第二十六話 お泊り会 Ⅲ
「掃除もしたし、湯も入れてるし。晩飯のカレーの準備もできたし…こんなもんでいいか」
時計を見ると時刻は二時五十分、皆がINしてから十分ほど経っていた。この十分間で風呂掃除をしてお湯を張り、晩御飯の買い物と下ごしらえをしておいたのだ。
俺もそろそろINしようと、三階の自分の部屋に向かう。
俺の部屋は十畳ぐらいの広さで、パソコンが三台にベッドとギッシリ本の詰まった本棚があるだけだ。特にこれと言って飾りっけは無い。
真新しいシーツのベッドに横になり、セットしたヘッドギアを着ける。
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目を開けるといつもの宿屋の天井だ。確か…ガイツのおっさんの所で鍛冶をするために、一旦キリアに戻ってきていたんだった。
アテムポーチの中には鍛冶の成果の武器が何本か入っている。
確かダリアの闘技場とか言っていたし、広場にあるゲートクリスタルを使ってダリアに行くか。このゲートクリスタルは、ダリア解放と同時に現れたもので、他の町に瞬時にワープできるものだ。しかし、一回その町に行ってクリスタルに触れて「ゲートクリスタルの欠片」を取らないといけない。
宿屋のおばさんに挨拶して宿から出る。
外は少し曇っているようだ。このRDOにも天候は存在し、晴れ、曇り、雨、豪雨、雷雨、嵐などの天候が今の所確認している。
しかし、そこまでリアルにしときながら何時になっても日が暮れないので、このRDOの世界は夜は無い白夜の状態なのだと仮説されている。一応NPCは普通に夜の時間帯は寝たりする。
今の時間だとNPCも普通に活動している。これが夜の十時以降になると、殆どの店が閉まったりするのだ。一部の大きな店や冒険者ギルドなどは普通にやっている所もある。
ガルアに向かうために広場に向かう。
広場に行く途中でも今日のイベントの話が耳に入る。どうやらかなりの挑戦者がすでにガルアに向かっているらしい。
まぁ、このゲームが始まってから初めてのイベントらしいイベントだからだろう。
そう考えると、眼鏡の奴も静かなのが不気味だ。彼奴は無駄にイベントが好きだからな、何か善からぬ事を考えているのだろうか…まぁ、俺には関係ないか。
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ガルアの広場に着くと噴水の前で出待ちしていたらしく、皆にすぐに声をかけてきた。
どうやら全員揃っているようだ。槐はシンエン、秋保はアキというキャラネームだ。
二人とも外見は同じだが、シンエンが赤い目をしていて、黒い革の防具を装備していて腰には短剣が二本差してある。クラスはM盗賊S狩人だ。
アキはキャミソールにミニスカート、下にはスパッツを履いているらしくたまにチラリする。クラスはM裁縫師S鍛冶師だ。
「もぉ、遅いよお姉ちゃん!」
「…悪かった、だからお姉ちゃんと呼ぶな」
まったく、いくらゲームのなかだからって、一応俺は男なんだが…まぁ、こんな見た目なのも悪いかもしれないが、成長の事は俺にはどうしようもないんだよなぁ。
「シィ、女の子なんだから、諦めるべき」
「…マジ、幼女なんだな。でもまぁ、いつもとあんまり変わらない気もするがなぁ」
「何言ってるのさ!全然違うじゃないか。この白いすべすべな肌、つぶらな瞳、ほのかな膨らみ…あぁ、今ここで抱きしめたい!」
「アキ、一応ここは公共の場だからさ。押さえろよ?」
「えぇ~」
「はいはい、無駄話もいいけど、時間だから移動するぞ」
どこぞのRPGよろしく、ぞろぞろと連れ立って町の中を移動する。
その最中に、妙に視線を感じる。まぁ、この人数のプレイヤーが町の中をぞろぞろと歩いていれば注目もされるかもしれないな。
闘技場は北東にあり、半分鉱山をくり抜いて作られている結構立派なものだ。いつもは殆ど人の居ない場所だが今日は見渡す限りプレイヤーで埋め尽くされている。
「うひゃ~、混んでるっすねぇ~」
「そうだなぁ、どうすんだぁ?」
「この分じゃあ結構待つか…少し時間潰すか」
受付らしき列はかなり長く伸びており、最後尾には待ち時間のプレートを持った人まで居た。そのプレートには四十分待ちと書かれているので、並んで待つのも面倒だろう。
ここら辺は鉱夫の休憩のためのレストランやカフェなどがある。
「そんじゃ、どっか入るか」
「とは言ってもなぁ、俺らと同じような考えの奴が入ってて結構混んでそうだが?」
「う~ん。他の区画の店に行ってもいいんだけど、受付出来ませんでした、なんて馬鹿な展開嫌だしな」
少し考えて、最後尾で列を整理している銀色の鎧の人に声をかける。
「すいません、少しいいですか?」
「ん?どうしたのかなお嬢ちゃん」
「この列って、今日のイベントのですよね?」
「あぁ、そうだよ。いやぁ~予想以上に人が集まってくれてね…」
「あの、一人で数人分の受付ってできますか?」
鎧の男性は特に考える事も無く頷いた。どうやらすでに同じ質問をした人が居たのだろう。
「大丈夫だよ、名前と参加料さえ払ってくれたら良いよ」
「分かりました、ありがとうございました」
お礼を言いその場を後にする。
皆の待っている場所に行くと、その事を話す。
「そうか。でも、一人は残らないといけないんだな」
「そうだな…俺が残っておくよ」
「お姉ちゃん…でも、悪いから。皆で並ばない?」
俺の提案にスズが少し顔を顰める。確かに、一人残すのはなんか仲間はずれにしている気分で、少し気分が悪くなるのは分かるが、皆で並んでも俺一人で並んでも同じだ。
「いいよ、別に気にしなくても。並ぶのは嫌いじゃないからな」
「…まぁ、お言葉に甘えようじゃないか。んじゃ、コレ参加料な」
「はぁ、分かったよ。お願いねお姉ちゃん」
全員から参加料を受け取り、見送ってから一人長い行列に並ぶ。
並びながら、列を眺めると結構強そうな人たちが目につく。このイベント、以外に楽しめるかな。
一人、長い列に並びながら考えるのだった。




