3 得物選び
『砂漠の地において同じ時に生を受けた兄弟。それが俺とサンだ。しかし、主は我ら兄弟に違う道を用意なされた。それでも行く先は、辿り着く先は一緒だ。俺はそう信じている。そうだろう?兄弟よ』
俺達は先ずは六人の巡礼者達の現状を把握する事にした。
情報はシノビ·オーダーを通して入ってきてはいるが、自分の目でも確かめたいからだ。
サンも準備をすると言って店内で装備品を選ぶ。
「どれも良い感じだなぁ。おっ、この高周波ブレードカッコいいな!」
「お目が高いですね!性能は勿論、見た目にも拘っていますよ!カタナに似せて作られています!」
「おおー!サムライね!やっぱり憧れちゃうね」
サンと右京が楽しそうに喋る。
サンは俺とは違い最新のテクノロジーに対して意欲的である。
俺は古き良きを愛する取り残された者だ。
サンは俺に装備品の提案をする。
「ほら、ヨエル。これなんかどうだい?」
「これは短機関銃か?」
「唯の短機関銃じゃないのさ!アウトロー社の名品だ!カスタムも幅広いし、パラベラム弾やNATO弾は勿論、焼夷弾やショック弾まで使えるんだぜ!それにコンパクトで使い回しがしやすいのもポイントだ!」
「力説中に悪いが俺はこういうのには向いていない」
俺がそう言うとサンは残念そうにそうかと返事をする。
我が兄弟の提案を断るのは気が引けるが、命を託す得物は慣れた物がいい。
俺は懐から一本の短剣を取り出す。
祝福された短剣だ。
俺は長年連れ添った短剣を感傷深く眺める。
既に光沢を無くしたそれには小さな傷も目立つが、俺はそれでもこいつを手放す気にはなれない。
サンはそんな俺を見ると優しい目をして俺に言う。
「それ、まだ使ってるのかい?ヨエルは本当に物持ちが良い」
「お前から頂いた物だからな。レプリカを沢山作らせてはいるが、本物だけは未だに破損せずにある」
「当時は科学が発展途中だったからね。今ならもっと良いものをあげれたのに」
「いや、充分だ。俺はこいつが好きだ」
それなら良かったと言ってサンは再び装備品選びに戻る。
左近は俺に近付き、短剣を見せるように頼む。
俺は左近に渡すと彼は大事そうに受け取り、それを眺める。
「えらく古いですね。これは玉鋼とも違う。こんな特殊な鋼は見たことがないです」
「今ではもう作られることは無いだろう。そいつがきっと最後の一振りだ。それが壊れたら恐らくその鋼の痕跡はこの世から消え去ってしまうだろう」
諸行無常。
これは友人の坊主から教えてもらった言葉だ。
残念ながらそれがこの世の理だ。
左近はそれを聞くと同意する。
そんな話をしているとサンと右京の準備が整う。
「さぁ、準備万全だ!」
サンはそう言って先程物色していた高周波ブレードを腰に装備する。
カーボン製の飾り気のない鞘は無骨な雰囲気を醸し出していた。
そして保険だと言ってサブウェポンに一丁の拳銃を選んでいた。
左近がそれに反応を示す。
「その拳銃は、ナカイ製ですか。良いチョイスですね。てっきり先程のアウトロー社の短機関銃を選ぶものかと思ってましたよ」
「いや、恥ずかしながら兄弟と違って射撃の腕が全然でね」
サンはそう答えると少し小振りな9mm弾仕様の小型拳銃を懐にしまう。
あまり威力を重視していないそれを採用したのは本当に保険のつもりなんだろう。
左近はよしと言って自分の準備に取り掛かる。




