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【連載版】夜会で「婚約破棄しよう」という常套句に呆れて振り返ったら、双子の愚兄だった件。  作者: 織子


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Episode.5


ミネルバをアウグスタ子爵邸に送り届け、ラウザー公爵邸に戻るとすぐに父の執務室に呼び出された。


執務室の机には書類の山がある。ラウザー公爵は深く椅子に腰掛け、側に控えている執事からいくつか報告を受けるとシリルに視線を向けた。

父もあれからすぐに帰宅したらしい。

(まあ居づらいよな)


「何をにやついてるんだ。お前、事の次第が分かっているのか?」

父は呆れたように言う。


「事の発端はアレックスだが、お前もお前だ。公の場であの様な事を‥‥本気なのか?」

父の眉間に皺が深く刻まれた。『あの様な事』とは、爵位の継承権の事だろう。


「本気です」

にべもなく言うと、父は深く息を吐いた。


「とりあえずアウグスタ嬢とアレックスの婚約は解消する。だがお前の爵位継承はまた別件だ」


「ええ。いきなり私が継承権を欲しても、家門の誰も納得しないでしょう。その件はすぐに解決するとは思っておりません。そんなことより」

「我が公爵位をそんなこととはなんだ」

父が半眼で睨む。

「お前はまともになったんじゃないのか?」


前世を思い出す前のシリルがまともだったとは思えない。それを言うなら、まともになったのだが、この異世界に適した思考になったかと言うとそうでもない。


「それは答えかねます」

シリルはきっぱりとした声で言った。父は深くため息を吐いた。

「私は双子の育て方を間違えたようだな」


「その件に関してはそうでしょうね」

シリルが肯定すると父はもう何も言わなかった。


「父上、アウグスタ嬢は私の婚約者となるのでしょうか?」

これが一番知りたい事なのだ。今のところ、公爵位は申し訳ないが二の次だ。


「‥‥その件も簡単にはいかない」

「何故ですか?兄上より私の方が数倍マシだと思います」

少し期待をしていたシリルはショックを受けた。


「そういう問題ではない。陛下はアレックスだったからこそ、アウグスタ嬢を選んだのだ」


シリルは思案した。

「陛下は思ったより私を過大評価してくださっているのですね」


「過大評価ではない。お前の成績や、引きこもりながらも立てた功績は陛下と共有してあるからな。お前にアウグスタ嬢は必要ない。陛下は優秀なアウグスタ嬢を第二のアレックスに勧めるはずだ」


(だめな亭主に嫁がせるのか。ふざけるなよ)

皇帝に殺意がふつふつと湧き上がる。公爵の爵位を早く譲ってもらって反乱でも起こした方がいいか?



シリルの表情に嫌な予感を感じたのか、公爵は口早に言った。

「だがすぐの事にはならないだろう。アウグスタ子爵も、皇命での婚約が解消になったのだ。またすぐ娘を差し出せと言っても頷かんだろうしな。それに陛下も鬼ではない。令嬢と思い合う相手がいれば無体なことはしないだろう。皇族ではないんだ。恋愛婚が許される事もある‥‥‥だからその反乱でも起こしそうな表情(かお)をやめろ」


シリルは目を丸くした。

「さすが父上。よく分かりましたね」


公爵は呆れてシリルを見た。

「――はぁ。前よりたちが悪くなっているではないか。とりあえず、アウグスタ嬢の事は自分でなんとかしなさい。爵位については、恐らくお前に継承権は移るだろう」


「ええ。そう致します。継承権についても、心配はしておりません。こうなっては私に移って当然ですから」


「そうだな。お前の脆弱だった精神面が強くなったのなら、そうなるべきだ。アレックスはアカデミーを卒業させ次第、領地に送る」


「卒業、出来るといいですが」

「何があったのか知らないが、いささか強く‥‥というか好戦的になり過ぎているようだな。不要な敵を作るものではない。改めろ」


「善処します」

する気のなさそうな『善処します』に、公爵は睨んだが、意味の無いこととすぐに視線を落とした。


「して、今後はどう動く」

公爵の問いに、シリルは少し考える。


「‥‥そうですね。とりあえず休学していたアカデミーに通い直します。そしてアレックスに目を付けられないよう、私の名前を伏せて出していた事業開発の企画と新規の魔道具の図案は、全て私の名前で提出し直してください」


「ふむ。内向的な性格故に伏せているのかと思っていたが、アレックス対策だったのか」

「ええ。目を付けられて良いことなどありませんでしたから」

「分かった。そのようにしよう。家門の古参達もすぐに継承権の移動に納得するだろう。もう下がっていいぞ」


「分かりました。では父上、よい夢を」


一礼してシリルは部屋を出た。



昨日まで目も合わせられなかった男とは思えない。常にオドオドとしており、アレックスと違い地頭が良い分もったいないと常に思ってきた。


「いったい何があったのやら」

書類の山を見ながら公爵は呟いた。


「何が、と言われれば、『恋』ではないでしょうか」

執事が公爵の独り言に返事をする。

公爵は執事を見て苦笑した。

「それは、厄介なことだな‥‥」







読んでいただき、ありがとうございます。

連日投稿を目標としていますが、投稿出来ない日もあると思います。現在直しながらEpisode12くらいまで進みました。筆が止まらないよう精進します。



いいね、ブクマ、コメント等、励みになります!


短編版の後書きに、シリルの前世設定を簡単にですが載せています。

ご興味ありましたら覗いてくださいませ。


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― 新着の感想 ―
続きを待っておりました。ありがとうございます!
短編版から来ました 弟、兄とは別の形で恋愛脳に覚醒したと思われてる(笑)
気に入った物語ゎ(๑╹ω╹๑)反復拝読♡ 《恋》を厄介なコトと、宣った双子兄弟のパッパ♪ 青春時代に(*`艸´)何が? ー双子兄弟のママゎ絶世の美女らしいー 主人公の《面食い》ゎパッパかの遺伝子か?…
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