限界突破その13
良い所を奪われたわけだが、戦闘はしっかりやろう。
3人で戦えば死神なんて、敵じゃないはずさ。
「いくよ!」
これ以上良い所を取られないよう俺が指揮を取ろうとする。
しかし、俺より先にサーズが物凄い形相で飛び出していった。
恨みとかだろうか。
手にはこのゲームの中に入ってから、少なくとも一番強そう…良い物そうな鎌を強く握り締めている。
そして、鎌を死神に振るう。
あんな重く俺の振るえなかった鎌を。
「どうなってやがる…」
どうやら老人ですら少し小さいが鎌を、握って振り回すことができている。
よぼよぼ歩きながらだけど、小さい鎌を振り回している。
さっきの無魂石のあたりもあとで聞いとかなければ…
「勇者様! 早く!」
サーズが怒涛の攻撃を繰り広げている。
下手したら、俺より強いんじゃないか?と思ったが、防御や回避などができていない。
実践が足りないのか?
鎌の使い方はかなり上手い。
俺も行かなければ!と、地面を思いっきり蹴り上げ飛び出していった。
蹴り上げた瞬間、〔浮遊術〕を瞬間的に使い、脚力を上げ加速する。
俺の見事な動きにより、すぐに死神の近くにたどり着く。と同時に死神の無防備な頭に向け鎌を振り下ろす。
しかし、余裕を持った動きで死神はあっさり避ける。が、避けた先には老人とサーズが鎌を構えて死神のHPを削るための攻撃を仕掛ける。。
やはりサーズの鎌はでかい。なのに何故あそこまで使えるのだろうか。
小さいほうが使いやすいと思うが、大きい鎌を自由に扱えたらかなりの戦力になると思う。
最近感じ始めたことだが、このゲームはゲームのRPGなどのダメージ計算より、現実の戦闘のダメージ計算に近いと思う。
頭や心臓などの大切な部位に当たれば大きいダメージが入るが、他の部位に同じ強さの攻撃を入れても頭や心臓ほどのダメージも入らない。
それに、切断された腕や、足など…そういった類のダメージを受けた場合は、回復魔法や回復アイテムでは回復しなさそうだ。
一種の状態異常みたいなものだろう。最大HPごと減って行くし、行動の制限もされる。
それでは、戦闘にかなり不利になる。良く気が付いた。俺。
今はどうでもいいか。ボーっとしていてはだめだ!
そんな俺をよそに、サーズは鎌を振るが小さい鎌よりはさすがに遅い。老人の攻撃に遅れてサーズの鎌が死神の足を持ち去ろうとする。
が、そう簡単にはいかず、死神の人間離れした動きと反射神経によってぎりぎり避けられる。
「ウゥオォォ…」
死神が犬のように唸っている。
今まで、こんなに反抗されたことが無かったのかもしれない。
そう考えるとしてやったりだ。
やられる側の気持ちになってみろよ。
と、死神の威圧に押され少し距離を取る。
「勇者様! 一気にいくよっ!」
調子が出てきたようなサーズが大きな声で言う。
さっきのような恐ろしい形相ではなく、嬉しそうに鎌を握りしめる。
復讐できるのが嬉しいのかな。これ、改心とみなされているのか?
俺もいっちょいくか!
