二人の距離
私は一人で買い物に来ていた
「にんじん、じゃがいも、玉ねぎ・・・今日はカレーかな?」
メモを見ながら独り言を言っていると見慣れた人影があった
「あっポメじゃん!何してるの?」
ゼレスだ
「お前が店を壊したせいで私たちはテント生活だよ!」
「すごーい!楽しそう!!」
こ・・・こいつ!!
悪びれてる様子もない!
「今日はね、庶民の生活の見学に来てるの!」
アニメの電波が届いている地域に住んでるようだし
こいつ相当の金持ちか?
いけない、精神的優位性を保たなくては
「この前は私のゴースタムの圧勝だったね(笑)」
私は悪口を言った
するとゼレスは頬を膨らませながら言った
「負けてないもん!!あの時はアニメの放送があったから!!」
「君のアニメを見たい気持ちはわかるよ?でも正式な試合だったら
君の機体は今頃メンテナンスルームで泣きべそをかいていたかも」
「負けてないもん!!傷一つ無かったんだから!!」
やはりガキはガキ
このまま優位性を保ちつつ買い物を遂行する
すると野菜店のおっちゃんが声を上げた
「ゼレス様!我が街に来ていただけるとは!」
え?なに?こいつそんなに偉いの?
ゼレスはちょっと慌てだした
「ちょっとおじさん!様とかつけないでよ!!」
何だかよくわからないがただの金持ちではないようだ
「もうどれでも好きな商品を持って行ってください!」
「ちょっと!大声出さないで!!」
声に反応して周囲に人だかりができてくる
「ゼレス様だ!」
「ゼレス様!」
な、なにこの人気っぷりは
そして当の本人はすごく嫌そうな顔だ
「様とかつけなくていいの!」
とにかくこいつはとても金持ちだということは分かった
ならば言わなくては
「ウチの焼肉店の修理費を払ってもらおうか!!」
ざわざわざわ
「あいつ!ゼレス様になんて口の利き方を!!」
「許されない!みんなやるぞ!!」
街の人たちは私に向かって虫よけスプレーを噴射しだした
プシュウウウウウ!!
うわっ!薬品臭い!!
「お嬢様にまとわりつく悪い虫め!!」
悪い虫ってそういう意味じゃないから!!
あと、人に向けてスプレーするな!!
「ポメ!向こうへ逃げよう!」
ゼレスは私の手を引き走り出した
廃公園のベンチに私たちは座っていた
「大丈夫?どこかケガしてない?」
「大丈夫だけど・・・」
私の頭はだいぶ混乱していた
コイツは敵なの?味方なの?
悪いヤツではないようなのだが・・・
「今日は楽しかったわ!また遊んで頂戴!!」
遊び・・・こいつにとっては今日は遊びだったんだ・・・
「じゃあワタシ帰るから!!」
突風と共に現れるセラフィラム
「じゃあね!!」
ぽかんとしている私を置いて
ゼレスは夕焼けの空に消えていった




