第三十話 第一回銀剣杯トーナメント ‐開幕‐
鉱山区の一角は、何時もよりも比べ物にならないほど熱気に満ちていた。
その熱気の元は長い間使われていなかった闘技場だ。闘技場には溢れるほどの人が犇めき合っている。中にはプレイヤーのみならず、NPCの姿も見える。
俺は観客席の中に一人だけマントを羽織って座っている。
周りでは串焼きやお菓子などを売っている生産クラスの人や、だれが優勝するかの賭け事まで始まっている。完璧にお祭りムードだ。
少しすると、闘技場の北側にある実況スペースから声が聞こえてきた。
「皆さん、静粛に……さぁ、始まりました!第一回のユーザーイベント。その名も、銀剣杯トーナメント!今回の実況は知ってる人は知っている、知らない人は覚えてね。情報屋のタスキンです!そして、もう一人のゲストの方が…」
「は~い、サラサだよ~!皆元気にやってるかな~」
タスキンと名乗った方は、短い銀髪に眼鏡をかけた男性で、やたらテンションの高い男性だ。情報屋として結構名前が知られており、俺でも聞いたことがある名だった。
もう一人のサラサは、赤い髪のツインテールの女の子だ。彼女が挨拶した時に、一部の男性プレイヤーが歓喜の声を上げていたので、この女の子も有名人だろう…俺は知らないけど。
「さて、今回のトーナメントは結構な人数の参加者ですので、まずは四つのグループに分かれてもらいバトルロワイヤル方式で参加者を絞りたいと思います」
「へぇ~そうなんですかそれで、ルールとかはどうなんですか?」
「ルールは簡単。制限時間の二十分間生き残ればトーナメントに進出です。アイテムは使用禁止。武器は三つまでです。その他の事は制限時間内であれば、何をやっても良いという事です。そう、例えば誰かと共闘しても…ね」
「へぇ~それは面白そうですね。でも、もしも沢山残っちゃったらどうするんですか?」
まぁ、それはもっともな疑問だ。もしも半分以上が残ったら数を減らす目的が意味を成さなくなるしな。
「えぇ、流石にそこまで人数が残ると困るので今回は制限時間内に残りの人数が三人になる。又は、制限時間後に残りHPの割合が多い上位三名がトーナメント出場になります。つまり、本線のトーナメントに出られるのは各グループの上位三人だけ…つまり、トーナメントは計十二人で行われます!」
「そうなんですか!それじゃあ、三人で組んで戦った方がお得ですね~」
「ええ…でも、そう簡単に行くかは分からないですけどね!」
その後も少し細かくルールなどが紹介されたが、大体は何でもありのロワイヤルだ。
誰かと組んで戦うもよし、一人で戦うもよし。あんまりおすすめではないらしいが、時間内逃げたり隠れたりするのもありだ。
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「さて、まずはAグループから開始です。Aグループは総勢四十二人で争われます」
「わぁ~、実際に人が入ると結構広く感じますねぇ」
「そうですね。皆さんにはこの闘技場の広さも考えて戦っていただきます。さて、それでは私の方から少し情報を…」
闘技場にはAグループのプレイヤーがバラバラに散らばっていたり、数人で固まったりしている。パッと見では魔法クラスの方が少なめだ。
一応ざっと全員の姿を見まわしたが、知り合いの姿は見えなかった。
実況の男性が何人かのプレイヤーの名前を上げる。どうやら名前が上げられたプレイヤーは有名なプレイヤーらしい。
実況を聞いてそのプレイヤーを探すと、結構早く見つかった。
一人は女性プレイヤーだ。革装備をした長い金髪が特徴のきれいな人だ。狩人らしく、背中に大きな弓を背負っており腰に矢束を吊るしている。
もう一人は銀色の鎧に金の細工の施されている派手な鎧の、金髪の結構整った顔つきの男性だ。観客席に手を振りながら微笑んでいる。
その二人の他にも数人強そうな奴らが目についたが、多分あの二人と強そうな中から一人が残るだろうと思う。まぁ、最後までどうなるかは分からないんだけど…
「さ~て、ではでは、第一回戦開始で~~~す!!」
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「よっしゃ~、目立つぜぇ~!!」
大声を上げながら、集団の中に突っ込んでいくプレイヤーが一人いた。彼は「勇者」の二つ名を持つ有名プレイヤーだ。
武器は長剣の部類の片手半剣で、長いリーチと高い攻撃力を持つ。さらにカイトシールドを持つことにより防御の面も固い。
しかし、敵の集団の中に単身突っ込んでいくあたり、少しばかり頭が足りていない。だからか、影で彼は「勇者(笑)」と呼ばれているのだ。
「はぁ…やっぱり彼奴って馬鹿ね」
そんな独り言を呟きながら、周りを警戒しているのは「ロビンフット」の二つ名を持つ女性だ。
彼女の武器は身の丈ほどの長弓だ。長弓は攻撃力が高く、リーチが長いのが特徴だが、反面重く取り回しにコツが要る。
その長弓を使いこなし、長距離からの攻撃を得意としている。たまに短弓を使う事もあるらしい。
「さて…少し様子見かな」
騒がしい中心部から離れた壁際から、そんな声が聞こえてきた。
しかし、その壁際には誰の姿も見えなかった…




