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〜超底辺配信者のプロデューサーを始めた俺、難題を全て改善して行ったら何故か彼女にとっての特別になっていた〜  作者: たにどおり


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第31話・準々決勝、VS社会人ペア

 ――――第2回戦、準々決勝。


 画面に現れたのは、高層ビルが並ぶ都市部のステージだった。

 大通りには放置車両が点在し、歩道にはバス停や植え込み。

 交差点を曲がれば細い路地があり、建物の窓はどこも暗い。


「……うわぁ、撃つ場所いっぱいあるね」


『えぇ。狙撃が得意な相手には、好都合なマップです』


 ユリアの声を聞きながら、天音はビルの上層階を見上げた。

 窓、非常階段、屋上。

 どこに敵がいてもおかしくない。


 相手は、毎日射撃訓練を欠かさない社会人ペア。

 初戦では無駄のない射撃で敵を倒し、短時間で勝ち上がってきた。


『それでは第1ラウンド、開始!』


 秋奈の声と共に、2人が走り出す。

 物資を集めた天音はサブマシンガンを握り、ビルの壁沿いを進んだ。


「ユリ、前の交差点まで行くね」


『こちらも移動します。まだ敵は見えていません』


 天音が角から顔を出す。

 静かだった。

 車の向こうにも、向かいの建物にも動きはない。


 だが次の瞬間。


 ――――ガギィンッ!!


