。
数秒もすると地面には深い大きな切り傷が残り、周りには俺意外誰も居なくなっていた。そして俺の目の前には、剣を引きずるようにして俺の方に向かってくるチビが居るだけだ。
「くそ…くそ…くそがぁ!!」
我武者羅に叫びながらチビに向かって走り、ありったけの力を両手に込めて大剣を振り下ろす。しかし、何の苦も無く極剣で受け止められる。
すぐさま片手を放してチビの顔面に手を翳す。
「錬気破!」
手の平で何かが爆発するかのような感触がして、目の前のチビを吹き飛ばす。
これは俺の固有スキルで、超至近距離で発動可能なものだ。効果は無属性の腕力依存のダメージと吹き飛ばし効果だ。
流石のチビでも不意打ちでは避けれなかったようで、仰向けになりながら吹き飛ぶ。
数メートル飛んだところで、地面に手をついてばバク転のようにして起き上がる。
「レイグト・ブレイク!」
起き上がりの隙を狙い、アーツを放つ。大剣を地面に振り下ろすと、地面を這うようにして扇状に三つの斬撃が飛んで行く。
チビは三又の斬撃を最小限の動きで躱して、そのまま走ってくる。
HPを見るが、まだ七割ほど残っている。さっきの【錬気破】で相当なダメージを与えたはずだが、どんだけ固いんだよ!
心の中で悪態をつきながらも、思いっきり力を籠めて大剣を振るう。
上段からの斬撃をいとも簡単にデカい剣で止められ、押し返しざまに横薙ぎの斬撃が飛んでくる。その斬撃に合わせて剣を振るうが、恐ろしく重い斬撃で受けた大剣に僅かなヒビが入る。
バックステップで距離を取ろうとするが、直ぐに距離を詰めて攻撃される。
避けれる攻撃は避けるが、避けた後も切り返しの攻撃が鋭くて迂闊に反撃できない。
何度目かの攻防の時にバキッと嫌な音と共に、大剣が半ばから折れる。
当たり前だろう、俺の大剣の倍はあるだろう馬鹿デカい剣で、何発も打ち込まれれば耐久力が持つはずもないだろう。
終始攻撃を往なすのに専念するだけで、反撃の隙すら無かった。
これが俺とチビの力の差ってことかよ…
最後に見たのは、上段から振り下ろされる剣だった。
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「ふ~」
ベッドから起き上がり、軽く体を動かす。
時計を見ると七時半を指している。
「さて…今四回戦目やってるから早くても八時か…」
一階に降りて、晩飯の支度をする。
「今日は人数も多いから、皆で囲んで食べれる物が良いな」
先に下ごしらえしておいた物は、明日の昼食にでもするか。
何を作ろうかと大きな冷蔵庫の中を見ると、国産和牛と豚肉のブロックに野菜が少しとビール瓶が数本とコーラと各種フルーツジュースがあった。流石に皆の居る所でビールはダメだな。
「う~ん、面倒だし焼肉でいいか」
冷蔵庫からブロックの肉を取り出し、食べやすいサイズに切って皿に盛りつける。 野菜も一口大に切り、焼肉用のタレも準備する。
焼肉にパンは合わないので、槐と秋保があまり大食いじゃないことを祈るか。
切り終わった肉と野菜を冷蔵庫に戻して、ダイニングのテーブルを拭いて食器を並べる。
風呂の様子を見るが、いいお湯加減で湯船一杯に湯が張られている。
脱衣所の洗濯機の蓋を開けておき、適当にバスタオル類を棚から出しておく。
大体の準備も終わったので、一階の談話室でソファーに寝そべりながら適当な音楽を流し、先ほどの戦闘を思い出す。
「結構派手にやったけど、コレに懲りて人にちょっかいださなくなればいいんだけどな」




