第14話・コラボ配信大成功!
天音とユリア。
この2人のコラボ配信は、まさしく波乱万丈ながら大成功した。
当初予想されていたオッズと異なり、勝負に勝ったのは無名配信者、空井天音。
国内有数のプロ級配信者の敗北に、ネットはたちまち騒然となった。
【まさかユリっちが負けるなんて】
【こんなプレイヤーが埋もれていたのか……ッ】
【ユリっち大丈夫……? もうずっと無言だけど】
試合が終わって5分。
ユリアはヘッドセットを外して、ミュートにしていた。
「ッ……!!!!」
完敗だった。
実力差でねじ伏せられたわけではない。
むしろ何度も、こちらが上を行った。
それでも最後の最後、その一手をさらに返された。
「グスッ……うぇえっ」
彼女は読み勝ったのだ。
自分の動き、最後に武器を捨てることすらも。
それがあのプロデューサーの指示ではないのは明白、完全にプレイヤーとして負けた。
「ゲームで泣くなんて……、もう無いと思ってた……」
溢れ出す涙を、オフィスチェアに座りながら必死に拭う。
部屋にはユリアの嗚咽と、この戦いを支えた相棒のPC、そしてエアコンの音だけが響いていた。
「ゲームも配信も……、こんなに楽しいものだったのですね」
ユリアが天音を見つけたのは、本当に偶然だった。
ただなんとなくサーフィンしていたところに、偶然出て来た。
そして、気まぐれに配信を見てみた。
「ッ……」
あの日の事は忘れない。
見るに堪えない状態だった配信が、見る見るうちに改善されてあっという間に登録者を増やした。
何より、本当に楽しそうに配信をするのだ。
「この人と一緒に遊んだら……、もしかしたら」
その時感じた直観を信じた結果、自分はそんな配信者に勝負で敗れた。
そして、仕事も責任も関係ない真剣な戦いを数年ぶりに思い出した。
「日本に来て、途中からゲームも配信も楽しくなかった……わたしにとってはただの仕事だった」
憧れだった日本で成功したのに、素直に喜べない。
この想像以上の拷問に等しい苦しみを抱いていたユリアにとって、天音の存在は計り知れなかった。
「あぁ……、この時間が永遠に続けば良いのに」
さりとてそうもいかない。
涙を拭い、ヘッドセットを装着。
マイクをONにした。
次いで、通話を天音に繋ぐ。
「みなさん応援ありがとうございました、そして天音さん……本当におめでとうございます。まさか負けるなんて思っていませんでした」
「こっちこそ、本当に楽しかった! またユリアさんとガチバトルしたいです!」
「フフッ、いつでも受け付けてますよ。これは……ほんのささやかな贈り物です」
「えっ?」
天音の個人チャット欄に、ガジェットやデバイスを扱う店の割引クーポンが送られた。
その額――――実に”10万円”相当。
「うぇっ!!?」
思わず変な声を出す天音に、ユリアは笑った。
「わたしに大事な事を思い出させてくれたお礼です、どうか受け取ってください」
「いや額!! ポンと受け取れないよ!!」
「おや、じゃあいりませんか?」
「ゆ、ユリアさんが良いなら……いただきます」
クーポンを獲得。
そこには、付属のメッセージが添付されていた。
『それでさらに良い環境を作って、ぜひ再戦しましょう。今度は負けません』
思わず嬉しさから顔に笑みを浮かべた天音は、マイクに向かって声を出す。
「ねぇ、ユリってあだ名で呼んで良い?」
「ユリ……?」
「うん! ガチバトルした仲じゃん。もう他人じゃないっしょ」
元気いっぱいな声に、ユリアは思わず笑みをこぼす。
「良いですよ、じゃあわたしは天音っちと呼びますね」
「オッケー! これからもよろしく––––ユリ!」
「今度は負けませんから、また一緒に遊びましょう。天音っち!」
コラボ配信終了––––
スイッチを切った天音は、もう他になにもいらないと思えるほど満たされていた。
そんな彼女へ、横から声が掛けられた。
「お疲れ様です、とても良い配信でした」
台所にいた雄二が、部屋へ上がって来たのだ。
「雄二さんもね。いやぁ……でもお腹空いたぁ。もう頭動かねー」
「おや、準プロの人気配信者に勝ったのに、随分とアッサリしてますね」
「まぁねぇー、天音さんは配信以外で大袈裟なリアクションをしないのだよ。日本人なら胸中で静かに喜ぶべし」
「そうですか、じゃあこの画面を見てください」
直後に雄二が向けた画面には––––
––––空井天音のゲーム部屋。チャンネル登録者数“1万8000人“の文字。
数秒凝視した天音は、近所中にその叫び声を響かせた。
次回から、ユリア回終わったので雄二と天音のイベントを進めます。




