Your Voice #5 「僕の知らない君 [後編]」
全国出場を懸けた合唱コンクールの県予選の1週間前、リハーサルのため、合唱部はコンクールの会場へ向かうことになった。
コンクールの会場に着いた私は、まずコンクール会場の広さに驚いた。
「こ、こんなに広いんだ。」
私は思わず言葉を口に零す。
「そうだよ〜。奏花ちゃんでもこんな広い会場じゃ歌ったことない感じ?」
二年生の仲良い先輩が私に問いかける。
「はい。有名と言ってもいつも大きい会場で歌ってたわけじゃないので…。」
そんな話を先輩とした後、最終予行練習をし、私たちはそれぞれの帰路についた。
この日、私は何故か感じたことのない緊張感をリハーサルの時に感じた。
そして全国出場を懸けた合唱コンクールの県予選の日を私は迎える。
(全然治らない…。何…?この緊張感…。プレッシャーなんて感じるわけないのに…。)
そう、私は昔から人前で歌うことが多かったため、プレッシャーなんて全然感じることなどなかったのだ。
でも——、
「これが、プレッシャーなのか…。」
いつの間にか私は声もあまり大きく出せなくなっていた。
そして時は過ぎ、出番の時。
私は舞台裏から舞台に向かう。会場の席に座っている大勢の人たちを見て、不安で声が出なくなる。
(怖い。私の声は通用するのかな…。)
そして、嫌な予感は的中する。
私のソロパートが始まる。
声が…、出ない。
みんな、驚いた表情をしている。
中にはゴミを見るような、冷酷な目で見る部活友達さえいた。
勿論、三河は私を軽蔑するような目で見ていた。
そりゃそうだ。新入生であれだけ調子に乗っていたのに、声が裏返るどころか声さえ出ないだなんて。三年生の先輩たちにとっては最後の全国大会なのに…。
その後のことは覚えていない。いや、思い出したくもない。でも、これだけははっきりと覚えている。
その合唱コンクールの後の合唱部には、私の居場所はなかった。
そして耐えきれず、私は合唱部を辞めた。
そう、私は自分が思っていたよりも「プレッシャー」に弱かったのだ——。
「——歌を歌うことは今も好き。でも「人前」で歌うことは未だにあの合唱コンクールの悪夢が蘇り、どうしても歌うことが出来ないんだ。」
小森は引きつった笑顔を見せ、そう言った。
「あのさ、小森」
「何?」
「もし、出来るならで良いんだけどさ、僕と僕の友達たちと一緒に10月の「文化祭」でもう一度「合唱」、してみない…?」
僕は少し不安を抱えながらそう言った。
「…。」
「あ!嫌なら大丈夫だよ!?無理しなくていいから!」
小森の困った様子を見て僕は急いで言葉を付け足す。
「いや、やる。やってもいい…?」
「…もちろん!」
僕は小森が前向く姿が嬉しくて仕方がなかった。
「ねぇあのさ、颯人くん…。」
「う、うん。何…?」
僕は急に畏まった呼びかけをされて緊張する。
「——ありがとう。颯人くんは優しいね。」
僕の耳元で優しく僕を包み込むような声で呟いた小森のその声は、何故か昔、何処かで聴いたことのある声だった。
【あとがき】
どうも!Matchaです!!
ついに次の話から新章スタートです!
奏花と颯人の関係もどんどん縮まっていく…!?
ではまた、次の話で会いましょう!またね!




