17.ふわふわパンケーキを召し上がれ
ちょっと短めですすみません!
お言葉に甘えて片付けば三人に任せ、お風呂に入って直ぐ眠ることにした。
折角なのでミアとリズ、孤児院の女の子達と薄い布団を寄せ会い、雑魚寝だ。そこでも前院長の容姿や人となりなんかを聞き出したが、懐かれていたのは本当のようで、好人物なのだなとわかるエピソードがわんさか出てきた。
話すのに夢中で、興奮して中々眠れなかった子供達も、すみれが定番のお話を寝物語にしてやれば皆すやすやと眠りに就いていく。
穏やかな寝顔を見つめていると、劣悪な環境から少しでも助けてあげられたのだろうかと──名状しがたい気持ちになった。問題はまだまだ山積みで、やらなければならないことは途方もないけれど。
フライ・コッペを頬張るキラキラした笑顔を思い出しながら、すみれも眠りについたのだった。
早く眠ったおかげか、日が昇る前に目が開いたすみれは、子供達を起こさないように起き上がりキッチンに向かった。
扉を音が鳴らないように開閉して、そろそろと廊下を歩く。その頃にはミアが隣にいた。
(これに慣れるまで悲鳴あげてたの懐かしい)
キッチンに着いて、トレードマークになりつつあるエプロンと三角巾を装着して、朝食の準備を始めた。
昨日ルト達に朝食はあっさり目にするねと言っておきながら、作ろうとしているのはパンケーキだった。
どうしても、子供が喜ぶ物を、とそちらを優先してしまう。昨日から──いや、この活動を始めてから、ずっとかもしれない。
先ずは卵を取り出し、卵黄と卵白に分ける。いっぱい焼く予定だから、この作業だけでも中々の重労働である。ミアと二人、黙々と割っていく。卵白はしばらく氷庫に入れておいて、大量の卵黄をかき混ぜ、振るっておいてもらった小麦粉と牛乳とを混ぜる。
そこまでやったら次は卵白でメレンゲ作りだ。
この世界にはベーキングパウダーが無い。すみれも作り方を知らないので、せめてメレンゲを入れれば煎餅みたいなホットケーキは回避出来るのでは、と思ったのだ。
「ここにイーサンさんがいればっ!」
「……何か手伝いが?」
「わあっ」
いつの間にやら、キッチンの扉前にイーサンがいた。すみれの一人言に反応して、顔を出してくれたようだ。
「驚かせたな、悪い。部屋を出るのに気付いたから、ここで勝手に護衛を。ニールにはちゃんと子供達を見てもらっている」
(めっちゃイイ人だこの人)
「ありがとうイーサンさん! そうなの、ちょっと手伝ってもらいたいことが!」
手招きに応じてイーサンが近くに寄ると、すみれは身振り手振りを駆使して説明した。
パン粉を作ってくれた風魔法に、今度は泡立て器になってもらおうというわけだ。
大きなボウルの中で、小さな竜巻を起こしてメレンゲを泡立てる。
「そう! もっと小さく、速く……竜巻を二つにしてもらって……」
「よ、よし。こうか?」
完璧だった。間もなくピンとツノが立ち、もったりとしたメレンゲが完成した。
(風魔法めっちゃ使える……!)
「凄い! すごいです! こんな短い時間でこの素晴らしいツノ……! ありがとうイーサンさん!」
イーサンは満更でもなさそうに照れ笑いしていた。
(なんだこの人、可愛いな)
「この後は?」
「ちょっとずつ生地に混ぜて、後は焼くだけ。焼くのも大変だけどね」
何せホットプレートなんて便利な物はないので、フライパンに蓋をしての蒸し焼きだ。時間も掛かるし、柔らかいからひっくり返すのも一苦労だったりする。
一通りやって見せると、ミアは直ぐにコツを掴んでどんどん焼き上げていった。心配していたけれどちゃんと膨らんで、美味しそうな焼き色もついている。
すみれはもう一台ある釜戸でウィンナーと目玉焼きを焼いていった。
お皿にフワフワパンケーキを二枚、ウィンナーを二本と目玉焼き一つを盛り付ける。
人数分のプレートを作り終えても、おかわり用に沢山焼いておいた。
「それじゃ、手分けして皆を起こして、朝御飯にしよう!」
「その必要は無いみたい」
扉に隠れるようにして見ていたらしい子供達の、爛々とした瞳と視線が交わる。
(匂いに釣られて起きて来たのね)
「おはよう皆! 手を洗ったら朝食にしよう!」
きゃあー! と歓声を上げた子供達が手洗い場に列を成した。終わった子から席に付き、その時を今か今かと待っている。
「皆席に着いたわね、それじゃあ、召し上がれ!」
「「「いただきます!」」」
イイね・ブクマ・評価ありがとうございます!




