第三十三話 トーナメント予選 Ⅲ
『さて、第一試合が終了しました! 残ったのは四人ですね、四人は中央へお願いします』
『う~ん、大体予想通りだったね~』
フィールドの中央に四人が集まり、銀剣の団員が何やらウインドウを操作している。
おそらく残りHPの割合を確かめているんだろう。
しばらくすると実況の方から声がかかる。
『さて、結果が出たようですね。今回の予選Aグループの勝ち抜きはクサナギさん、シャリアさん、カゲトビさんの三人です!』
「「「おぉぉ~~」」」
会場が大きな歓声に包まれ、トーナメント進出の三人をたたえている。
まぁ、一部は罵声が混じっているが…多分勇者君とやらに賭けていた連中だろう。楽して稼ごうとしたんだから自業自得だな。
『あっはは~、勇者君は何も考えないで突っ込むから、こんなことになるんだよね。これを見習って次からは考えて戦ったほうが良いね』
『そうですね。この予選は他のプレイヤーを倒した数は関係ないので、如何に上手く立ち回るかが重要ですね』
ユウキが膝をつき突っ伏しながら嘆いている。
まぁ、馬鹿みたいに突っ込んでいったから、自業自得でしょうけどね。
「うぉ~、ルールすっかり忘れてた!」
「全く、アンタは…」
「ユウキは猪突猛進の馬鹿だから、言っても無駄」
二人と話していると、クサナギと戦っていた男が脇を通り抜けていく。
ちらりと覗き見ると、ゾッとするような不気味な笑みが見えた気がした。
その目線は確実にクサナギに向けられていた…
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『さ~て、それでは第二戦の出場者はフィールドの方までお願いします』
会場にアナウンスが流れ続々と出場者が入ってくる。
その中にはコウ、スズ、アリスの姿があり、他にも数名の知り合いも混じっていた。
三人は固まって移動して壁を背にして、コウとスズがアリスの前に立つ。
アリスは二本の杖を持ち、二人に付加魔法をかける準備をしている。
『みんな結構固まってるね』
『そうですね、先ほどの一回戦では結構バラバラでしたが、まとまってPT単位で戦うのが有効だと分かったのでしょう』
『まぁ、皆ほどほどに頑張ってね~』
『…さて、お待たせいたしました。トーナメント予選第二回戦開始!!』
開始の掛け声とともにアリスが二人同時に付加をかけていく。
二人は特に打って出るようなことはじないで、アリスを守るように周囲を警戒している。
恐らく、仕掛けられたらそれに対処する守りの体制のようだ。
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「う~ん、ただ待ってるだけってのも暇なんだよな」
「そう言わないの、この作戦の方が安全策なんだから」
「アイ、馬鹿みたいに突っ込むのは、愚行」
まぁ、確かに馬鹿みたいに突っ込むのはあれだが、やっぱりただ待つだけなのもの暇なんだよな。
横のスズを見るが、特に気にした風もなく周りの戦いを見ながら警戒している。
周りをざっと見まわすが、俺らと同じように数人でまとまって戦っているのが多い。
しばらくすると、直ぐ横に居た四人組が俺たちに向かってくる。
構成は魔法クラスに大剣、片手、刀の前衛三人だ。
「お、やっと来たな」
「コウ、作戦通りにね」
「分かってるって、んじゃ行くぞ」
作戦は簡単なもので、俺達が前で戦いアリスが後ろから支援で、アリスが〈コール〉で合図を送るらしいから、俺らは自由に戦える。
『戦況を見て魔法使うから、好きに戦って』
『『了解!』』
相手も後ろに魔法クラスの男を庇うように、三人が向かってくる。
片手剣と刀の男は俺の方に、大剣は俺の方に。その後ろで魔法の詠唱が見える。
上手く分かれられたな、盾持ちには大型の武器が有効だし、こっちの二人も一刀なので機動力で俺を削りに来ている。
刀の男に切りかかるが、上手く受け流される。やっぱり刀は受け流し易いのか、ダメージは与えられていないようだ。
男が直ぐに後ろに避けると、その脇からアーツを構えて片手剣の男が迫る。
