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中身がおっさんの女子大生、無自覚にサークルを潰し続ける  ―青春を壊された俺が最強のクラッシャーになるまで―  作者: らび


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第11話 新旧クラッシャー会談

指定されたのは、外資系ホテルのラウンジだった。

 蝶野美沙は、窓際の席にいた。四十九歳のはずだが、金のかかった若さを保っていた。そして、座り方が二十八年前と同じだった。壊れていくものを眺める、観客の座り方だ。

「はじめまして、でいいのかしら。熊沢"豪"さん」

 俺の学籍名を知っている。レイヴの残党か、大学の内部か、調べる伝手はいくらでもあるのだろう。

「単刀直入に言うわね。うちに来ない? あなたの技術、素人じゃない。学生の集団を二カ月で三つ動かした。壊すのも、直すのも、狙って潰すのも。──私、同業者を初めて見たの」

「断る。あんたと一緒にすんな」

「あら、どこが違うの?」美沙は紅茶を一口飲んだ。「あなたも私も、同じことをしてるのよ。人の繋がりに触って、動かして、結果を眺める。あなたの周りでも、ずいぶん壊れたって聞いたけど。軽音とか」

 痛いところを突く女だった。二十八年前と同じだ。この女の武器は嘘ではない。半分だけの真実だ。

「……一つ聞かせろ。二十八年前──いや、今もだ。なんで壊す。金だけなら、他にやりようがあるだろ」

 美沙は、初めて少しだけ考える顔をして、それから、あの日と同じ台詞を言った。

「壊れるからよ。人の繋がりなんて、指一本で壊れる。壊れるものを壊れないふりして大事に抱えてる人たちを見てると──ね、教えてあげたくなるじゃない?」

 ああ、と俺は思った。こいつは二十八年、一歩も動いていないのだ。

「そうか。なら教えてやるよ、こっちからも」

 俺は伝票を取って立ち上がった。

「壊れたものは、直るんだよ。二十八年かかっても、な。──あんたの会社、潰すわ。指一本でどこまでやれるか、同業者同士、勝負しようや」

  *

 戦争の準備は、一週間で整った。

 というより、俺が声をかける前に、向こうから集まってきた。レイヴの一件は学内で知らぬ者のない伝説になっていて、俺が「アプロディーテの被害はまだ続いてる」と話すと、話は勝手に転がった。

 ジャンクビートの立花たちは「熊沢さんの頼みなら」と、他大学の軽音ネットワークに被害情報の聞き取りをかけた。振られた男三人は、いつの間にか普通に音を合わせる仲に戻っていた。ボドゲ研の戸田と巻島は「うちの分析班を使ってください」と、十二サークルの会費と催事の数字を突き合わせ、資金の流れを図にした。皆川のミステリ研は、過去七年分の被害証言を集めて時系列に並べた。

 壊したはずのサークルが、全部、俺の後ろにいた。

「な?」と皆川が言った。「直ってるんですよ、あなたが壊したものは。全部」

(第11話・了)

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