10 考察
「サンは人一倍思いやりに溢れる男だった。その愛は深く、時には苛烈だった。ある事件をきっかけにそれは増々、露わになっていた。その時からだろうか?彼の顔に笑顔が張り付き、悲しみを隠すようになっていたのは」
サンは俺達に巡礼者について語る。
「彼らは既に虫により作り変えられている。その血は既に召喚の為の媒体と化している。血を一滴でも地面に触れさせてはならない」
シノビの兄妹はそれに対して困り顔で返事をする。
「それは中々厳しいですね」
「私も同意見です。サンさんのような魔術も扱えません」
左近は素直に困難だと言い、右京も彼に同意をする。
それに対してサンはそこら辺は任せるように兄妹に伝える。
「君達は捕縛さえしてくれれば良いさ。ヨエルの言う剣を使わない戦い方って奴だ」
「一対一ならまだしも集団を相手に何処まで傷付けずに出来るのか分かりませんね。サン」
「ふーむ。何とかして一人ずつ対処出来れば良いんだけどね」
サンは俺の方を無言で見る。
昔から俺に意見を求める時は決まってこうだ。
ヨエルなら何がいい案が思い付くでしょ?
彼の目は暗にそう言っていた。
俺は溜息を付いて、サンに文句を付ける。
「丸投げか。変わらないな」
「頼りにしてるのさ、兄弟」
「何度そう言いくるめられたのやら。まぁ、いい」
俺は思考の海に潜る。
外宇宙の存在に対する撒き餌を探す。
何とかして彼らを離し、最小限の被害に抑える。
それが今、考えるべきだ。
しばらく考えると一つの疑問が浮かぶ。
俺はふっと気になった事をシノビの兄妹に問いかける。
「先程の巡礼者は何故、群れからはぐれたのだ?」
「すみません。流石にそこまでは調べが付いていませんでした」
「まずはそこから始めよう。この路地裏になにか手掛かりがある筈だ」
俺達は手分けをして路地裏をくまなく調べる。
しかし、特に変わったものは見当たらない。
なんの変哲もない路地裏だ。
場所じゃないという事だ。
ならば調べる対象を変えよう。
「そこのゴロツキの死体を調べよう」
俺はそう言うと死体を調べ始める。
するとどうだ。
死体の服から魔力を浴びた一つの紙切れが出てくる。
その紙は魔力を流すだけで発動できる魔法陣が描かれていた。
簡単な召喚や魔術の行使を可能にするスクロールという奴だ。
俺はサンに向かって問いかける。
「今まで彼らが出現した場所に共通点はあるか?」
「環境、人口、歴史や文化は様々だね。共通点は無いように思えるね」
「神秘的にはどうだ?盛んだったか?」
「!」
サンが目を見開き、なるほどと呟く。
巡礼者達は外宇宙からの神秘、外来種だ。
手始めに在来種、つまり、この星の神秘を駆逐する必要がある。
そうしなければこの星を支配出来ないからだ。
巡礼者は神秘に吸い寄せられるのだ。
サンが俺の推理に対して拍手を送る。
「流石は補佐官!流石は我が兄弟!名探偵のようだ!」
「考えれば分かる事だ。何故今まで見逃していたのだ?」
「神秘が身近になった現代だからね。ありふれ過ぎて見逃していた」
「この街に巡礼者達が現れたのも説明が付いたな」
俺は以前、同じような推理法を見せてくれた暗殺教団、いや今は騎士団になったのか、その現当主に心の中でお礼を言うのだった。




