50 到着
『ガブリエルは水を司り、託宣を任された天使だ。彼の御力を借りる事で敵の場所が判明した。
偶々と色んな要素が集まり彼の力を借りる事が出来たようにも思えるが、そうではない。偶然など存在しない。マザーの言葉を借りるなら見えざる手のお陰だ』
敵のおおよその位置が把握出来た。
なら後は急いで向かうだけだ。
俺達はこれ以上時間を無駄にしないよう、さっさと移動を始める。
この狂った事態をさっさと終わらせなければ行けない。
移動しながらも少佐は先程の魔術の精神的疲労を見せる。
「これは中々、キツイですね」
「最初は皆、そんなもんだ。なんの訓練も受けてねぇのに上出来だ、少佐」
「大佐達はいつもこんな事をしてるんですね」
少佐の言葉にモーゼスが応える。
モーゼスの言う通り、魔術の訓練を受けていないのに関わらず少佐は見事にやり遂げて見せた。
俺は少佐に労いと感謝の言葉を告げる。
「本当によくやってくれた、少佐。感謝する」
「いえいえ、ヨエル殿の補佐があっての事ですから!しかし、何故私でしょうか?」
「先程も言ったように戦場では敵の察知を行っているのだろう?勿論、少佐の鍛えられた観察力もあるだろうがそれは少佐の素質なのだ」
「観察力ですか?」
「ああ、観察、見極めは魔術師の絶対条件だ。そうだろう?大佐」
俺の言葉に走りながらもモーゼスが頷く。
魔術師は優れた観察者だ。
物事やエネルギーの変化を見極める事は魔術師としては必須の能力だ。
俺は続ける。
「後はその名だ」
「名前ですか?」
「ああ。名はこの世で最初に戴く物だ。名前はその人の魂を形作るものでもある。それは在り方なのだ。洗礼の際に頂く名前なんかもその意図がある」
俺は少佐に名は体を表す事を教える。
魂のサインでもあることを。
彼もまた告げる者である事を。
「良い名だ」
「ありがとうございます」
「少佐にその気があるなら大佐に色々と魔術のイロハを教えて貰うと良い。素質がある」
実際に少佐は優れた魔術師になり得るだろう。
それだけの素質を俺は彼に感じ取れた。
それは彼を近くで見ている大佐も同意見だろう。
「おう、少佐。俺の教えは厳しいぞ?」
「ハハハ、軍での訓練で嫌なほど分かっていますよ」
少佐が魔術の道を歩むかどうかは俺には分からない。
しかし、そうなった時にはきっとガブリエルが彼を見守ってくれるだろう。
面倒見の良い奴だからな。
さぁ、目標地点に付いた。
俺はモーゼスに作戦を聞くことにする。
「大佐、作戦はあるか?」
「勿論だ。突入してイカれ野郎をぶっ飛ばす」
「大佐、しっかりと話を聞いてくれ。俺は作戦を聞いたんだ」
モーゼスの作戦とは言えない提案の対して少佐とエコーが了解と言う。
それに対して薔薇はフッと笑みを浮かべながら言う。
「了解した、モーゼス殿」
「おい、薔薇よ。そんなので良いのか?」
「単純明快な指示だ。大変助かる。それに、だ」
「なんだ?」
「こういうのは嫌いじゃない」
新しく加わった脳筋、薔薇も作戦内容に満足そうだ。
それは何よりだ。
そして彼はモーゼスに提案をする。
「モーゼス殿。敵を挟み撃ちにしたい。許可を頂けるか?」
「それは構わねぇけどよ。どうするんだ?空でも飛ぶのか?」
「人は空を飛べない。外壁を駆け登るつもりだ」
「それも人としておかしいぞ。だが、面白い!」
大佐は薔薇の提案を受け入れる。
さぁ、さっさと終わらせよう。