老人は吐きそうな顔をしているけど気にしないで置こう。
「おうよっ!」
サーズの掛け声に俺は気合を入れなおす。
石があれば…と思ったが、石を投げてもダメージ与えられないんだ。忘れていた。
実際の戦闘を体験したことがないから、戦闘中に余計なことばかり考えてしまうな…
一気に攻めようと意気込んで、覚悟を決めて周りの状況を確認…と思い、振り向いたら老人が息を切らして近くの家にもたれかかっていた。
「爺ちゃんっ! 休んでていいよ!」
サーズは老人の様子に気が付き、俺より先に声をかける。
周りも見れているな。俺より戦い慣れている。
老人の持っていた鎌は二本だ。その二本は俺が使いたいな。
多分、休むだろうからその二本は俺が使うとしよう。
「老人! 鎌を使いたいからこっちへ蹴れ!」
投げられてダメージというのはもうごめんだ。
ていうか、老人は魔法系のスキルなのだろう。何故鎌を…
「老人!? わしのことですか!? …わかったですじゃ!」
老人はあなたしかいません。と心の中で呟く。
ワンテンポ遅れて、老人のほとんど皆無に等しい蹴りで小さい鎌はすぅーっとこちらへ滑ってくる。
やはり、鎌は軽いんだろうか。じゃなければ、あんな蹴りでここまで来ないはずだ。
「よし! 任せとけ!」
鎌を受け取る前に俺は、死神に向かい鎌を思いっきり投げる。
完全にサーズに向かっていた死神には当然突き刺さる。
しかし、やはり脅威的な動きでクリーンヒットはできない。
「勇者様! ナイス!」
サーズのさっきとは違う期待のかかっている声。
鎌が足に突き刺さっていて、死神はそれを抜いてどこかへ思いっきり投げた。
うわっ。見えなくなるとこまで飛んでいったぞ…異常だ。
突き刺さったことで俺の目がし、HPの減少がどれくらいか目に視える。
今ので大体7%。
やばいな…勝てないかもしれない。
思ったんだが、こいつらは死んだらどうなるんだろう。
少し動きの鈍った死神の隙を逃さず、サーズが攻撃を仕掛ける。
さっきより早い、鎌の一撃を死神の頭に目掛けて振る。
死神はまたもや異常な動きで避けようとするが、こう来ると思っていたぜ!とここぞとばかりに俺は鎌を死神に投げる。
そして、老人も死神になにかわからないが、魔法で攻撃している。
鎌を俺に渡したからか。しかし、あんなに近いところだと攻撃が当たるだろう。
しかし、なかなか良い攻撃をする。
さすがの死神もこれでは避けられるはずも無い。
魔法は避けたが、鎌一本腹に刺さり、サーズの鎌が死神の左腕を切り落とす。
「よっし!」
「やったぁ!!」
と、俺とサーズが喜びの声を上げる。
落ちた死神の腕が闇の霧となって消えていく。これでHPは残り60%程度だ!
死神は腹に刺さった鎌を抜き、さっきと同じようにどこかへ鎌を投げる。
最後の一本は投げないで使うしかない。
「いけるぞ!」
俺はみんなの指揮も高めるために声に出して言う。こういうのは学校などでも結構大切だった。
それに、嘘で高めるとかではなく、どうみてもこれは完全にこっちのペースだ。
みんなと戦うとここまで楽か。
ログアウト不可でなければ、ゲームとしては最高だな。
「勇者様! 様子がおかしいよ! 一回下がろう!」
「わかった!」
完全に戦闘の判断をサーズが取っているが、俺より判断力がありそうなので、何も言わず素直に従っている。
そして、俺とサーズは後ろに下がる。
老人は下がっていない。
死神の真正面で魔法攻撃を繰り広げている。魔法だけ当たらなかったのが悔しかったのだろうか。
いや、そんな悠長なことをいっている場合じゃない。
「爺ちゃん! 下がって! お願いだから!」
サーズの心からの叫び。
顔が歪み、これでもか と言うほどに声を張り上げている。
「老人! 言うことを聞け!」
俺も叫ばずにはいられない。
しかし、老人には届かない。心からの叫びでも。
老人の攻撃に、死神は反応しない。
確かに魔法で攻撃しているので、HPは多少…結構減っている。
老人はいける!っと思っているのが顔に出ている。
実際、俺もいけると思った。
だが、次の瞬間。
死神の顔が一気に変わった。
目にも留まらぬと言う表現が正しいと思う。
今までとは比べ物にならない力強さで。速さで。感情で。
死神の鎌は、老人を真っ二つに引き裂いた。




