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Rise Doll Online  作者:
第一章 Play Game!
21/56

第二十一話 さくらさく

「ちょ、泣くなってば!?」

「ふえぇ…だって、だってぇ……」


 いきなり道のど真ん中でボロボロと涙を流して泣くサクラに、周りの人も何事かと視線を向けてくる。

 なだめても一向に泣き止む様子はなく、流石に周囲の視線が痛いのでひとまず裏道にサクラを引っ張っていく。


 裏道を進み少し行った所にあった木箱に、サクラと一緒に腰を下ろす。

 

「ほ、ほら。泣くなって」


 サクラのを優しくなでながら、泣き止むのを待つ。

 昔っからそうだが、男って生き物は女性の涙には弱いんだよな。


 しばらくすると、サクラが目を真っ赤にしながらも俺の顔を見る。


「…誰のせいで泣いてると思っているんですか!元はと言えば、葵お兄ちゃんがいきなり居なくなったのが悪いんでしょ!今までどんな思いで……もぉ、聞いてるの?!」

「あ、はい……まったくもってその通りです」


 あれ?なんで俺怒られているんだ。

 確か、いきなり泣き始めたから慰めていた気がするんだけどな。何か悪いとこでもしましたかね?


「勿論、責任取ってくれるんでしょうね!」

「あ、はい……はい!?」


 サクラの目がきらりと光り、口元は怪しく笑っている。

 あ…なんか嫌な予感が。

  

「ちょ、ちょっと待て。何の責任だよ!?」

「色々ですよ、いろいろ……それじゃあ、まずは親睦深めましょう!」


 俺の手を取り、表通りに向かって勢い良く走り出す。



「どうですかコレ!可愛いですよね」

「ん、あぁ、かわいいな」

「あ、これもいいなぁ~。迷っちゃいますね」


 俺たちは今、東にある市民街に来ている。

 市民街にはNPCの住む家が多く、NPCが頻繁に使用する店が多い。この市民街の店は肉や野菜などの食品や特に効果のないアクセサリーや服などの非戦闘用装備などが売っている。

 普通の戦闘用装備は重量があったり、見た目があんまり良くない等の理由から女性プレイヤーは町の中などの安全エリアでは見た目重視の装備をすることが多いそうだ。

 俺の場合は特に防御力を求めていないから、戦闘でもワンピースにホットパンツ、ロングブーツだが…


 今は服屋でサクラに付き合って、サクラの服選びをしている。

 このRDOは現実と季節がリンクしているので、この店の商品も季節的にワンピースやTシャツなどの涼しい格好の服が多い。

 今のサクラは皮鎧にスカート、ブーツなので少し暑いらしい。


「もぁ、ちゃんと見てるんですか?」

「あぁ、見てるよ。サクラは何着ても可愛いよ~」

「……もおいいです!」

「え?」


 やばい、空返事していたから怒った内容が分からない。

 なんいやらプリプリして店の奥の方に行ってしまった。

 しょうがないので後を追う。


「アオさん。コレ着てください!」

「……は?」


 サクラの後を追っていくと、子供用の服売り場で何やら服を探っていたかと思うと一着の服をもって俺に見せてきた。

 その服は白いワンピースで、所々にフリルがあしらわれており、如何にも女の子が着るような可愛らしいデザインだ。


「…ちょっと何言ってるか分かんないな~」

「う~んと…これでいいかな」


 そう言って店の棚から麦わら帽子と、花のアクセサリーの付いたサンダルを渡してくる。

 

「いやいや、着ないから!そもそもコレ子供用だろ、流石に…」

「大丈夫ですよぉ~、サイズは会ってますから」

「あ、そうなんだ。なら安心だな……何で知ってんだよ」

「ふっふっふ…今まで無駄にスキンシップしてきたんじゃないんですよ。アオさんのサイズなら完璧に把握してます!」

「偉そうに言うなよ…はぁ、分かったよ今日だけだぞ」


 サクラから服一式を受け取て、更衣室に入って着替える。

 ワンピースは結構体にフィットするもので、下にホットパンツを穿いているとどうしても不自然になる。サクラのやつ、これを狙ったな…

 仕方なくホットパンツを脱ぐが、スースーして落ち着かない。


「ほぇ~~」

「……」

「可愛いよアオちゃん!うへへ、妹ほしかったんだよ~~」

「…あぁ、もう好きにしてくれ」


 サクラのコーディネートは中々良く、麦わら帽子に白い長髪、白のワンピースに花の飾りのついたサンダルはまさに夏にぴったりの服装だ…幼い女の子のだが。

 興奮した様子で鼻息荒く抱き付いて来る。

 傍から見れば姉妹のじゃれ合いにでも見えるだろうが、俺は今身の危険を感じている。


「この服は即買いですね。大丈夫です、私が払いますから!」

「暑いから、くっつかないでほしいんだけど」

「おばちゃん、この子の服くださーい」


 聞いてないよ、この変態は…

 俺の服の会計を済ますと先に外で待ってってほしいといわれ、外に出て店の前の街灯に寄りかかって待つこと数分、サクラが出てきた。

 サクラは白いキャミソールにチェックのスカート、少し底の厚いサンダルに花柄のヘアピンをしていた。


「それじゃあ行きましょうかアオちゃん」

「はいはい…」


 どうやら今サクラの中で俺は妹ポジションらしい。確かに俺の方がかなり背が低いし、見た目どころか性別まで幼女だからな。まぁ、今日ぐらいは付き合ってやるか。


 サクラに手を引かれていろんな店を見て回った。

 ポーションなどを売っている薬屋、武器や防具の売っている鍛冶屋、雑貨品を売っている雑貨屋など。殆どの店は冷やかしだったが、薬屋では結構熱心に見て、時折店のおじいさんに話しかけていた。


