第36話・VSベルセリア①
––––ゼータ特別シード戦。
その内容は、大会主催者ベルセリアVS空井天音&ユリア。
相手はまさしく、これまで戦った中で最強のプレイヤー。
対戦まで15分を切った中、待機エリアで天音は装備チェックをしていた。
「勝てるのかな……」
ハンドガンを取り出し、軽くスライドを引いて戻す。
金属音が暗い空間に響くと同時、通話相手のユリアが励ました。
『勝てます。……なんていう根拠のないことは言いませんが、やるだけやってみましょう』
「うん、でも雄二さんもなんかいきなり帰っちゃったし……、今回は本当にお助け無しなんだね」
そう、それは天音たちが優勝してほどなくした頃。
「じゃ、俺は今日はこれで家に帰りますね」
「えっ、これからシード戦だよ? 雄二さんなんか用事?」
「……そうですね、まぁ用事です。大丈夫、天音さんたちならやれると信じてますから」
軽い笑顔で言ったのち、本当に帰ってしまった。
天音的には、プロデューサーなのだから最後まで見て欲しかった。
それじゃなくても、大事な人間なら決着を見届けて欲しい。
『大丈夫ですよ、後で赤井さんに勝利の報告をしっかりするため、今は集中しましょう』
隣で微笑むユリアにそう言われ、天音も頬を両手で叩く。
「そうだよね、うん! わかった。雄二さんがいなくてもできる、ベルセリアさんに見せつけてあげよう!!」
『そのいきです!』
カウントダウンが始まる。
電子的な数字が数を減らしていく中、天音は最後にショットガンを眺めた。
「勝負は殲滅戦、先に3ラウンド先取した方が勝ち。私はこの一番得意な武器で突っ込む」
『わたしはマークスマンライフルで援護します、背中は任せてください』
カウントダウンが進行する。
8、7、6––––
「絶対に勝つんだ。勝って、トップ・オブ・ストラトスに会う」
3、2、1––––試合スタート。
視界が晴れると、そこは––––
「ここって……」
「えぇ、初期に実装されたマップの居住エリアですね」
リリース初期から遊びこんでいる天音とユリアにとって、非常に見慣れた景色。
いつもなら速攻で武器を拾いに行くが、今回は最初からフル装備。
開幕で勝負を仕掛けることとした。
「よし、じゃあユリは高所取って索敵を––––」
天音がそこまで言いかけたところで、ゲーム内アナウンスが流れた。
『ベルセリア、”センター・トライデント”使用』
「「えっ!!?」」
それは、天音がかつてユリアと戦った配信で使ったアイテム。
300秒間方位を含めた自身の位置をレーダーへ露出する代わりに、スキルクールダウン、全ステータス向上のバフを受けられる。
それを、この場でいきなり使ってきた……!!
「マップ見て!! まずはベルセリアさんの位置から––––」
小マップを拡大し、ベルセリアの位置を探す。
が……。
『反応……なし?』
”センター・トライデント”を使用しているにも関わらず、ベルセリアはマップのどこにも映っていなかった。
あり得ない、まさかバグかと疑った矢先––––
「このアイテムはね、空間移動中のキャラなら位置露呈を、数秒だけ反映されないの」
「「ッ!!!!?」」
近接VCで、2人は背後から声を掛けられた。
振り返ると、そこにはベルセリアが立っていた。
その手には、”巨大なハルバード”が握られている。
「天音っち!!!」
「わかってる!!!」
2人は即座に行動。
天音はショットガンを発射し、ユリアもサイドへ展開する。
「あら、せっかく種明かししてあげたのに」
––––ガギィンッ––––!!!
「なッ!!」
天音が至近距離から放った弾丸を、ベルセリアはハルバードで弾いてしまった。
チートやオート反射ではない。
秒速1500メートルの弾丸を、ベルセリアは人力でパリィして見せたのだ。
「悪いけど、アンタたちとじゃ戦いの歴が違うから」
観客から見て、それは一瞬の出来事だった。
次弾をリロードする暇もなく、天音はハルバードの一撃でHPをゼロにされ死亡。
反撃しようとしたユリアも、投擲された武器でシールドを破壊され、怯んだ瞬間を突かれて一閃。
ゼータ優勝者のあまりに呆気ない全滅を見て、デビッドは腕を組んだ。
「相変わらずの化け物だな……ベルセリア。さすがは”執行者”の二つ名を持つだけはある」
––––第一ラウンド、勝者ベルセリア。




