第10話・100人コラボバトルロワイアル!!
「ユリっちチャンネルへようこそー! 今日はコラボ配信していきますよー」
定刻。
ユリアは約束通り、天音とのコラボ配信を開始した。
既に同接は1万人を超えており、この時点で天音との格の違いが表れていた。
「本日のコラボ相手は、空井天音のゲームチャンネルさん。最近勢いがあって注目していたんです」
【初めて聞いたチャンネルだ】
【ユリっちが注目なんて珍しいな、見に行ってみるか】
【コラボ内容気になる!!】
コメントの勢いはまさしく滝。
目にも止まらない速度で、感想が流れて行く。
「今回の内容は天音さんとのガチ対戦です。カスタムサーバーを借りて100人で競い、その中でどっちが高順位か競います」
【ユリっちとガチで戦える奴がプロ以外にいんの?】
【相手無名の配信者じゃん、勝負見えたな】
「ユリっちはこないだのプロ混合大会でも優勝したんだぜ? まぁ勝ちの見える勝負でも良いけどさ」
視聴者からすれば、なぜユリアのような高名プレイヤーがこんな配信をしたのかわからない。
中には、彼女が注目してるんだから期待してみようとの声も。
ユリアはサブモニターでチャット欄を流しつつ、ストリーム・デックと呼ばれるパネルデバイスでOBSの設定を軽く詰めた。
目の前にあるのは、17万円の最新量子ドット有機ELモニター。
解像度はWQHD、リフレッシュレート360Hz。
さらに彼女のPCも格が違った。
「今日も頼みますよ、相棒」
一瞥したそこには、大手ショップでオーダーメイドしたメインPC。
CPUに9800X3D、GPUにRTX5080を搭載した現在なら80万円は下らない超スペック。
これこそ、ユリアの生活を支える最強の相棒。
その性能、実に天音のPCの3倍以上。
「お手並み拝見と行きましょうか、天音さん」
◇
一方天音宅のリビングでは、雄二が冷静な表情で椅子に座っていた。
「さすがに準プロの有名人、わかってはいましたが機材からして圧倒的ですね」
雄二はガジェットオタクだ。
彼女がいかにデバイスに金を掛けているかなど、一瞬で理解できる。
今回の天音のモニター更新は、勝負の土台に乗るための最低限の備え。
優位性は完全にあっちにあった。
だが、心配など微塵もしていない。
「お手並み拝見」
ユリアの配信と合わせて、天音も配信をスタート。
まさかメインモニター更新をして最初にやるのが、こんな大仕事なんて想像もしていなかった。
しかし――――
「初見さんこんにちはー! ユリアさんところの方々? どうぞ御覧なっていってください!」
MAXテンションで挨拶する天音。
その元気系妹ッ子な声と雰囲気に、視聴者はさっそく。
【うおっ、声めっちゃ可愛くて良い!!】
【これで登録者1000人? なんで埋もれてるんだよ】
【サムネも配信画面も整理されてて良いな、今日はこっちで見るか】
反応上々。
事前に背景など、細かい点も修正をしておいた甲斐があった。
さぁ、後は――――
「ユリアさん、やろうか!」
天音の宣言。
これを聞いていたユリアは、やはり胸の奥に滾る何かを覚えていた。
マイクを一瞬ミュートにし、小さく呟く。
「配信なんて、ゲームなんて……とっくの前に作業と思ってたんですが」
いつもなら何の感慨も無い試合開始ボタンが、高揚の合図になっていた。
マイクを再びONに。
試合が開始され、上空からリスポーン。
リスナーを集め、およそ100人のプレイヤーがバトルフィールドに降下。
最速で着地した天音は、まず定石通りに武器や弾薬を集める。
しかし――――
「君がユリアさんに挑む資格があるのか、見極めさせてもらいますよ!!」
「ここで死んだら所詮それまでぇ!!」
ユリアのリスナーたちが、2人掛かりで天音に襲い掛かった。
いつもなら取り乱したであろう彼女だが、今日は別。
「よっ」
「なにっ!?」
天音が取ったのは、6発装填のリボルバー。
装弾数が小さく、百発百中が求められるこの武器は強力だが扱いが非常にシビア。
少なくとも序盤でメインにするものではない。
それでも、今の天音にとっては十分。
「君たちの動き、全部見えるよ」
――――ダンダァンッ――――!!!
「うわっ!!」
「なんだと!?」
ダブルタップで、揃ってヘッドショット。
まだ序盤のシールド装備だった彼らは、たった一発頭に貰っただけで退場。
物資を撒き散らした。
【開幕リボルバーでヘッショ2連!?】
【アタッチメントも付けてないのに!】
【ただもんじゃないぞ!!】
湧き上がるコメント欄。
今の天音は、ユリアと戦えるという極度の緊張感から、尋常ではない集中力を発揮していた。
モニターも買い換えて、ボルテージは上がりまくり。
これこそ、空井天音が発揮できていなかった本来の実力。
「待っててねユリアさん、すぐ会いに行くから!」
――――コラボバトルロワイアル、残り人数92人。




