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終章2

神秘協会にあるマザーの一室。

そこで彼女は窓を開放し、窓の縁に置かれていた花達を愛でる。

そして振り返り、声をかける。


「良い夜だわ。ねぇ、月は出ているのかしら?」


彼女がそう尋ねると一人の若い男性の声が返事をする。

暗殺教団の元長、ハサンだ。

今の彼は影を纏わず、青年の姿を取っている。

彼は気さくそうな様子でマザーに返事をする。


「本当に良い夜だ。それにとても綺麗な月だ。まるで君の様だ」

「相変わらず口が上手いのね、ハサン」

「初めて会ってから、数十年。今もなお君は美しい花のままさ。マリーお嬢さん」


ハサンはマザーに対して変わらない美しさを褒める。

マザーは嬉しそうにそれを受け止める。


「お嬢さんなんていう歳じゃないわ。もうしわしわのお婆ちゃんよ」

「私からすればあの頃となにも変わらないさ」

「暗殺はやめても女殺しは現在なのね?」


マザーはハサンに対して冗談を言い、ハサンはそれに対して笑う。

長年の仲の二人はとても気さくだった。

しかしマザーの表情は何処か落ち着きが無かった。


「ねぇ、今日はどうしたのかしら?ハサン」

「お別れをしに来たんだよ、マリー」


マザーが友の言葉に驚くと当時に一人の男が部屋に入る。

神秘協会の補佐官、ヨエルだ。


「待たせたな、我が友」

「いや、時間通りだ。我が友よ」

「ヨエル?一体どういう事かしら?」


マザーは状況を理解出来ずにいた。

そこでハサンが彼女に説明をする。


「終わりの時間がやってきたのさ、マリー」

「嘘でしょ?」

「本当さ。…本当に長かった」


ハサンはなんて事無いように自分の終わりが来た事を告げる。

それと同事にそれが曇り出し、雨が降り注ぐ。

ヨエルがマザーに近付き、失礼と言うと彼女の頭に手をかざす。

マザーは驚き、ヨエルに説明を求める。


「見えないわ!何をしたのヨエル!」

「一時的に霊視を封じた。ここから先は見てはならない」


ヨエルはそう言うとハサンに始めようと言う。

ハサンは一言、分かったと言う。

ヨエルはコートを脱ぐ。

するとヨエルの身体が聖なる光で発光をする。

ハサンはそれを見ると驚愕と感動で身を震わせる。


「お、おお!貴方だったのか!なんと美しいのだろうか!」

「アリーの子、ハサンよ。長きに渡る使命を見事にやり遂げられた。主がお前の席を用意されて居られる」


ヨエルがハサンの頭に手を置き、解呪を行う。

目が見えないにも関わらず、マザーは目を背ける様に窓の方へ逃げる。

雨は窓際の花達を濡らし、花弁から滴る雫はマザーの心を表していた。

ハサンは遂に安堵を手に入れる。


「長かった…本当に…私は…所詮は醜い造花…作られものに過ぎぬが、良い種を残せた…」

「俺は此の世でお前ほど誇り高き、美しい花を見たことがない」

「ハハ…ヨエルも…嘘が付けるのですね…ああ…そうだった…お花達に…お水を…やらなくては…」


ハサンは最後に一際深く息を吐くとそのまま息を引き取った。

今夜一つの時代が終わりを迎えた。

マザーは涙を零しながら空を見上げる。

雨は止み、雲一つない空を見上げて彼女は言う。


「最後まで嘘ばかり言うのね。嫌な夜だわ、ハサン」


空にはもう月は出ていなかった。

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