9 かつての友
『寄生。それは宿主を支配し、己の繁殖の為に共存をし、時が来れば宿主の命と引き換えに目的を果たす。それでは外宇宙からの侵略者達の目的とは?この地球で活動出来るための肉体を得ることだ』
サンが俺達に巡礼者の身体を見るようにと伝える。
巡礼者の身体を見ると体内で何かが蠢いているのか分かる。
身体の所々が黒く変色しており壊死してる様にも見えた。
寄生虫は計画を邪魔されたのが気に食わないのが、激しく体内で暴れまわる。
サンが俺達にこのまま巡礼者を放置しておくとどうなるか説明する。
「この虫は徐々に宿主の身体を変容させる、この星で活動する為だ。この時点ではまだ共存の段階だが、直に宿主の思考は塗り替えられるだろうね」
サンは感情を見せずに淡々と語る。
そこには人に対する慈悲や思いやりはなく、巡礼者が既に人間である事をやめている事を物語っていた。
「変態を終えた虫は宿主の肉体を食い破り、この地上に解き放たれる。そして繁栄の為にまだ誰かに卵を埋めつけ、新たな巡礼者にさせるわけだ」
「巡礼者の補充の仕組みは分かった」
俺はサンの説明に合点がいった。
しかし、このまま彼が巡礼者を殺める事を許して良いのだろうか?
俺は答えを出せずにいた。
そんな俺の内なる葛藤をサンは読み解いていた。
「おいおい、ヨエル。まさかこのまま野放しにするつもりかい?」
「サン、彼はもう助からないのか?」
「残念ながらね。既に何度も試してきた事だ」
サンは今までの事を喋る。
自分が今まで何処で、何をしてきたのかを。
何と対面をし、何故、この時期に街に戻ってきたのかを。
「今まで巡礼者達の後を追っていた。知ってるか?兄弟。巡礼者達の集団は一つだけじゃないのさ」
「なんだと?他にもいるのか?」
「正確にいえば居た、だね。ある程度は数を減らす事に成功出来たさ。勿論、大きな犠牲を払う必要はあったけどね」
サンは今まで滅んだ街や国の話をした。
どれだけの人々が勇敢に立ち向かい、亡くなっていたか。
何人の人間が彼らの犠牲になったのか。
「君もさぞ、無念だろうね。ジョン」
サンがジョンという名を口にすると巡礼者の身体がビクッと反応をする。
しかし、それ以上の反応は一切見せなかった。
もはやジョンだった者はこの世にはいないのだろう。
巡礼者が見せた反応は身体に残っていたかつての肉体の記憶に過ぎなかった。
「君の奥さんのスープは絶品だったよ。一宿の恩をこの様な形で返す事になって本当に申し訳ない」
サンは目を瞑り、かつて友だった者の為に黙祷をする。
しばらくの間、そうしていたが目を開くと一言、すまないと言って高周波ブレードを巡礼者、いや、友だった者の心臓に突き刺す。
巡礼者の中の寄生虫は激しく暴れ回るがサンは短く呪文を唱えて黙らせる。
「■■■」
人には理解出来ない言語で呪文を唱えると巡礼者の身体が燃え上がり、血の一滴も溢れる事なく灰と化する。
それを見届けるとサンは短く、宣言する。
「我が主とジョンに誓う。一匹残らず駆逐してやる」




