序章3
『ヨエル、七人の巡礼者達はご存知かしら?』
俺はマザーが淹れてくれた特製のハーブティーを呑みながら頷く。
七人の巡礼者達とはその名が示すように七人からなる巡礼者達の集団だ。
実際に見た者は少なく、子供達を怖がらせる為の怪談話や都市伝説と化しているが、彼らは実在する。
巡礼者だけと聞くと特になんら問題が無いように聞こえるが彼らは特定の神を祀る者達だ。
此処までは良いだろう。
問題はその神だ。
いわゆる邪神の類であり、噂では宇宙外の者であるとか。
彼らはその神々を称えながら巡礼するだけの存在、
こちらから接触しなければ通り過ぎるだけの無害なものだ。
しかし万が一に彼らの一人にでも害を為した場合はその邪神の怒りがその地に無差別に降り注ぐ事になる。
これは遠い昔の記録に残っているものだが、ある小さな小国が内戦状態にあった。そこに現れた七人の巡礼者達が内戦に巻き込まれ、その内の一人が亡くなってしまった。
結果だけ言ってしまうとその小国は跡形もなく壊滅してしまった。
その後は何処から補充したのかいつの間にか七人に戻り、その場を後にしたらしい。
立ち入っては行けないとされる地域が元はその小国があった場所だと言われている。
俺はその事を思い出しながらマザーに尋ねる。
「彼らがどうかしたのか?」
「目撃情報が入ってきたわ」
マザーはお茶を一口啜ると俺に対処をお願いしたいと言う。
面倒事には慣れているが今回の件はどう対処すれば良いか分からなかった。
「なんだ?俺に彼らの護衛をして欲しいのか?」
「いいえ、守るのは街の方よ」
「どういう事だ?」
俺はマザーにしっかりと説明するように伝える。
彼女はこめかみを抑えながら簡潔に言う。
「六人よ。目撃情報は六人なのよ」
「まさか手遅れか!」
「それは分からないわ。街にはなんの異変も起きていないわ、今のところはね」
「はぐれているだけだと願いたいものだ」
そうは言ったもののこの街は危険に溢れている。
たとえ、掠り傷ですら彼らの神がどの様な災いをもたらすかは想像出来ない。
この街は静かに破滅の危機に陥っている訳だ。
早速、この件に取り掛かる準備をしなければならない。
俺は今回の目撃者の情報をマザーに求める。
「東洋の、ほら、あの兄妹よ」
「シノビの兄妹か?」
「そうよ、左近君と右京ちゃんだったかしら?」
「シノビ·オーダーの依頼か」
彼らからの依頼とは珍しい。
シノビのオーダーはあまり外部の援助を求めない。
本来はこの街の長が抱える諜報機関だ。
となるとドン直々の依頼と受け取って良いだろう。
「この街のドンはこの事態を重く見てらっしゃるわ」
「そうだろうな」
「だから貴方にお願いするわ、補佐官ヨエル」
俺は補佐官というものは面倒事の処理係ではないという事を言いたいが、そんな事を言える事態じゃないだろう。
しょうがないと思いながら二つ返事を返す。
「了解した。神秘協会補佐官、ヨエルがこの件を受け持つ」
「ありがとう、頼りになるわ」
俺はマザーの軽い褒め言葉を気にするなと返事してマザーの部屋を後にする。
さぁ、仕事の時間だ。




