12 ブラザーフット
『我が好敵手、いや敢えて友と呼ぼう。コブリン騎士の助力を得た今、作戦の準備は整った。後はこの勇敢にして剛毅な騎士殿の活躍を見させてもらおう。出来ればその武勇を唄にして語り継ぎたいが、俺に作曲の才はない。誠に残念でならない』
「サァ!ココ二子鬼騎士団ノ結成ヲ宣言スル!」
ゴブリンの高らかな宣言に俺と右京は片腕を上げ、喜びの声を上げる。
サンは大きな拍手を送り、右近は相変わらず腕を組んで冷めた態度である。
ノリが悪いぞ、右近。
さて、子鬼騎士団の団長に昇格したゴブリンに早速と進言をさせて頂く。
「団長、敵は邪教徒だ。流血により邪悪なる存在をこの地に引き寄せてしまう」
「ナント面妖ナ!サー·ヨエル!貴殿二考エハアルカ?」
「彼らは神秘に惹かれる。団長程の名高い神秘を秘めた騎士ならその役目が務まるだろう。団長を矢面に立たせて申し訳ない」
「気ニスルナ!元ヨリ、コノ鎧ハ民ヲ守ル為ニアル!ギャギャ」
ゴブリンは囮の役を快く引き受ける。
しかし彼を危険に晒すつもりは毛頭ない。
この小さな守護者の護衛はしっかりとしよう。
俺は皆に手順を説明する。
「俺とサンは団長と共に敵を迎えよう。左近と右京は陽動を頼む。出来れば敵を分散出来るように誘導をして欲しい」
「了解しました、補佐官」
「任せて下さい!」
早速とシノビの兄妹は別行動を取るためにこの場から離れる。
残った俺達は市民に被害が及ばないように適当な場所を探す。
この辺りでゴミ処理場があった筈だ。
そこなら人も近寄らないだろう。
俺達も移動を始める。
ゴブリンは鎧が重く、脚が遅いが、そこまで急ぐ必要も無いだろう。
悠長に向かうとしよう。
道中、サンは興味を惹かれたのかゴブリンに話しかける。
「ゴブリンの騎士は初めて見るよ。今の流行りかい?」
「流行ナドジャナイ!聖ナル役目ダ!」
「おっと、申し訳ない。悪気は無かったんだ」
「…ソノ衣装ハ砂ノ民ノ者カ?確カ二アマリ騎士トハ縁ガナサソウダ」
ここでゴブリンが意外に教養がある事を見せる。
これには俺とサンが驚きを見せる。
本を媒体にしただけあって、知識のエネルギーを取り込んでいるのか?
それともこのゴブリンの性質なのか?
「団長さんは色々と詳しいんだね?」
「剣ヲ振ルウダケガ騎士ジャナイ!教養モ大事ダ!ギャギャ」
「ほう!兄弟の友なだけはある!確かにその通りだ!」
「サー·ヨエルノ兄弟カ!サゾ名ノ通ッタ戦士ナノダロウナ!」
ここでサンが自己紹介をしていなかった事に気付く。
これは大変失礼したと言い、自己紹介を始める。
「紹介が遅れて申し訳ない。俺はサンだ。残念ながら語れる武勇伝は少ないが多少の戦闘経験は積んでいる。戦いは任せてくれ」
「血ハ争エナイナ!サー同様二戦士ノ面構エヲシテイル!シカシ、燃エ滾ル炎ガソナタノ目ノ奥二伺エル」
「…参ったね」
ゴブリンはサンの秘める苛烈さを一瞬で見抜く。
俺が思っている以上にこのゴブリンは大物なのかもしれない。
無口になったサンに対してゴブリンはそのまま続ける。
「悪イ事ジャナイ。生キル事ハ戦イダ。ソノ炎が必要ナ時ハ必ズ来ル」
「ハハ、君とは仲良くやれそうだ」
「サーノ兄弟ナラ我輩ノ兄弟当然ダ!」
「兄弟は多いが、君みたいなのは初めてだ」
サンが愉快そうに笑う。
新たな兄弟を得た俺達はゴミ処理場に着く。
後はシノビの兄妹が上手く敵を誘導してくれるのを待つだけだ。




