11 騎士、再び
『現状に対する冷静な考察により巡礼者達の目的が推理された。後は上手く対処するだけだ。推理出来たのも以前の出会いによるお陰なのだが、かつての出会いも我が主の大いなる計画と慈悲によるものなのだろう』
俺達は巡礼者を呼び寄せる為の計画を立てる。
神秘を召喚し、彼を囮に引き寄せるのが良いだろう。
そこで役割を決める事にした。
神秘に対する理解と取り扱いを知っている者が良いだろう。
すると選択は自然と絞られる。
「召喚は俺かサンが良いだろう」
俺がそう言うと一同が賛成する。
サンは俺が召喚を行なう方が良いだろうと言う。
この土地に慣れ親しんでいるし、上手くこなせると言う。
「了解した。さて、誰を召喚しようか?」
「取り扱いが簡単なのが良いだろうね」
「そうだな。それではゴブリン辺りが良いだろう」
俺は以前の任務で頂いた本の事を思い出す。
それは一つの古い物語の本だ。
題名は「7つの王国の騎士達」だ。
最初はあまり乗り気では無かったか少し読み進めると一気に興味をそそられた。
何より本のサイズも小さく、持ち歩く事が出来るのも気に入った。
俺は懐からその小さな本を取り出し、準備を始める。
地面に五芒星を描き、星の各先端にそれぞれのエレメントに物を置く。
それは水や石、蝋燭やお香代わりのハーブなどだ。
俺がそれらを設置し終わるとサンとシノビの兄妹達が興味深そうに中心に置かれた本を見る。
「騎士物語かい?兄弟」
「補佐官にこんな趣味があるとは初耳です」
「ヨエルさんは相変わらず古風ですね」
皆が俺の趣味に茶々を入れるが俺は無視して儀式を実行する。
『小さき鬼よ、力を貸してくれ。今、ヨエルがそなたに呼び掛ける。姿を表したまえ!』
俺は簡易な召喚を実行する。
何故なら俺と彼にはすでに繋がりがあるからだ。
五芒星の中心の本は光り輝き、その光は小さな人影に集束していく。
さぁ、来い。
「オオ!我ガ好敵手、ヨエル!ギャギャ!」
そのゴブリンは自分の体格には不釣り合いに大きな鎧と両刃剣を携えていた。
彼と再び会えるとはな。
「あの屋敷以来だな。剣の腕は磨いたか?騎士殿」
「鍛錬ハ続ケテイル。今度ハ遅レヲ取ラナイ!」
「頼もしい限りだ。だが、今度は共に戦って頂きたい」
「ホウ?共闘カ!」
コブリン騎士は芝居がかった動きで喜ぶ。
サンは顔を布で隠してはいるが、笑いを押し殺してるのが分かるし、左近はこの状況を飲み込めずにいた。
右京は可愛いと言ってゴブリンの兜を触ろうとするが、止メルノダ、オ嬢サン!と嫌がれる。
小さな騎士は俺に今回の敵は誰かと聞く。
「敵は侵略者だ。我らが領土の無辜の民達を脅かそうとしている」
「ナント!ソレ以上言ウナ。喜ンデコノ剣ヲ振ルオウ」
「騎士殿の助力、感謝する。なんと誇り高い」
「剣ヲ交エバ友ダ!」
ゴブリンはそう言うと右京の下に向かい、片膝を地面につき、跪く。
そしてまるで女王、あるいは姫に対するかのように右京を守ると宣言する。
「オ嬢サン。貴女ノ敵ハコノ我輩ガ討チ滅ボソウ!」
「フフフ。宜しくね、騎士様」
右京も茶番に付き合ってくれる。
左近は何処か冷めた目でそれを見るが余計な口出しはしない。
サンは既に隠している顔を手で覆い、肩を震わせる。
無粋な男だ。




