13 進化
『敵を迎える準備は整った。新たなにゴブリンを迎えた我ら三兄弟の前では如何に巡礼者だろうと歯が立たないだろう。とはいえ、我らの団長の手を煩わせる必要もないだろう。是非に子鬼騎士団の団員の力を確認して頂きたい』
ゴブリンが俺達に対して意見を述べる。
「侵略者ハ我輩二呼ビ寄セラレルノダロウ?我輩ガ陽動二加ワラナイデイイノカ?」
確かにゴブリンの言う事はもっともではある。
しかし直接彼を向かわせるのは下手をするとそのまま戦闘になる可能性もある。
それに彼は脚が遅い。
シノビ達の移動にはついていけないだろう。
ここで俺達が彼の保護をするのが良いだろう。
俺達は遠回しに彼の意見を否定する。
「団長にはここでどっしりと構えて頂きたい」
「確かに団長さんがあちこち走り回るのは格好がつかないからね」
「ナルホド。確カニ我輩デハ足手マトイダ」
ゴブリンは自分の力量をハッキリと理解した上で同意する。
やはり、このゴブリンは只者ではない。
彼は勝利に向けて常に冷静でいる。
ゴブリンは俺達に向かい気を使う余裕すら見せる。
「我輩ハ団長デハアルガ、独裁者デハナイ。ソレ二各団員達ガ非常二有能揃イダ!安心シテ任セラレル!」
「…君は本当にゴブリンかい?いや、ゴブリンはもっと本能的かと思っていたよ」
「ソノ認識ハ間違イデハナイ。シカシ、人間同様、我輩達モ進化ヲスルノダ!」
このゴブリンは既にゴブリンの域を脱しようとしている。
進化に必要なもの、それは信仰と本人の覚悟、それに意志だ。
俺とサンはこのゴブリンに対して強い信頼と敬意を覚えた。
するとなんと、ゴブリンの身体を光が包む。
「オオ…妖精王!我輩二ハ勿体ナキ栄光デアリマス!」
ゴブリンの身体を包む光が一層強く輝くとゴブリンは進化を遂げる。
人の腰程度までだった身長は今では胸元まで伸び、大きすぎる鎧と兜も彼の身体に合わせるように再構築されるが、大剣はそのままであった。
彼は本当の意味で騎士になったのだ。
ゴブリン·ナイトになったのだ。
彼は人と遜色ない流暢な発音で喋る。
「サー·ヨエル、戦士サン。二人にこの上ない感謝を申し上げる。我輩に対する信頼と希望をいと高き妖精王がお認めになられた。お陰で我輩も妖精としてひとつ上の段階に上がれた」
ゴブリンナイトは跪いて最上の礼を示す。
まさか精霊の進化を目にかかれるとは何ということだ。
しかし、その功績は俺達のものではない。
「弛まぬ鍛錬、追い求めた教養、それに自分を律する心構え。全ては団長が自分で引き寄せた結果だ」
「俺は騎士道には詳しくはないけど、団長さんはまさに物語の中の騎士そのものだ。おめでとう!」
俺達は惜しみない称賛をゴブリンナイトに送る。
すると彼の目から一粒の涙が溢れる。
彼は慌ててそれを手で拭うか涙は次々に流れ落ち、留まるところを知らない。
「いかんな。騎士が戦場で涙を流すとは!これは我輩達だけの秘密だぞ!」
「恥ずかしいことではない、団長よ」
「男の涙を笑うやつなんかここにはいないさ!」
邪神の使徒が迫ってきているというのに俺達は束の間の幸せに包まれていた。