「いっ……!?」


 シールドが激しく明滅した。

 反射的に身を引くと、遅れて狙撃銃の音が届く。


「撃たれた! 正面……いや、斜め上!?」


『下がってください。回復を優先して』


 天音は建物の陰でしゃがみ込んだ。

 たった1発で、シールドの半分近くを持っていかれた。


 撃った相手は見えない。

 もう一度覗こうにも、同じ場所へ顔を出せば今度は頭を狙われる。


『こちらから探します』


 離れた路地で、ユリアがスコープを覗く。

 天音が撃たれた方向。

 そこに並ぶ窓を、順番に確認していく。


 その視界の外側で、何かが光った。


『っ!』


 ユリアのシールドにも被弾表示。

 即座に壁へ隠れた彼女の足元へ、もう1発が撃ち込まれた。


「ユリも!?」


『別方向です……お互いの狙撃位置を守っているようですね』


 片方を探すために顔を出せば、もう片方から撃たれる。

 天音が路地へ逃げ込んでも、反対側の出口へ先回りするように弾丸が飛んできた。


「ちょっと待って……どこから見られてんの!?」


 慌てて車の陰へ滑り込む。

 車体の向こうを弾丸が抜け、舗装された地面に火花が散った。


【見えない相手から撃たれるの怖すぎる】


【社会人ペア、射線の組み方うめぇ】


【これ近づけなくない?】


 公式配信の画面には、ビルの奥へ引っ込む狙撃手の姿が映っていた。

 窓際へ立ち続けず、撃つ瞬間だけ銃口を出す。

 1発撃てば、すぐに姿を隠す。


 派手な動きは無い。

 だが天音たちは、着実に追い詰められていた。


「っ……回復、結構使っちゃった」


『こちらもです。闇雲に動くと削り切られますね』


「でも止まってても、向こうが別の窓に移るよ」


 天音はマウスを握り直す。

 攻めたい。

 しかし敵の場所がわからなければ、走る方向すら決められない。


 そんな時、ユリアが静かに言った。


『天音っち。最初に撃たれた場所、覚えていますか?』


「交差点の角、ピン立てるね」


 マップに、目印が1つ。

 続けて天音は、逃げる途中で撃たれた場所にもピンを打った。


『弾が来た向きは?』


「最初が北東。次は……東寄りだったと思う。車の前を横切った時に、左から来た」


『わかりました。わたしも印をつけます』


 ユリアが撃たれた路地にも、目印が増えた。

 2人が逃げ回った跡が、マップに残されていく。


「これでわかるの?」


『撃たれた地点だけでは足りません。そこへ弾が飛んできた向きを合わせます』


 天音は一瞬考え、顔を上げた。


「……あ、三角測量みたいに?」


『えぇ。同じ狙撃位置から撃たれたなら、別々の場所から射線を逆に辿ると重なるはずです』


 逃げた距離にも、意味はあった。

 横へ移動した分だけ、敵を見る角度が変わっている。


 天音はマップのピンを見直す。

 北東から撃たれた交差点。

 東寄りから撃たれた車の横。


 その2本を、逆へ伸ばす。


「青い看板のビル……?」


『わたしも同じ建物を見ています。まだ階までは絞れませんが』


 天音の紅い瞳が、細くなった。

 無数にあった候補が、急に小さくなる。


「もう1回、撃ってもらえばいい?」


『危険ですよ』


「大丈夫。今度は撃たれるつもりで出るから」


 天音は低い植え込みの裏へ移動した。

 さっきの場所から、さらに横へ。

 退避先を確かめ、ほんの一瞬だけ身体を出す。


 銃声。

 頭を引っ込めた直後、背後の壁が弾けた。


「っぶな! でも今の見えた!」


 壁の着弾点と、弾が通った位置。

 その延長にある建物は、やはり同じだった。


「青看板、4階付近! ユリから見える?」


『……見えました。左から2つ目の窓、奥にいます』


 ユリアは、窓枠の内側へ消えていく銃身を捉えていた。

 天音を狙ったために生まれた、ほんの僅かな露出。


 これでもう、暗い窓を全部探す必要はない。


「よっし……やっと見つけた!」


『次はもう1人です。こちらの被弾位置から考えると、向かいの白いビル』


 天音がマップを確認する。

 2つの建物は、大通りを挟んで斜めに向かい合っていた。


 中央へ出れば、左右から撃たれる。

 片方のビルへ近づこうとすれば、もう片方に背中を見せる。


「だからどっちへ逃げても撃たれたんだ」


『ですが、建物の裏まで回れば話は変わります』


 ユリアが、細い路地へピンを置いた。


『天音っち、青看板のビルへ! 裏口まで行けますか?』


「行ける! 途中の横断だけ怖いけど」


『そこは任せてください』


 天音の口元に、笑みが戻った。


「おっけぇ! 今度はこっちの番だね」


 ◇


 ユリアがスコープを覗く。

 白いビルの窓。

 もう1人の狙撃手が見ているのは、天音の隠れた車だった。


 銃口が覗いて。


 ――――ダァンッ!!


 先に撃ったのはユリアだった。

 窓際でシールドが光り、敵が奥へ退く。


『今です!』


「よっしゃ!!」


 天音が路地を抜け、大通りを横切った。

 青看板のビルからは、別の建物が邪魔になって見えない。

 白いビルの狙撃手だけが、それを止められる位置にいた。


 だが、窓から顔を出せばユリアに撃たれる。


 天音は無傷で渡り切った。


「ついた! 裏から上がる!」


『こちらは見ておきます。存分にどうぞ』


 階段を駆け上がる。

 3階。

 4階。


 足音に気づいた敵が、窓から離れようとしていた。


 遅い。


「さっきはどうも!!」


 扉を抜けた天音が、サブマシンガンを発砲。

 狙撃銃を持ったまま振り向いた敵のシールドが、瞬く間に砕ける。


 相手も武器を持ち替えようとした。

 その操作が終わるより早く、天音は照準を頭へ合わせていた。


 撃破。


「1人!」


【速っ!!】


【場所バレた途端これかよ】


 その瞬間、白いビルの狙撃手が動いた。

 相方が倒された以上、同じ場所にはいられない。

 部屋を離れ、非常階段へ向かう。


 しかし、ユリアはもう窓を狙っていなかった。


『逃げるなら……そちらですよね』


 外壁に取り付けられた階段。

 そこへ現れた敵を、ユリアの狙撃が捉えた。


 シールド破壊。

 敵は踊り場へ身を伏せた。


『天音っち、白いビルの非常階段です。下から詰められます』


「了解!」


 天音が建物を飛び出す。

 相手が先ほどまで押さえていた道路を、今度は堂々と走り抜けた。


 敵が顔を上げるたび、ユリアの弾丸が階段を叩く。

 上へ戻れない。

 下へ降りようにも、既に天音が来ている。


「見つけた!」


 天音が階段の隙間から撃ち上げる。

 回復の間に合わなかった敵が倒れ、ラウンド勝利の表示が浮かんだ。


『逆転! 場所を突き止めてからは一気だったわね。三角測量の応用……これは面白い攻略だわ』


 秋奈の嬉しそうな声が、公式配信に響く。


『狙撃された場所を覚えていたのが大きかったわ。移動した先でも撃たれた……その情報まで、しっかり使ってきました!』


「ユリ、ナイス! あれめっちゃ助かった!」


『天音っちが射線を覚えていてくれたおかげです。最後の接近も速かったですね』


「むふふっ。あそこまでお膳立てされたら、そりゃ決めますよ」


 天音は背もたれに一瞬だけ身体を預けた。

 ずっとどこかから見られている、嫌な感覚。

 それが消えた途端、手が軽くなった気がした。


 ◇


 第2ラウンド。

 社会人ペアも、今度は射撃のたびに位置を変え始めた。


 同じ場所から撃ち続ければ見つかる。

 先ほどの敗因を踏まえた、迅速な修正だった。


 だが、その移動中まで道路を監視することはできない。


「ユリ、右の銃声止まった!」


『左を押さえます。そのまま進んでください』


 天音が走る。

 遠くの窓から銃口が覗けば、ユリアが先に牽制する。


 撃たれた位置には、必ずピン。

 狙撃手が移動して印が古くなれば、次の発砲で更新する。


 もう2人は、建物の多さに怯えていなかった。


「今度は赤い看板の2階! そこならすぐ行ける!」


『相方はこちらで止めます』


 天音が玄関へ滑り込む。

 狙撃手は逃げようとしたが、狭い廊下で天音と鉢合わせた。


 近距離で、サブマシンガンが火を噴く。

 抵抗の射撃を横へかわし、天音は一気に撃ち切った。


 残る1人も、ユリアの狙撃で退路を限定されていた。

 隣の建物へ移ろうとしたところへ、天音が追いつく。


「これで……おしまい!」


 最後の銃声。

 画面に、2ラウンド先取の表示が浮かんだ。


『勝者、空井天音、ユリっち組! 準決勝進出です!!』


「やったぁ!!」


『お疲れ様です、天音っち!』


 通話越しに、2人の喜びが重なる。

 最初は逃げるしかなかった都市の景色を、天音はもう一度見渡した。


 怖かった窓も、長く感じた道路も、今は違って見える。


「次に街中で狙撃されても、ちょっと落ち着いて考えられそう」


『えぇ。どこから撃っているか、わたしたちで見つけましょう』


「うん! そしたら後は――――」


 天音はマウスから手を離し、嬉しそうに拳を握った。


「ユリが狙って、わたしが倒す!」


『その通りです!』


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― 新着の感想 ―
大分連携がよくなってきた…あとやっぱりゲームでも計算力は必要だなってw
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