 とある骨董品屋でお揃いのペンダントを買った。よくあるペアの物で、二つのペンダントを合わせると一つの形になるもので、買ったものは星形になるやつだった。

 やたら嬉しそうにペンダントをいじるサクラ。そこまで嬉しいのか?女はやっぱりよく分からないな。

 

 

 散々連れまわされた挙句、疲れたというので中央広場で休むことにした。

 このダリアの町もキリアの町同様中央広場を中心に、東西南北にそれぞれ市民街、鉱山区、商店街、ギルド街になっている。


 この町の特徴である西の鉱山区は、鉱山への入り口がある。ここでは主に鉱石を掘り、それを加工する店などの場所になっている。  

 なんでも、許可を取ればプレイヤーも鉱山に入って採掘ができるらしい。

 俺も暇になったら行ってみようかな。


「もぉ~なにボケッとしてるんですか」

「あぁ、ごめん」


 サクラが俺の視線の先を追う。


「鉱山区ですか…なんか暗くて狭くて埃っぽいイメージがありますね」

「鉱山なんてそんなものだろ?それより早く食べないと溶けるぞ?」


 はっ、とした様子で手の中にあるカップに山盛りに盛られたかき氷を急いで口に運ぶ。


「んぐっ!?……はぅ、キ~ンってします」

「急いで食べるからだろ」

「…アオちゃんのブルーハワイも美味しそうですね」

「……はい、どうぞ」

「ではでは、いただきます……う~ん美味しいですね」

「それはよかったな」


 他愛のない話をしながら、ゆっくりとかき氷を食べる。本当に静かな時間だ…桜とこんな風に過ごしていた頃が思い出される。


「あの…一ついいですか?」

「ん?俺もう食べたけど?」

「違いますよ……あの時、何で何も言わないで居なくなったんですか」

「……」


 隣から無言の重圧を感じる。あの時とは、桜の手術の日だ。俺はその日に桜と一つの約束をしていたが、どうしても外せない仕事が入ったのだ。

 俺も急いだけど、仕事が終わったのは二日後だった。


 その日の事が原因…という訳ではないが、桜と会うのはやめようと思ったのだ。いつまでも俺としか話をしないのでは、この先の生活で困るだろう。

 結果的に、今では若い男性意外とは普通に話せるようになっている。

 

「仕事だよ」

「じゃあ…私を嫌いになったわけじゃ」

「あぁ、別に嫌いになってないし。あの時の約束も…まぁ、覚えてるよ」

「……分かりました!」


 周りにも聞こえるほどの大声でそう言うと、座っていたベンチから立ち上がり俺を真っ直ぐ見つめる。その顔はとても嬉しそうだった。


「あの時の約束。手術が成功して元気になったら、私のお願い何でも聞いてくれるんですよね!」  

「ああ。でも、俺にできる範囲でだぞ」

「はい、もちろん。これはお兄ちゃんにしかできないお願いですから…」

「で、なんだ?そのお願いは」

「それは…後のお楽しみです!」

「…は?」

「あ、もう時間なので今日はもう落ちますね。またね、お兄ちゃん!」


 いきなりそう言ってそそくさとログアウトしてしまった。

 なんなんだいったい。やっぱり女心は分からんな。



 頭から白いヘッドギアを外す。

 長い黒髪が少し汗で頬にくっ付くが、今はそんな事すら気にならない。


「葵お兄ちゃん…あの時と殆ど変っていませんね」


 ベッドの脇にあるテーブルの上にあるスタンドの電気をつける。

 淡い光に照らされる部屋はかなり広く、物があまりないせいかとても殺風景に見える。

 

 ベッドに腰を掛け、太ももをなでる。その太ももには薄らと傷跡が見える。

 

「お嬢様、晩餐の準備が整いました」


 部屋の大きなドアがノックされ、落ち着いた男性の声が聞こえる。


「今行きます」


 ベッドから立ち上がる際、一瞬ベッドの足元にある車いすに目線をやるが直ぐに目線を戻す。 

 ドアに向かって少しぎこちなく歩き、ゆっくりとドアを開ける。

 ドアの向こうには黒い執事服を着た初老の男性が立っており、少し驚いた顔をしている。きっと、私が自分の足で立って歩いているからだろう。


 つい昨日まで車いすにお世話になっていたのだから、彼の驚きも当然だと思う。

 これも、日々のリハビリのおかげだ。いやそれだけの理由じゃないのが分かる。そう、自分の足で歩きたいほどに気分がいい。 


「……お嬢様」

「山野。なにボケッとしているの?早く食事にしましょう」


 そう言って山野の先をゆっくりと歩く。そう、これからは自分の足で歩くんだ…彼のためにも、彼との約束のためにも。


「あ、そうそう。山野、結婚式ってやっぱり様式がいいわよね?」

「あ、はい。そうですね、結婚式は…けっこんしき!?」


 後ろで混乱している初老の男性を見て、少し意地悪そうに笑うその顔は、とても魅力的だった。


桜はメインヒロインです!

桜と葵の出会いとかいろいろは…まぁ、いつか書くでしょうw

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