第22話・収益化達成記念飲み会!
「フフッ」
台所でおつまみの支度をしながら、天音は嬉しそうに手を動かしていた。
まさか、雄二があそこまで喜んでくれるとは、全く想定していなかったのだ。
普段こそ冷静なので、そのギャップで風邪を引きそうだった。
「雄二さんもああやって喜ぶんだ」
お皿を持ち、切り身にしたスモークサーモンと生ハム+クリームチーズを運ぶ。
実は天音も、意外と酒は好きなのだ。
酔いやすいので度数の低い物しか普段は飲まないが、楽しみ方は心得ている。
「おぉっ、スモークサーモンに生ハム。天音さんわかってますね」
「結構オフでは飲んでるからさ、こう見えて詳しいのですよ」
「良いですね、こうして特別な方と飲むならなお美味しそうだ」
”特別”。
その言葉に、天音はどこか優越感と途方もない嬉しさを感じた。
お酒とは、あらゆる要素が複合的に合わさってその味を変える。
今回であれば収益化の達成祝いというシチュエーション。
シャンパンに合った適切なおつまみ。
そして――――心許せる人間と一緒に飲むと言うこと。
まさに、至高のお酒を120%楽しむ場面と言えた。
「では、収益化達成を祝して――――乾杯!!」
「乾杯」
グラスをカチンと合わせ、一口……。
「「うまっ……」」
2人して口を抑える。
明らかに普段の酒とは違う、芳醇な香りと後味。
舌の上でジックリ転がし、ゴクリと喉に通す。
「白ブドウの風味に、上質なアルコールが何倍にも質を底上げしていますね……。炭酸も心地いい。シャンパーニュの名に恥じない代物と言えます」
「雄二さんめっちゃ詳しいね」
「以前にも飲む機会が何度かあったんです、けど……」
過去を少し思い出しながら、雄二はグラスを揺らした。
「これが……一番美味しいです」
「良かった、おつまみも食べようよ」
まずはスモークサーモンから一口。
「やっば……、めっちゃ合う」
「えぇ、スモーキーな香りがシャンパンを引き立てますね」
「雄二さん、わたし今日止まんないかも」
「俺もです、こんなに上手い酒はいつぶりか忘れました」
夢中で晩酌を進める2人。
収益化達成という記念日に、特別な仲の人間同士で飲むお酒。
美味くないわけがなかった。
あれよあれよと言う間にボトルは空になり、双方ともに赤くなる。
そして、ここでようやく気付いた。
「んっ、なんだ……いつもより酔いが強いな。ペース早すぎたか?」
顔の火照りが半端ではない。
ふと気になった雄二は、ボトルの裏面を見た。
「度数13.5……、普段5%しか飲んでないからな。そりゃ酔うわけだ」
しかし、悪い気分ではない。
上質な酒を最高の気分で飲んでいる、そんな酔いが心地よかった。
一方の天音は、
「ふにゃぁ……」
顔を真っ赤にして、完全に酔い状態。
っというか、寝落ちしていた。
ここらでお開きにしようかと、雄二が席を立った時――――
「雄二さん……、雄二さんどこぉ」
どうやら、夢を見ているらしい。
近づいた雄二は、天音の手を握った。
「ここにいますよ」
「雄二さんだぁー、えへへ。雄二さん~」
完全に酔い潰れている。
ベッドに運ぼうと、彼女をお姫様抱っこで持ち上げた。
「かる……っ」
その体重に、思わず驚く。
確かに見た目通りと言えばそうだが、天音の場合はかなりの瘦せ型。
当然と言えば当然。
階段を上がっていると、
「雄二さん……わたしね」
天音の口が動く。
「雄二さんに、もっとプロデュースして欲しい……。一緒に、もっと一緒に楽しく過ごしたい」
「ッ……!!」
通路で足が止まる。
「ずっと何もできなくって、やり遂げられなくって、底辺ばっかで苦しかった……でも雄二さんがわたしを救ってくれた。だから」
天音の小さい口は続けた。
「今度のゼータで、絶対優勝して……雄二さんに恩返ししたい……。雄二さんの選択は間違ってなかったって、必ず証明するから」
「……」
雄二は溢れ出しそうな胸の熱、瞳の激情を必死に堪える。
それは、過去に言われた言葉と全くの正反対。
歩きながら、彼は絞り出すように答えた。
「俺も天音さんを……、みんなから”トップに相応しい”と言われる人間になるまで、全力でプロデュースしてみせるよっ」
――――ゼータ開催まで、あと4週間。




