7 ハウスキーパー
『この世は常に循環を求める。留まった水が濁るように無理に流れを止める事をしてはいけない。
厄介なのがこの流れというものが人には中々理解出来ない事だ。そして流れを無視し、捻じ曲げた結果、この家に住まう妖精の怒りを買ったわけだ。妖精の土地で許可なく無益な殺生行為をしたなら同じく血という命の通貨を持って支払わされるのだ。』
コボルトと別れた後、応援が着くまでゴブリンらの始末をする事にした。
コボルトの話によるとこの洋館にはレッドキャップはもういないとの事で俺は少し気を楽にした。
これ以上血が流されないならそれに越したことはないからな。
その為にも残ってる妖精らをさっさと送り返しながらどんどん進む。
「もし、そこなもの」
俺は呼ばれて立ち止まる。
声は遠くから聞こえるが、はっきりと居場所は特定できない。
正体を掴めずにいる俺に声の主は構わずに続ける。
「お前さんが家神さんの使いかね?」
謎の声にそう尋ねられた俺はそうだと告げる。
家神というのはあのコボルトの事だろう。
コボルトの神格は、恐らく古くから民間の間で信仰されていた類のものと推測されている。
コボルトというのも人が付けた通称だ。
「ヨエルだ。あんたは何者だ?」
「何者でもないわな。儂はこの洋館じゃよ」
化身あるいは家神が持つ力の一部が意思を持った存在とても言うべきか。
いや、考えても意味はないだろう。
理解できないからこそ神秘性だろう。
ここで暴いても彼らの力が薄まるだけだ。
「それで俺になんか用か?」
「ああ、地下に来てもらいたいんじゃ」
「何故だ?」
地下への誘いの目的は分からないがどうせ厄介な事だろうな。
まぁ、俺は来客だからあまり拒否権はないけけどな。
取り敢えず話を聞いてみよう。
「地下室に何かしらの印が施されておる」
「魔法陣の類か」
なるほどな。
この洋館の異常な数の神秘達は何らかの大掛かりな術式による召喚という事か。
それを俺に解術をして欲しいという訳だ。
「お主に任せたいんじゃ」
「俺に出来る範囲なら対処しよう」
「おお、助かるぞ」
突然、ドンという音とともに俺の後ろのドアが開かれる。
道案内役は買って出るという事だな。
しかし姿を表す事はしないんだな。
「家の霊よ、姿を表す事はしないのか?」
「ホホホ、お主はもう見えてるじゃないか」
「この洋館そのものか」
人にしてはやたら物分りが良いんじゃなと驚く家の霊。
そういえば協会の記録保持者という事は言ってなかったな。
まぁ色々見てきたからな。
「神家が交渉に応じるだけはあるわな」
「そんな大したもんでもないさ」
「謙虚じゃな」
会話もそこそこに開かれたドアに向かう。
ドアをくぐるとそこに地下へ続く階段が現れる。
俺はさっきそこのドアから先程の部屋に入ってきたはずだがな。
考えるだけ無駄だろうな。
取り敢えず下に向かって降りていく。
俺は降りながら考える。
もう五分も下っている、流石に長すぎる。
ふっと立ち止まって懐から空の瓶を未だ底の見えない地下に向かって投げる。
暫くしても衝突の音がしない。
やられたな、完全に閉じ込められた。
「ア・バオア・クーめ・・・」




