52 屋上での戦闘
『今回の首謀者、アナスタシオというメメント・モリの老人。丁寧な態度はその内なる狂気に拍車を掛けていた。己の犠牲を厭わずに数々のグールを召喚する彼は良き道にさえ導かれていればモーゼス同様に名のある魔術師になれた事だろう。しかし彼は道を逸れてしまったのだ』
グールを確認したモーゼスが俺に対して言う。
「エルダーグールも数人いやがる」
「ああ、厄介だ」
倒せなくもないが、対処には少しばかり時間が要する。
そして狂った老人はそれを許してくれないだろう。
しかし一人ずつ対処するしかないのも事実だ。
考えている暇はない。
グール達が群れをなして襲いかかってくる。
俺達はそれに応戦するが数の有利はあちらにある。
エコーは善戦をするが慣れない力の行使で疲労を見せている。
一人のグールが彼女の隙をついて攻撃を仕掛ける。
まずい!
「セネクス!」
彼女がそう叫ぶと鉄の鷹が現れ、己の主人を敵から守る為にグールに体当たりをする。
鉄の塊を身に受けたグールは大きくふっ飛ばされる。
老人はそれを見ると感動の声を上げる。
「おお!いいペットじゃな。それがあればもっともっと人を殺せそうじゃ」
「黙れ!」
エコーは老人の世迷言に怒鳴り声を上げる。
しかし老人はそれを受けてもケラケラと笑うだけだ。
俺はエコーに注意をする。
「熱くなるな!」
「はい!」
エコーは俺の注意を受け入れてくれる。
乱されたら飲み込まれる。
彼女は今回の件で充分に理解出来た事だろう。
俺達はなんとか数体までグールの数を減らす事に成功する。
しかし老人が更なる召喚を行う。
「なんじゃ?おかわりが欲しいのか?若者はそうではなくではな!」
更に十体のグールが現れる。
老人は口から血を吐くがそれでもお構いなしの態度を見せる。
むしろ余裕の笑みすら見せる。
しかし老人の笑みは直ぐ様に消える事になる。
突如大きな爆発音と共に一人の人物が外壁を駆け上がり、姿を現れる。
薔薇だ。
「サカール」
彼がそう唱えると屋上は炎に包まれる。
薔薇の術を避けきれなかったグール達が炎に包まれて灰と化する。
老人は突然の出来事に驚き、声を荒げる。
「誰じゃ!名を名乗れ!」
「暗殺教団、薔薇だ」
「フラワーコード、幹部か!」
「ああ、貴様への手向けの花だ」
老人は数の優勢を失ったせいか少しばかりの焦りを見せる。
そして薔薇を厳しく責める。
「何故アサシン共が協会の肩を持つんじゃ!」
「貴様を納得させる義務はない」
薔薇は短く老人の問いを切り捨てる。
そして老人の態度は焦りから絶望へと変わる。
ザフラだ。
彼女が薔薇のローブから出てくると素早く彼女の正体を察知した老人は絶望の表情を浮かべる。
「じ、ジンだと!」
「イフリーターのザフラよ、ご老人」
ザフラの自己紹介に老人は信じられないものを見るかのように目を見開く。
ザフラは老人の絶望した顔に対して愉悦の表情を浮かべる。
そして言い放つ。
「上位霊は初めてかしら?さぁ、私に跪きなさい」
「くっ、グール達よ!我が身を守れ!」
老人はグール達に命令をするが、グール達は身動きをしない。
彼らにはザフラに立ち向かうつもりはないらしい。
その隙にモーゼスは呪文を唱え終わっていた。
「獅子達よ、真価を示せ」
モーゼスがそう言うと二匹の霊体の獅子が現れグール達に牙を向ける。
残りのグールを食い散らかすと獅子たちは光の粒子となって消える。
モーゼスは満足そうにそれを見届けると老人に向かって告げる。
「終わりだ。降伏をするか?」
「騎士団の残りカスめ!」
「まだ火は燻ったままだ。消えちゃいない」
これで終わりだ。




