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【連載版】夜会で「婚約破棄しよう」という常套句に呆れて振り返ったら、双子の愚兄だった件。  作者: 織子


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Episode.16


アカデミーの校門にて、嬉しさを隠しきれないシリルは顔を引き締めて立っていた。


1日過ごせば、物珍しさに群がる令嬢達も気が済んだのだろう。遠巻きにはいるが、近くには来ないのでシリルは気にしない事にした。


「シリル様、もう少し穏やかに待てませんか?顔が怖いですよ。今から誰か仕留めに行くのではと誤解されます」


ライナスの軽口もなんのその。

「相変わらず無礼なやつだ。俺が1人でにやにやしてたらその方が怖いだろ」


「以前はそうかもしれませんが、今は少し微笑ったくらいが良いかと」

 

(以前はそう。は、余計だな。だがそうか、確かに顔に力を入れてるから不機嫌に見えるか?)


頬に手を添えてぐにぐにと解す。



「シリル様、お待たせしました」

「‥‥!ミネルバ嬢。いえ、私も来たばかりですよ」

シリルは現れたミネルバを見て破顔した。


「今日は何を買いに行くのですか?」

にこにこのシリルにつられて、ミネルバが笑顔で聞いた。


「シリル様。何か良いことがありましたか?こんなにご機嫌なシリル様は初めて見ます」


シリルは『貴方と出掛けられ事が嬉しいのです』と言いたかったが、ミネルバが萎縮してしまいそうでやめた。彼女にとって居心地の悪い人物になりたくはない。


「ミネルバ嬢はこれから何度も見ることになると思います」

シリルはそう言ってミネルバを馬車までエスコートした。




「万年筆と、インクと、純度の低い魔石の相場を確認したいのです」


ミネルバの希望の商業地区まで、馬車で移動した。シリルは先に馬車から降りてミネルバに手を差し出す。「足元、気をつけてくださいね」

「ありがとうございます‥‥」

エスコートなど、前世でも今世でも(引き篭もっていた為に)馴染みがないが、知識としては頭に残っている。


エスコートに慣れているはずのミネルバだが、シリルが手を差し伸べると少し躊躇して顔を赤らめるのだ。

(エスコートに慣れてないのか?まさかうちの愚兄はエスコートすらしなかったのか?)


あの男ならあり得ることだ。

(次に会ったらどうしてやろうか)

頭の中でアレックスにしてやりたい嫌がらせを考えて湧いてきた怒りを押さえる。


「おお‥‥!」

街並みを見て思わず感嘆の声が出た。何というか、中世ヨーロッパ風のゲームの街並みだ。


「シリル様は市井で買い物をすることなんて珍しいことですよね」

ミネルバの言葉にシリルは素直に頷いた。

「はい。買い物と言えば、必要な物を何点か見繕って商人が邸宅へ持ってきます」

「ふふ。こうやって直接見て回るのも楽しいですよ。私が教えてさしあげます」


ミネルバはシリルの手を引いて近くの雑貨店に入った。


店内を一通り見て、羽根のチャームが付いた万年筆をミネルバは見ていた。しばらく悩んでいたが、買わずに店を出た。

「ここでは買わないのですか?」

シリルが聞くと、ミネルバはにやりと微笑って言った。

「一店目で買うのは後で後悔します。他の店も見て、一番良いものを買いたいですから」


得意げに言うミネルバに、シリルはまた微笑った。


シリルは何故か価値観だけは転生後の貴族の感覚が馴染んでいる。だが、前世の価値観を忘れた訳ではない。ミネルバの堅実な買い物の仕方に、シリルは懐かしさと愛おしさを感じた。


その後、二店舗ほど廻り、最後の店で万年筆とインクを購入した。




「最初のお店の羽根の万年筆はよかったのですか?あちらも可愛らしかったでしょう?」


ミネルバは少し驚いた。

(あら‥‥私があの万年筆を見ていた事に、気付いてらしたのね)

「ええ。羽根のチャームがとても可愛かったのですが、こちらの方が使い勝手も良さそうなので」

羽根の色が、シリルの眼と似た神秘的な紫色だったので、眼を奪われたのだ。


「ふむ‥‥少しこちらでお待ちいただけますか?ライナスを置いていきます」


シリルはミネルバをベンチに座らせると、ライナスを置いて足早に去っていった。

ミネルバが止める間もなかった。


「ライナス様、シリル様の近くにいなくても大丈夫なのですか?」

心配そうなミネルバにライナスは頷いた。


「ええ。シリル様に護衛など必要ありません。私はシリル様が妙な事を起さない為の護衛です」


(妙なこと‥‥シリル様はそんなに問題児扱いされているのかしら‥‥?)

ミネルバにとっては今の所、優しい青年だ。確かに時々、言葉使いがやんちゃ?にはなるけれど。


「シリル様は護衛がいらないほどの実力をお持ちなの?」

ライナスは少し思案しながら答えた。

「そうですね‥‥。私は対峙したことがないのですが、その辺の騎士よりは実力をお持ちでしょう。どんなに忙しくても毎朝鍛錬を怠りませんから」

「まぁ‥‥!騎士ではないのに」

「ええ。理解しかねますが、剣術がお好きなようです」

だとすればあの分厚い胸板にも頷ける。




「‥‥‥シリル様、遅いですね」


わぁあっ!


少し離れた場所で悲鳴が上がった。

「何でしょう?」

ライナスが声のした場所を注視すると、人垣の中にブルーグレーの髪が見えた。


「シリル様?!」

ミネルバは騒ぎの聞こえる方へ走った。ライナスも続いた。






読んでいただき、ありがとうございます。

二人のデート?はどうなるでしょう‥‥。

明日も投稿しますのでお楽しみに。


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― 新着の感想 ―
中世ヨーロッパ風とは言うものの なーろっぱの町並みにしろ文化にしろ実は近世西ヨーロッパなんだよね… 街で令嬢がお買い物ってだけで近世からじゃないと有り得ないし
ライナス、シリル様が君のあずかり知らぬところでまた問題起こしているけど、抑えれてないよ('ω') 一人じゃむりでは
えーー(o゜Д゜ノ)ノーーシリル君!?何してん? (※羽チャームのペンを買いに行ったんちゃうの?)
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