第13話・決戦、ユリアVS天音
「本当に……、貴女はわたしを熱くさせてくれますねっ」
ユリアが取り出した武器を見て、コメ欄は一気に加速した。
【うわ出た! ユリアさんのガチ用武器……!】
【近距離最強の”スパーク・ライン”……、アレを使うのか】
【まぁ、近距離とは名ばかりの――――】
直後に、ユリアは中央のレティクルを、崖下150メートル先の天音に合わせた。
「発火」
――――ドォンッ――――!!!!
「ッ!!!!」
ダッシュで回避する天音。
瞬間、ついさっきまでいた場所に高エネルギー弾が撃ち込まれた。
「”スパーク・ライン”……やっぱり取ってたか。遠近両用の超ピーキー武器……!」
「さぁ、わたしの所まで来れますかね?」
チャージを終え、次弾を発射するユリア。
まだ距離があることから、ジグザグで接近しようとするが――――
「いっっっ……!!!」
攻撃は、天音の肩を掠めていた。
雄二やリスナーから見ても、回避機動は取っていた。
なぜか、単純な話である。
「さっきの戦いは遠隔ドローンで見せてもらいました、貴女の回避癖は既に把握しています」
圧倒的、超人とも言える偏差射撃。
天音が回避するであろう方向へ、先撃ちで弾を発射していたのだ。
「やっべぇ……! やっぱ鬼つよいなぁ……、あの武器弾速遅くて普通使えないのに」
必死に回避するが、着実にシールドが削られていく。
【これ狙撃で終わらないか?】
【天音ちゃんも凄かったけど、やっぱユリっちには勝てないか】
【ちょっと期待したんだけどなぁ】
このまま削りきられて終わる。
ユリア自身も、内心の熱が冷め始めた。
「なんだ、やってみればこんなものですか」
存外に退屈。
これは自分の過大評価だったか? そう思った時だった。
「ッ!!!」
――――ガギィンッ――――!!!!
それまで無傷を誇っていたユリアのシールドに、狙撃銃の弾丸が直撃した。
「なっ……!」
見れば、天音の武装がさっきと変わっている。
「レベル2シールド……、貫通までは贅沢か」
「まさか、闇雲に逃げていたのではなく……、散らばった死体から武器を探していた……!?」
「降りてきなよユリアさん、手数も弾丸もわたしの方が有利。そこに立ってたら死んじゃうよ?」
ここに来て、天音にキルされたプレイヤー群の残骸が圧倒的なアドバンテージを生んでいた。
武器、弾薬、回復……全ての物資で天音が持久戦に有利。
ユリアはここに来て、得意の高所を捨てさせられた。
「冷めるなんてとんでもない……」
そう呟いたユリアは、武器を再び変形。
凄まじいスパークと共に、2刀短剣へ変えた。
「貴女はとことん……、わたしを楽しくさせてくれる!」
「そうだよ、これはゲーム。楽しもうユリアさん!!」
ユリア・フォン・ブラウンシュヴァイク・エーベルハルトは確信する。
この配信者――――空井天音こそ、自分を”かつての熱”へ戻してくれる存在なのだと。
ならば、
「えぇ!! 貴女をこの手で殺して、このゲーム勝って見せます!!」
崖上から飛び出したユリアは、ブーストゲージを全て使用して天音に吶喊。
互いの近接武器がぶつかり合い、激しい火花を起こした。
「ここからは読み合いだね」
「ついてきてくださいよ」
「もちろん」
信じられない光景だった。
半径にして15メートルの円を中心に、天音とユリアは近接戦を展開。
2刀短剣で猛攻を仕掛けるユリアに対し、近接攻撃速度バフが乗ったナイフで応戦する天音。
【これFPSだよな?】
【なんか別ゲー始まったんですけど!】
【ユリっちがここまでガチでやってんの、初めて見た……】
攻撃を打ち合う2人は、今までにないくらいの充実感を味わう。
それは単に、強い相手と戦う高揚感だけではない。
今、ここで殺すべき相手として――――人間の本能が互いを認め合っていたのだ。
「天音さん……」
配信を固唾を飲んで見守る雄二。
ユリアと対等に戦うため、優位な地形と装備差は作れた。
しかしそれは、あくまで最低限必要なもの。
ここから先は、完全な天音のアドリブに懸かっている。
雄二にできるのは、もう祈るのみだった。
「読み合いは互角、なら勝敗を決するのは……」
EPEXでは近接戦において、武器ごとにノックバック値が設定されている。
ユリアの武器は低く、天音の武器は高い。
数値が高いほど、当たった時に相手を吹っ飛ばせる。
雄二も天音も、それを活かした戦術――――つまり剣の連撃で来るだろうと予測していた。
「連撃でトドメまで行くと思いましたか?」
「ッ!!?」
ここに来て、ユリアは2刀短剣を放棄。
”拳”で天音を殴りつけたのだ。
「なっ……!!」
パンチ攻撃に設定されたノックバック値は最高クラス。
天音の武器が届かない場所まで下げた瞬間、ユリアはとんでもない速度でキー操作。
ゲーム内理論で言えば最速、TASに匹敵するスピードで武器を切り替えた。
「終わりです!!」
腰に提げていた拳銃を抜き、天音の頭に合わせる。
射撃をしようと、マウスを握った瞬間だった。
「言ったでしょユリアさん」
見れば、天音の手には”抜かれたピン”。
「とことん楽しもうって」
「ッ!!!!」
射撃を中止し、即座に回避。
直後に、ユリアの立っていた場所で大爆発が発生。
「吹っ飛ばされる直前に、置きグレを……!?」
そして、天音自身はパンチを食らって加害半径の外へ。
既に別の動きを取っていたユリアに対し、0.5秒の優位を得る。
「これで――――終わりだぁッ!!!」
天音が抜いたのは、試合初期で拾った”リボルバー”。
発射された1発の弾丸は、一撃必殺の名のもとにユリアの頭部を撃ち抜いた。
HPゲージが消えていく中、ユリアは最高の笑みを見せた。
「ありがとう、本当に熱い試合でした……ッ」
「うん、わたしもすっごく楽しかったよ」
キルログ:AMANE3→YURI203
このログを、約3万人以上の視聴者が見届けた。
沈黙が全国に降りる中、
「よっ……ッし」
スマホを見ていた雄二は声にならない声で叫び、
「勝っ……ッた」
天音もまた、過去最大の放心状態へ。
そして、何度もキルログを見返す。
「わた……しが……」
博打の連打、雄二のプロデュース、そして天音の実力でつかんだ勝利。
彼女はまだ気づかない。
自身のチャンネル登録者数が、過去一とんでもないことになっていることを。
ユリア戦決着です! 次回からさらにボーナスタイム!
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