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【コミカライズ進行中】夜会で「婚約破棄しよう」という常套句に呆れて振り返ったら、双子の愚兄だった件。  作者: 織子


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Episode.68



「――その……ドレスよく似合ってます」

シリルは一番に言いたかった事を言った。我ながら小さな声で言ってしまったが、距離が近いのでミネルバも聞き逃す事はなかったようだ。


ミネルバはまた微笑んだ。

「ありがとうございます」


(可愛い)


シリルは自分の心臓が一曲分保つか自信がなかった。

距離が近いとは言え、ダンスとしては普通の距離感だ。しかし前世の記憶を辿れば、異性とこんなに接近することはない。それが好きな子であれば尚のこと。緊張して当然だ。



「ミネルバの好きな可愛らしいデザインではなくて申し訳ないです」


ドレスショップユズリエを訪れた際に、作らせた紫色のドレス。あの時選んだドレスを見ても、ミネルバは可愛らしいデザインのものが好きなのだろう。メインの色は変えたくなかったので、レースやデザインで出来る限り可愛く仕上げてもらったつもりだ。結果的に大人っぽくありつつも、甘さのあるデザインで、シリル的にはミネルバにとても似合っていると思った。


自分から頼んでおきながら、その姿を一番に見れるのが自分でないことに憤りが隠せなかった。終始イライラとしてしまい、ライナスやヴェラには迷惑をかけてしまった。



「申し訳ないだなんて!とても華やかで可愛くて、気に入っています。それに……紫が好きなので……」

ミネルバの視線が下がる。頬も少し紅潮している。


ミネルバは恥ずかしい時に下を向く。それはもう知っている。シリルの心拍数が跳ねあがる。


(落ち着け。今じゃない。まだすることがある)


それでも見えた希望に、高まる気持ちが抑えられない。


「ひゃ」

シリルはミネルバの腰を持ち上げ、高めにくるりと回した。


「きゃあ。あはは…!シリル様、高いです」


くるくると回し、すとんと降ろした。


いつの間にかホールの中央に来ている。


(おっと……悪目立ちさせたか?)

シリルがさっと周囲を警戒すると、周りの貴族たちは、二人のダンスを微笑ましく見ていた。


「まあ……!ラウザー公爵家の次男はあのように明るい方だったかしら」

「可愛らしい二人ね」

「皇太子殿下のパートナーではなく、ラウザー令息のパートナーだったのかしら」


ミネルバを見ると、高く上げられたことに気持ちが高調しているのか、胸を押さえて無邪気に微笑んでくれた。


「ミネルバ、この後少しお時間をもらえますか?」


「……!はい…!」


ミネルバが慎重に頷く。決戦に向かうような強張った表情をさせてしまったが、その表情もまた可愛くてシリルは微笑った。



二曲目が終わると、シリルは皇族席に視線を向けた。カシウスと目が合うと、にやりと口角を上げたのが見えた。


(……始まるな)


シリルは小さく息を吐いた。




「――さて」

皇帝が口を開いた。よく通る声なので立ち上がらずともホール内に響く。会場内は静まり返った。


「この機会にもう一つ皆に伝えたいことがある」


続く言葉に、皇妃が目を見開いて皇帝を見た。『何を言い出すのか』と、表情に出てしまっている。


皇帝がカシウスに視線を向けると、カシウスが立ち上がった。


「この度、長らく帝国を留守にしていた皇太子が帰国した。様々な憶測があるのは分かっている。故にここに宣言しておこう。カシウス・グランヴァルトはこれまでと変わらず我が帝国の皇太子である」


皇帝が宣言すると、カシウスが前に出て一礼する。


「長らく国をあけていた為に、私に不信感を持つ者もいるだろう。だが許してほしい。私は皇位継承者たる力を養うために隣国へ留学していたんだ。その力を今、披露しよう」


カシウスが片手をあげ、空に円を描くと魔法陣が現れた。魔法陣からいくつもの光がはなたれ、ホールの天井に色とりどりの光の玉が輝く。


「魔術……!魔術だ!」

「なんと……!皇太子殿下は魔術師だったのか」

「なんとめでたい。帝国に魔術師が誕生したなんて……!」

「これで帝国は安泰だ。ドーランの顔色を窺わずとも済む」


皇太子の出した光に目を奪われながら、貴族たちは口々に言った。



一昔前に大勢いた魔術師は、今では数少ない。主に隣国のドーラン王国の魔塔に属していて、有事の際に呼ぶことは出来るが、魔術師の能力は絶大で、一人一人が国家君主並みの権力を持っているため、国の依頼に従う者は少ない。


帝国に属する魔術師はいない。魔道具を発展させ、魔術師に頼らない暮らしが出来るようになったものの、災害など人の手に負えぬ事象が起きた時には、ドーランに頼み込み魔術師を派遣してもらっていた。故に帝国はドーランの顔色を窺っている。


「稀代の魔術師たる皇太子の帰還は、グランヴァルトにとって大きな喜びだ。我が帝国はさらなる発展を遂げるだろう」


皇帝の言葉に、会場の貴族たちは歓喜の声を上げた。










ここまでたくさんの方々に読んでいただき感無量です!まだ続きますので、お付き合いいただけると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
 チャラ弟との差がドーンとッ! 帝位争い、終了!(笑)
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