アーツで相殺するには遅いか…男の【スラッシュ】を地面に伏せる事で回避する。
男は俺の動きに驚きながらも距離を取ろうとするが、アーツの硬直のせいで動きが鈍い。
伏せた状態で男の胴に向かって【スラッシュ】を放つ。動きが遅い男は成す術もなくアーツをもろに喰らって顔を顰める。
そのまま立ち上がりながら、アッパーのように剣を振り上げて追撃する。
さらに追撃しようとしたが、右から刀の男がアーツを構えているのを見て咄嗟に後ろに飛ぶ。
俺が避けた直後に鋭い突きが横から放たれる。完全に避けれたと思ったが、相手の速度が予想以上で右腕に攻撃が掠った。
「早いな」
「そちらも、かなりのものだぞ」
刀の男が正面に刀を構え、片手剣の男は後ろ手回復魔法を受けている。
回復されるのは厄介だが、こいつを無視して突っ込んでも後ろからザックリやられるだけだな。
まったく、慣れている相手は厄介だ。だが、そこが面白いんだよな。
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「アース・ブレイク!」
「タフネス!」
上段から振り下ろされる大剣をアビリティの【タフネス】を使い盾を構えて受ける。
いくら上手く受けれたと言っても、腕にかなりの衝撃が走りHPも削られる。
「バッシュ!スラッシュ!」
大剣を受け止めたまま【バッシュ】で大剣を押し返しながら、がら空きの腹に【スラッシュ】を放つが、大剣を押し返された反動を上手く使って避けられて掠っただけだ。
「かったいね~」
「まぁ、それが取り柄ですからね。そちらも以外に動けますね」
「まぁ、私もそれが取り柄だからね」
大剣の女の子は動きを早くしたいからか軽装の革鎧で、防御力が低い分軽いし動きやすい。
ガッチリ防御を固めている私からすれば、動ける大物持ちは苦手な部類だ。
『魔法使うから右に避けて。3、2、1…避けて』
アリスの合図でステップで真横に避ける。
その直後に顔の横すれすれに【ファイア・ランス】が飛んで行く。
大剣の女の子は大剣を盾のようにして魔法を防ぐが、防ぎきれずにHPがかなり減る。
しかし、すぐさま回復魔法が飛んできて減ったHPを回復していく。
HP回復を待ってから女の子は大剣を握り直して、風を切るようにして向かってくる。
通常攻撃は上手く防げれば削られないけど、後ろで魔法の詠唱が見えるし、大物の攻撃は結構腕に響くから長期戦はしたくない。
『二人とも、十秒後にバフかける、そのあと魔法の男に向かって走って』
『な、簡単に言うなぁ。大丈夫か?』
『アイ、前衛は止めれるけど、持って数十秒』
『はっ、それだけあれば十分』
コウと目配せしてアリスからのバフを待つ。
「ウインド・スピード、ファイア・エグルス」
アリスがほぼ同時に、行動速度upと攻撃力upの魔法をかけてくれる。
それを合図に女の子の大剣を【バッシュ】で弾いてそのまま脇を抜ける。コウの方も上手く抜けれたようで直ぐに追い抜かされる。
「なに!?やらせるか!」
「行かせない。ファイア・ウォール」
直ぐに抜かれた三人が後ろから迫るが、アリスの火属性の魔法【ファイア・ウォール】により足止めされる。
「障壁」
魔法使いの男はすぐさま障壁を張る。
コウはアビリティの【連撃】を使いアーツチェインで攻める。
「クロス・スラッシュ!ハルウェナ!クロス・ウェルト!」
鮮やかな青の残像が瞬く間に男の障壁を削る。
「終わりだ。リーウェル・ストライク!」
最後の五連撃が男の障壁を砕く。
男が驚愕の表情でコウを見ているが、その隙に反対側に回り込んで後ろからアーツを放つ。
「リベルト・スラッシュ!」
綺麗にバックアタックが成功し男は地面に伏せ光になって消える。
アリスの方に向き直ったのと同時に、炎の壁を突き抜けて男が吹っ飛んでくる。
一瞬身構えたが、男はそのまま光になって消える。
「…アリス、何やってるんだ?」
「…さ、さあ?と、とにか行こう」
若干の不安を抱きながらも、二人で炎の壁を迂回してアリスの元に走るのだった。




